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森川正彦(法則化中学太子サークル)
実習でやったことを「B5」1枚のレポートにまとめるという授業である。向山洋一氏の「授業の原則十ヶ条」を意識することで、生徒の集中度は全く変わるということを実感した。
1.集中したクラス、集中できなかったクラス
教室には鉛筆を走らせる音だけが響いている。実習でやったことを「B5」1枚のレポートにまとめるという授業である。
前日、同じ課題を別のクラスで行った。一部の生徒は黙々と書いているが、私語をするグループ、立ち回る生徒など、どう見ても集中しているという状態ではなかった。
うまくいかない理由を2つ考えた。
A:「課題が難しすぎた」
B:「授業の流れ(指示・発問)に無理があった」
まず、Bの部分、特に授業の開始1分間の指示をもう一度検討した。
2.指示を修正し、細分化する
授業の流れは次のようなものである。
(1)テーマを2つの中から選ぶ。
A 木材が金属やプラスチックと比べて優れている点は○○である。
B のこぎりでまっすぐに切るためには○○に気をつければよい。
(2)○○に入る言葉をノートに書く。
(3)先生に見せる(黒板に書く)
(4)用紙をもらう。まとめる。
大きな流れはいずれのクラスでも変わっていない。しかし、前日の反省から作業の間をスモールステップに細分化し、指示を追加した。
その結果次のような変化があった。
修正する前のクラス | 指示を修正したクラス | |
1枚をぎっしり埋めた人数 | 7 | 29 |
白紙に近い生徒の人数 | 6 | 1 |
3.「授業行為」の違いが、結果を変えた
冒頭に書いたように生徒の反応は全く違った。
何が違ったのか?クラスが違うというのは関係ないと思う。
他の教科の話を聞くと後のクラスの方がどちらかというと大変だと聞く。授業に集中しにくい(と他の先生から聞いた)A君も1枚をぎっしりと埋めていた。
何が違ったのか。指示や発問といった、森川の「授業行為」である。
その「授業行為」にどのような意味があったのか、向山洋一氏の授業の原則十ヵ条に照らし合わせながら分析してみる。
4.授業の原則に照らし合わせると
T1 今日は実習でやったことをまとめるためにレポートを書きます。【1:趣意説明の原則】
T2 テーマはこの2つの中から選びます。
T3 全員起立、ノートを準備できたら座りなさい。 【8.確認の原則】
T4 ノートがない人は(ノート忘れ用の紙を)取りに来なさい。 【5:所時物の原則】
T5 テーマを決めて、ノートにAかBを書きなさい。 【6:細分化の原則】
書けた人は2秒間手を挙げます。
T6 途中で変えてもいいですから、とりあえずどちらかに決めなさい。
T7 ○○に入る言葉、一つ書けたら先生に見せに来なさい。 【8:確認の原則】
賢い。教科書を見ている人がいる。教科書を参考にしてもいいんだよ。
ノートを持ってきた生徒には「なるほど」「おもしろい」「いい考えだ」短く評価しながら、ノートに赤鉛筆で○をつける。 【9:個別評定の原則】
早い生徒には黒板に書かせる。 【7:空白禁止の原則】
T8 黒板を参考にしてもかまいません。
全体として【2:一時一事の原則】 【3:簡明の原則】 【4:全員の原則】 を意識している。
5.授業がうまくいったのは
うまくいった理由を一つだけあげると「小さな成功体験の積み重ね」ではないかと思う。
それを学んだのは、向山洋一氏を始めとする法則化の書籍、TOSSのサークルである。
もしTOSSで学んでいなかったら、初日の授業のように、うまくいかなかったことを、生徒のせいにしていたであろう。(生徒に文句を言っていたかもしれない)
考えただけでも恐ろしい話である。
《参 考》向山洋一:『授業の腕を上げる法則』(明治図書)