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「鉋」に秘められた「職人の技」



森川正彦(法則化中学太子サークル)

西洋の「石の文化」に対して、日本は「木の文化」と言われる。その中で多種多様の木工具が発達してきた。その中の「鉋(かんな)」を取り上げる。


古代ギリシャ時代に作られた「パルテノン神殿」です。

発問1 何で作られていますか。

 「石です」
・ベルサイユ宮殿
・ノートルダム大聖堂 の写真を提示
 西洋の代表的な建築の多くは石で作られています。

発問2 西洋は「何の文明」だと言われていますか。

「石の文明」です。
 日本人が造った神殿、伊勢神宮です。

発問3 何で作られていますか。

「木です」
 日本の代表的な建物です。
・法隆寺
・桂離宮 の写真を提示する。

発問4 日本は「何の文明」ですか。

日本書紀にこのように書かれています。
 素戔嗚尊(スサノオノミコト)の言葉です。
(杉)と(くすのき)、この両樹は舟にせよ。(桧)は美しい宮殿を作る材料にしなさい。(槙)は人々が奥城(墓)に臥す棺材にしなさい。  四角にはそれぞれ違う言葉が入りますが、同じ種類です。

発問5 何の名前が入りますか。

「木です」
 古くから木材を使っていた日本ではこのような道具が発達してきました。
 今日はこの中の「鉋(かんな)」を勉強します。

発問6 どちらが日本の鉋ですか。

Aだとすぐ分かる。Bはどこか予想させる。 Bは中国の鉋である。

発問7 この2つの違いをノートに書きなさい。

「形の違い」はすぐ出る。これが持ち手(グリップ)であることを押さえる。
 他が出なければ次の画像を見せる。
 日本の鉋が引いて使うのに対して、中国の鉋は押して使います。

発問8 西洋の鉋はどちらでしょうか。

挙手で確認。
 西洋の鉋も押して使います。
 日本の鉋の特徴は @押して使う A取っ手がない ということです。

発問9 では、なぜ日本の大工は鉋をこんな形にしたのでしょう。

西洋で多く使われている「オーク」です。
 木目が詰まっており、堅い木です。力を入れて、押して削る方が効率的です。
 石の家にあわせて、表面はきれいに塗装します。

 日本には「檜」「杉」という木目がきれいに通った木がありました。

発問10 このように表面を塗装せずに 仕上げることを「何づくり」といいますか。

「知っている人」全員に聞く。
 日本人は「白木」がとても好きです。
「三宝」「御札」「白木のカウンター」など

発問11 白木に共通する「イメージ」は 何でしょう。

「神聖な、清浄な、」
 特に檜は最高のものとされていました。
 また、日本には素晴らしい刃物を作る技術もありました。
 日本の大工は、白木の表面を、まるで鏡のように削ろうとしました。

「力」ではなく「技」で削る

 外国のように力任せに削るのではなく、精密に、引いて削るように鉋を改良していったのです。

発問12 優秀な大工が削った時の「削 り屑」の厚さはどのくらいで しょうか。

 正解は0.003mm、3ミクロンです。
【ビデオを見せる】
 「削り花」とも言います。
 
 これだけの削りをするためには

@選りすぐった砥石 A鉋刃の研ぎ出し B鉋台の調整 C鉋刃の仕込み

そして、これらを統合する「人の技」が揃って初めて可能になります。

 機械には決してまねできない「職人の技」というのは他にもたくさんあります。
 「すばる天文台」望遠鏡のレンズは職人の手でないと磨けません。
 ロケットの先端部分 ここは機械では作れません。「へら絞り」という職人の手作業でなければ作れないのです。
 精密な機械には「きさげ」という正確な平面が必要です。
 この平面は職人が手で削るしかないのです。

 コンピュータがどんなに発達しても、機械には決て真似の出来ない「人の技」があるのです。
 こういった技が日本のものづくりを支えてきたのです。

  《参   考》 

○道具と手仕事 村松貞次郎(岩波書店)
○宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み  西岡常一(日本経済新聞社)
○宮大工 千年の知恵 松浦昭次 (祥伝社)
○職人力  小関智弘 (講談社)
○木の文化をさぐる  小原二郎(日本放送出版協会)
○古代日本の超技術  志村史夫(講談社)
○木の100不思議   日本林業技術協会:編(東京書籍)
○木の教え 塩野米松(草思社)
○木を読む 林以一(小学館)
○不揃いの木を組む 小川三夫(草思社)
○職人が語る「木の技」 安藤邦廣  (建築資料研究社)
○木工古道具の楽しみ方 松尾具屑 (武田書店)
○木工のはなし  早川謙之輔 (新潮社)
○ものと人間の文化史51 斧・鑿・鉋  吉川金次(法政大学出版局)
○大工道具から世界が見える   西和夫 (五月書房)
○木のいのち木の心 西岡常一(草思社)
○大工道具の日本史 渡邉 晶(吉川弘文館)
○木工(道具の仕立て)  手づくりの原点をさぐる  秋山良雄(美術出版社)
○数寄屋の美学 出江寛 (鹿島出版会)
○職人ことばの「技と粋」  小関智弘(東京書籍)
○木と日本人のくらし 日本木材学会編  (講談社)
○建築学の基礎6 日本建築史 後藤治 (共立出版株式会社)
○数寄屋の美学 出江寛(鹿島出版会)
○職人ことばの「技と粋」 小関智弘  (東京書籍)
○竹中大工道具館 パンフレット    《以下省略》     

        


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