以下を提出いたしました。

 

                        2010年(平成22年)1月22

 

厚生労働大臣 長妻 昭 様

 

在宅酸素療法の必須要件として

「禁煙及び禁煙治療」の義務化の提言・要請

 

NPO法人 子どもに無煙環境を推進協議会
会長  若林 明
540-0004 大阪市中央区玉造1-21--702
Tel
Fax06-6765-5020 

 

謹啓

厚生労働省【平成22115日】

「在宅酸素療法における火気の取扱いについて(通知)」(注意喚起及び周知依頼)

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/index.html

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/100115-1.pdf

(厚生労働省医政局総務課長、医政局指導課長、医薬食品局安全対策課長の連名通知)

 

が出されました。その内容概要は以下です。

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酸素吸入時の火気の取扱いについて注意喚起が行われているところです。

しかしながら、酸素濃縮装置等を使用中の患者が、喫煙等が原因と考えられる火災により死亡するなどの事故が別紙のとおり発生しております。

1.在宅酸素療法を受けている患者やその家族等に対して、以下の点を説明し、酸素吸入時の火気の取扱い等について、注意喚起すること。

1)高濃度の酸素を吸入中に、たばこ等の火気を近づけるとチューブや衣服等に引火し、重度の火傷や住宅の火災の原因となること。

2)酸素濃縮装置等の使用中は、装置の周囲2m以内には、火気を置かないこと。特に酸素吸入中には、たばこを絶対に吸わないこと。

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 今回の上記通知は、遅きになったとはいえ、対策を進める一歩にはなるでしょうが、ただ、在宅酸素療法に至る疾病(大部分はCOPD)の発症原因の多くは喫煙にあり、これによる本病の治療に「禁煙」が不可欠であり、「禁煙」及び「禁煙治療」に全く触れない本通知には根本的欠陥があります。

これら「禁煙」及び「禁煙治療」を欠いた、喫煙の注意喚起及び周知依頼だけの在宅酸素療法では、喫煙による火災で本人や家族の焼死、家や近隣の火災などは抜本的に防止できません。この根本原因こそ絶つ対策(を含めること)が不可欠です。

以上の観点より、以下を至急に提言・要請いたします。ご高配をお願い申しあげます。

1.喫煙を続ける本病の患者に、「禁煙」により快癒に向かい、楽になることを指導啓発すべきこと。(同居家族の喫煙による受動喫煙影響も含め)

 

2.喫煙を続ける本病の患者には、ニコチン依存症治療(禁煙治療)を義務づけることとすべきこと。(少なくとも特に在宅酸素療法を必要とするケースでは必須要件とすること)

 

3.禁煙できない患者の在宅酸素療法は不可とし、必要により、入院等隔離治療を義務づけること(禁煙隔離と疾病治療のため)。

 

4.上記のための通知及び法整備、またニコチン依存症の保険制度の改訂等を至急に進めること。

 

なお、「酸素療法ガイドライン」(日本呼吸器学会/日本呼吸管理学会、2006年)の中でもすでに以下の指摘がされています。

たとえば、「酸素療法に関する事故で最も危険なものは火に関するものであり、禁煙指導は無論のこと、普段の火気取り扱い上の注意や用法・用量を遵守する意味など、特にしっかりと教育する。・・・」

また、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第3版」(日本呼吸器学会、2009年)には、

長期酸素療法のところに、「COPDでは禁煙が治療の前提であるが、特に酸素療法を行う際は禁煙の徹底を確認する。」とあります。

 

敬 具

 

【参考資料】

上記の厚生労働省【平成22115日】通知の関連報道は以下です。
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酸素装置の引火死亡26件 たばこなど原因、約6年で
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011501000834.html

 呼吸困難を伴う病気の治療のため酸素濃縮装置を自宅で使用している患者が、たばこの火の引火などにより死亡した事例が、2003年12月から昨年末までに全国で26件あったことが15日、社団法人日本産業・医療ガス協会の集計でわかった。
 うち6件は昨年中に発生。厚生労働省は同日、在宅で酸素治療を受けている患者と家族に対し、火の取り扱いに注意するよう都道府県を通じ呼び掛けた。同省安全対策課は「適切に使用すれば装置は安全」としている。
 集計によると、死亡したのはほとんどが高齢の男女で60代以上が22件。原因は、たばこの火が、可能性が高いものも含め14件と最多で、火が酸素チューブに燃え移ってやけどを負ったり、火災になったりして死亡していた。ストーブや線香の火が引火した例もあった。
 厚労省によると、在宅で酸素治療を受けるのは慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の患者らで、昨年末時点で全国に約15万人。00年以降毎年約5千人のペースで増えている。
 厚労省は、高濃度の酸素吸入中に装置の周囲2メートル以内に火を近づけないよう注意することや、取扱説明書や医師の指示通りに装置を適正使用することなどを呼び掛けた。 2010/01/15 19:11   【共同通信】
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【参考までに:過去の関連報道】
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酸素吸入中、喫煙で火災 10年で患者9人死亡
2008
0123日朝日新聞

 肺が悪いため自宅で酸素吸入をしている患者が、火事で亡くなる事例が各地で相次いでいる。多くはたばこが火元で、昨年は長野市と福島県郡山市で死者が出た。重傷者を出した火災も起きているが、国や業界は、限られた事例しか把握していない。全国13万人の在宅酸素療法の利用者の中には、認知症などで危険への認識の薄い高齢者もおり、業界団体はようやく対策の強化に乗り出す。
 酸素は可燃ガスではないが、物を燃えやすくする性質があり、ときに爆発的な燃焼を起こす。酸素吸入器の周囲2メートルは火気厳禁とされる。
 たばこが原因とみられる火災による在宅酸素療法の利用患者の死亡は、朝日新聞のまとめで過去10年で少なくとも9人にのぼる。郡山市の火災は昨年11月17日に発生。民家の一部が焼け、やけどを負った男性(当時81)が12月9日に死亡した。焼け跡にたばことライターが残っており、たばこの火が酸素吸入用の樹脂製チューブに引火したらしい。
 3月9日にあった長野市の火災は、3階建てアパート1階から出火し、一人暮らしの男性(同54)が死亡した。現場で吸い殻が見つかり、消防は、たばこの火で吸入用チューブに穴が開き、燃え広がったとみている。
 在宅医療用の酸素吸入器は、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患や肺結核後遺症などで息の苦しい患者に医師が処方し、専門業者が設置する。患者は高濃度の酸素を鼻からチューブで吸入する。85年に健康保険の対象となり、利用患者は13万人を超えるという。
 日本呼吸器学会の04〜05年の調査では、利用患者のうちなお喫煙していた人は4%。約5000人が、酸素ガスの近くで火を手にしている恐れがある。家族が喫煙する人も23%いた。日本産業・医療ガス協会が毎年、機器レンタル業者の従業員向け講習会の際にしている危険事例アンケートでは、「酸素吸入中の患者が喫煙」の回答が常に数十件寄せられる。
 事故が起これば、薬事法に基づいて国へ報告しなければならないが、吸入中の喫煙など不適正使用による事故は報告義務の対象外。これまで同協会は、報道を通じて把握するだけだった。
 火災が後を絶たない背景には、事故情報の分析不足と患者への禁煙指導の不徹底があるとみられる。長野の火災を受け、同協会は事故情報の収集基準を定めたが、患者の啓発については、一人暮らしの高齢者も多く、限界があるという。同協会は「喫煙患者には業者が設置を断れるような制度が必要」としている。
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