やっぱり鉄が好き。



  なんのこっちゃと思われるかと存じますが、どう考えても僕は
 「鉄」が好きなんです。



  幼い頃、「武器になる」みたいなことを思って、棒状の物や
 鉄製の物を握った男子なら御理解頂けると思いますが、「鉄」の
 魅力は我々男子にとって重大な意味を持つのです。



  男は強く在らねばならない。女子供を守り、其れにより子孫を
 残さねばならない。さらに男は重みが無ければならない。存在と
 しての重み。そしてなにがあろうと折れない心。



  男として必要なモノ全てが「鉄」には含まれている気がして
 きませんか?其の強度、重量が「男」を「漢」に変えるのです。







  パパラパ〜ラ〜パパラパ〜ン!!


  ・・・・突然ですがここで
 「僕が手に持つとゾクゾクする鉄」ランキングベスト3を
 発表します!


  第3位
   「モンキーレンチ」

  握り易さ。さらに重過ぎず軽すぎないその「手に持った時の
 動作の自由さ」がたまりません。さらに工具工具したあのフォ
 ルムが「締めたい欲」あるいは「緩めたい欲」を掻き立てます。
 そもそも工具類全般に言えることですが、組み立てたり分解し
 たりするアイテムには特別な魅力があります。
 「貸してみな、直してやるよ」
 男として言ってみたい台詞の一つです。
 
  工具に親しむ。我々男子にとって必要であることは間違いあ
 りません。
  あとはロックの人としてフーファイターズのアレの影響もあ 
 って、堂々の3位入賞です。



  第2位
   「南京錠」
 
  子供の頃、貴方もやってみたはずです。
  
  万引き。
  
  ちょっとした度胸試し、スリルを生で体感するリアルゲーム。
 大抵の場合、万引きするモノはオヤツやマンガ等の子供の欲求
 に直結するアイテムでした。

  しかし僕は違いました。ホームセンターに行っては「南京錠」
 を盗り続けたのです。理由は解りません。周りの友達が盗ってる
 のと同じ物を盗るのが厭だったっつーのもあるんですが、当時は
 言葉にできなかった鉄への憧れから僕は「南京錠」を盗り続けた
 のだと思います。そして。
 
  カチリと錠をすれば鍵を使わないと絶対に開かない。絶対のモ
 ノなどなかなか見つからない世の中で、小さな僕の手の中にある
 「絶対」。そんな手のひらサイズの絶対性を僕は愛していたのだ
 と確信します。


  酒鬼薔薇聖斗の事件の際、報道で
 「部屋の扉に南京錠を〜」
 「浄水場の金網の扉に南京錠を〜」
 などと繰り返されるのを聞いて
 (酒鬼薔薇よ、おまえもか・・・)
 と、変な共感の仕方をしていたのは僕だけでしょうか。そうですか。



  第1位
   「文鎮」
  お習字の時間、半紙の上の方に文鎮をセットしたときの貴方の
 顔、微かにニヤついてませんでしたか?

  先だって繰り返しているとおり、鉄製のモノには男子の心をく
 すぐる魅力がある訳です。しかし、鉄を触る、手に握る、空想の
 敵を前方1M程の地点に出現させ致命傷を負わせるなどの行為に
 は一抹の後ろめたさが生じます。なぜか。

  「ちゃんと教育を受けてきた」っつーことも言えます。鉄製の
 モノで遊ぶと叱られる。だから今も鉄の魅力に駆られてテンショ
 ンが上がりそうになると後ろめたい。オーケー、わかる。
  しかしこうもっとリアルな「怖れ」が生じているような気がす
 るんです。

  鉄でできている物は大抵「鉄であることの特性を生かした、人
 間のために役立つ道具」であると、多少強引ではありますが、言
 ってしまえると思います。
  しかし「人間のために役立つ道具」であると同時に「人間を殺
 す道具」にもなり得るという事実を我々は知っています。

  モンキーレンチで殴りつけると大抵の人は昏倒します。アイス
 ピックなんかはもう殺人事件業界では、ドラクエにおける「とう
 ぞくのかぎ」ぐらいの必須アイテムです。南京錠は殺傷能力こそ
 低いですが、その「絶対に開かない」という特徴から「よく犯罪
 に使用されてんじゃないの?」ていうイメージがあります。

  「僕の前ではエエ奴なのに実は殺人犯だ。」

  ていうのを5倍の水で薄めたぐらいの軽い裏切られ感、うっす
 らとした怖さを感じませんか?


  しかし。文鎮。「ぶん」で「ちん」。 BUNG−CHING。
 どう考えても殺人現場に似合わない。あんなに鉄鉄してるのに
 「武器っぽさ」が全く感じられないという不思議な存在。さらに
 その重量により何かを固定する、いくつかの鉄の特性のなかで
 「重さ」だけに焦点を絞った道具であることの潔さ、その存在の
 仕方が裏を感じさせない、ひいては「加害っぽさ」を感じさせない
 「素敵」があると思うのです。





  「素敵な鉄」の称号を文鎮に与えることにしましょう。そして
 もう開ける事のなくなったお習字箱に想いを馳せる夜があっても
 いいじゃありませんか。



 

→モドル