ノストラダムスの年が明けまして、神戸からの報告

99.1.6
 昨日からオーストラリア(シンガポール人)の留学生が二週
間の予定でホームステイをしている。自分たちを外国に連れて
行ってくれないなら、せめて向こうからの学生をあずかりたい
と、子どもが強く求めたからだ。

 昨日、関空まで迎えに行ってきた。神戸市東部にある我が家
から車でちょうど60分である。震災で倒壊した阪神高速と平
行で走る、阪神高速湾岸線という道を走るのだが、がらがらに
すいていて、運転の得意でなく、高速道路上、最低速の車を自
認する私にも、実に快適に走ることができた。

 高速料金は片道1700円、空港への連絡橋が1730円、
駐車場代が1時間620円ということを見ても、事業費がいか
にばく大であったか想像がつく。とはいえ、車でわずか、
60分、リムジンバスを使えば片道1800円(大阪空港へ
は1020円)で行ける。

 最初は言葉のおぼつかない娘達の間に緊張があったのだが、打
ち解けるきっかけとなったのは、なんとプリクラだった。夜遅く
なってから、娘がプリクラのノートを出してくると、留学生も自
分のものを持ち出し、手持ちのプリクラの大交歓会がはじまった。
お互いに全く見知らぬ人が写っているものでも、コレクションが
増えるのが楽しいらしく、ひとつのページがどこのだれだかわか
らぬ顔でたちまちいっぱいになった。そういえば、プリクラをテ
ーマにしたヨーロッパのどこかの国のホームページを見たことが
あるような気がする。

 今日は町を案内したのだが、町を歩いていても、プリクラの機
械を見つけると、どちらが言い出すわけでもなくうれしそうに機
械の前に立って、はい、ポーズ、はい、チーズとやっている。オ
ーストラリアにある機械も、やはり日本語で、はい、ポーズ、は
い、チーズ、と声をかけるらしい。そのうち、指を二本突きだす
ピースというのも、世界共通のものになるのかもしれない。

プリクラがはやりはじめたときにも、カラオケがはやりはじめた
ときにも、日本人の特殊性、特異性を語る材料に使う評論家が多
くいたが、スタート地点が違うだけで、同じトラックを走ってい
るだけかもしれないという気がする。

その都度、先頭を走っているように見えたり、遅れをとっている
ように見えたりするだけで、実際にはそれほどの違いがないのか
もしれない。世代でくくって論じるのが意味を失っているように、
国や人種といったものでくくって論じるのが滑稽な時代に来てい
るのかもしれない、という気がする。

 今日は布引きでバスを降り、北野町、生田神社、三宮、市庁舎
へと歩き、最後は展望台から町を眺めるコースをたどった。途中、
空港の埋め立て認可を認めないように運輸大臣に求める署名に、
家族そろってした。今度の署名は未成年でもできるのだ。

 案内する途中、フェニックスプラザとかいう、県の震災の被災
状況を展示する施設にはじめて入り、英語の説明つきの映像やパ
ネル展示をながめた。神戸市近郊のジオラマにはもちろん、すで
に「神戸空港」が完成していた。

 1月16日、午後5時46分から1月17日、午前5時46分
までの12時間、ロウソクを灯し続けるというイベントがあるら
しく、ロウソクにメッセージを求めていたが、そちらの方は、う
まく説明できないが、なんだか心にためらうものがあって、なに
も描かなかった。

 市役所の25階が市議会であるらしく、その下の24階が展望
台になっていた。いわば空港問題の敵方の本丸の真下で眺める市
街というのは、こうしてあらためて見ると、地下鉄湾岸線という
「公共事業」は別にしても、本当にあちこち空き地と工事現場だ
らけだった。ちょうど出がけに留学生に震災直後の町を写した写
真集を見せてきたところだから、当時の映像と眼下の光景が頭の
中でだぶるえいか、景色が生々しく、殺伐としたものに感じられ
た。

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