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            テンカラは十人十色といわれるように、釣り人ごとに色々な釣り方があります。しかし、どの方法が良く 
          釣れるかという観点だけで議論をするのは適当ではなく、自分にとってはどのような釣り方が最も面白いか という観点で論じる必要もあると考えます。もちろん良く釣れる方が面白いのには違いがないのですが、そ れだけではないはずです。我々は漁師ではなく、遊びで釣りをしているのですから。 
            ここでは、釣り方の一例として私の実践している方法を紹介しています。私はこの釣り方で十分にテンカ 
          ラの楽しさを味わうことができておりますが、けっして良く釣れる方法としてお勧めしているわけではありま せんし、それほどの自信もございません。その程度のものとしてお読みください。 
          振り込み: 
          
            十人十色といわれるテンカラですが、振り込みについてはあまり個人差はなく、皆さん同じような振り込 
          みをされていると思います。ここでは正しい振り込み方の例として私の実践している方法、および私が振り 込みの技術を身につける過程で気付いた陥りやすい失敗を紹介しています。振り込みでお悩みの方、また はこれからテンカラを始めようとされている方の参考になれば幸いです。 
          1.正しい振り込み 
          
 
            図のAは、釣りをしているときの竿の位置です。この位置から後振りを始めますが、振り始めは竿にお 
          辞儀をさせる意識で振ります。そうすれば一旦お辞儀した竿が反発するときに、Bのようにラインを後方へ 高く運んでくれます。 
            この、ラインを高く上げるということが振り込みにとっては、ひとつの大切なポイントです。なぜ大切なの 
          かは後で説明します。 
            後振りは竿をBの位置で止めます。時計の12時の位置です。これより後ろへ振ると、竿先は下の方向 
          へ向って運動しますので、ラインが高く上がってくれません。 
            それと、もうひとつの大切なポイントは、Bの位置で少しポーズを入れ、図のようにラインがある程度後 
          方まで伸びるのを待つことです。この待ち時間が短いとラインがうまく前へ飛んでくれません。ただし、待つ とはいってもそれほど長い時間でもありません。時間にすればほんの少し、コンマ数秒のことです。外見か らは待っているようには見えないかもしれません。しかし、必ず待ち時間を入れなければなりません。 
            ここまでがうまくできていれば、前振りは簡単です。前振りも後振りと同様に竿の反発で飛ばしますの 
          で、竿の振り始めでは竿をしならせる意識で軽く振ってやります。あとは竿の反発でラインは勝手に飛んで 行きます。前振りの終わりはCの位置、時計の10時半あたりです。 
          2.失敗例−1(後振りが大き過ぎる場合) 
          
 
            この例は、ラインを振る意識が強いあまり、後振りが大きくなってしまった失敗例です。図のように、後 
          振りで竿を12時の位置撚より大きく振ってしまうと、竿先が下の方向へ向って運動しますので、後方でライ ンが低くなってしまいます。 
            前にも書きましたが、ラインは高く上げなければなりません。このように後振りが低くなってしまうと、そ 
          の後の前振でラインが水面と平行に飛び、空中で伸びきったラインがそこからヘナヘナと落下することにな ってしまいます。 
            ラインを水面へ向けて伸ばすためには、後振りでラインを高い位置に上げておく必要があるのです。そ 
          のためには、後振りは12時の位置で止めなければなりません。 
          3.失敗例−2(待ち時間がない場合) 
          
 
            これは、B位置での待ち時間がないため、ラインが後方へ伸びていない例です。Bで、まだ大部分のラ 
          インが竿先よりも前方に残っているため、この状態から前振りを行っても前方へのエネルギーは十分に発 生せず、ラインは伸び切れぬまま水面に落下してしまいます。 
            どれぐらい待てば良いのかという事ですが、これは体で覚えるしかありません。最適な待ち時間は、ライ 
          ンがレベルであるかテーパーであるか、テーパーの強さ、ラインの重さなどによって異なります。意識的に 待ち時間を変えて、後方へのラインの伸び具合と前方への飛び具合を確認して下さい。 
          まとめ: 
          
            長々と書いてきましたが、振り込みのポイントは要するに 
          
              1.後振りは高く上げる 
          
              2.ちょっと待つ 
          
            の、2点です。 
          
            もしも振り込みがうまく行かない場合には、この2点を思い出して下さい。 
          
          毛鉤の着水: 
          
            私は毛鉤の着水の仕方として、下図のA、Bの方法を使い分けています。 
          
 
            Bはまず毛鉤から先に着水しますが、その直後に毛鉤がラインに引かれて、数十センチ水面上を滑っ 
          てから落ち着きます。毛鉤の着水は少し強めで「ピシッ」という感じです。その後に水面上を「スッ」と滑りま す。この着水を感覚的に表現すれば「ピシッ、スッ」となります。 
            こうなるのは、毛鉤が着水したタイミングではテーパーラインがまだ高い位置にあって、これが定位置ま 
          で落ちるときに毛鉤を引っ張るからです。 
            Aは毛鉤とハリスが同時に着水して、その位置のまま動くことがありません。これは、毛鉤が着水したと 
          きに、テーパーラインがすでに定位置になっているように振り込んでいるからです。毛鉤の着水は「ポトッ」 という感じです。 
            この両者の使い分けですが、私は通常はAの着水をさせています。Bの振り込みでは、「ピシッ、スッ」の 
          「スッ」のところが虫の動きとしては不自然なので、魚に警戒心を与えるのではないかという心配があるから です。 
            それに比べ、Aの振り込みでは毛鉤の着水はBよりおとなしいですし、着水後の毛鉤の不自然な動きも 
          ありませんので、魚を警戒させることが少ないのではないかと思っています。 
            ただ、Aの着水では毛鉤とほぼ同時にハリスが着水するので、それが魚を警戒させるのではないかとい 
          う心配があるかもしれません。しかし実際の釣りでは、毛鉤を魚の定位している場所より1mほど上流に打 ち込んでいるので、その点はあまり心配する必要はないと思っています。また、実際にこの着水を行うよう になってからも魚の出が悪くなったと感じることもありません。 
            Bの着水は、水深があったり魚活性が低いときなど、魚に毛鉤の存在をアピールしたいときに時折使っ 
          ています。また、毛鉤が着水した時点ですぐにピックアップしてまた振りこむということを繰り返せば、いわ ゆ捨て鉤になります。 
            では、A、Bそれぞれを使い分けるときの振り込み動作のちがいですが、Aでは振り込みの最後で竿を 
          少し送る感じにします。それに対しBでは水面上30センチあたりを狙って振り込み、振り込みの最後には 竿をピタッと止める感じです。ループになったラインが空中で一旦直線になった後、毛鉤が反転して水面に 着水します。もちろん水面上30センチを狙うわけですから、竿はAに比べて若干立ち気味になります。 
          毛鉤の流し方: 
          
            わたしは、誘いを掛けずに毛鉤が出来るだけ自然に流れに乗るように、ラインをたるませ気味に流して 
          います。したがって、毛鉤は自然に少し沈み、水面下数センチ〜30センチあたりを流れています。そのた め毛鉤が見えない場合が多いのですが、その場合にはハリスを見るか、それも見えない場合にはテーパ ーラインの先端を目安に流しています。 
           誘いを掛けて釣る方法にも興味がありますが、まだあまりやったことが無く、これからの課題です。 
          
          合わせ: 
          
            毛鉤が見える場合には、魚が毛鉤をくわえるのを見てから合わせます。毛鉤が見えない場合は、魚が 
          反転したときなど毛鉤をくわえた兆候を見て合わせます。魚の出がゆっくり過ぎて毛鉤をくわえたのかどう かが分からないときは、ころあいを見計らって適当に合わせています。魚が毛鉤をくわえている時間は結 構長いので慌てる必要はありません。 
            毛鉤が沈んでいる場合は、魚の出が見えない事が多いのですが、その場合にはハリスにあたりが出る 
          ことがあります。ラインをたるませているせいか、魚が毛鉤をくわえている時間は結構長く、あたりが出てか らゆっくり合わせても合わせ遅れになることはありません。あたりが手元にくることもありますが、このとき は合わせ損ねになることが多いようです。 
            それと、毛鉤を流す範囲は、魚の出が予想される場所を少し過ぎたところまでにしています。したがって 
          打ち返しのときに魚が掛かっていることが結構あります。このときは魚が偶然掛かったのではなく、魚の出 を予測して積極的に掛けたのだと、都合のいいように解釈しています。  | 
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