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Anne of Green Gables
     L.M.Montgomery

 美しいプリンスエドワード島を舞台に描かれる想像力豊かな少女アンと人々の織りなす物語。

 

Anne of Avonlea     L.M.Montgomery


 クイーン学院を卒業し、アボンリー小学校の教師となったアンの青春。
 教師としてどのように子どもたちに向かい合うか、悩むアンの姿に誠実さを感じます。

 ここでは、ハリソンさんの存在がきいていますね。

    


Anne of the Island     L.M.Montgomery

 レドモンド大学でのアンの学生生活。パティの家で楽しい学生生活を送るアン。
記憶にはない両親を訪ねる旅。腹心の友ダイアナの結婚に心揺れ、みずからも愛に迷うアンの青春。アンが愛するのはだれ?

 学生生活が懐かしく思い出されてきます。アンほど優雅ではありませんでしたが(^^;)

 アンが自分の心に気づく場面は、いつ読んでも感動しますね。

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Anne's House of Dreams   L.M.Montgomery 

 夢の家でのアンとギルバートの新婚生活と、2人を見守る人々。灯台を守るジム船長。男とメソジストが嫌いなコーネリアさん。悲劇的な半生を送ってきた孤独な美女レスリー。ジム船長の生活手帳をもとに小説を書くケネス・フォード。

 アンとギルバートには可愛い女の子が生まれるが……。

  自分の殻を押し破って、堰を切ったように語るレスリー。悲劇を超えて結ばれるアンとレスリーの友情。そして、レスリーの心の中で密かに花開いた遅咲きの薔薇のような愛、そのゆくえは……。

 懐かしいお友だちとの旧交を確かめるかのように、ゆったりと読めました。誤算だったのはジム船長の言葉のなまり。なかなか慣れませんでした。これだけちょっとつらかったですね。

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Rilla of Ingleside    L.M.Montgomery 

 アン・シリーズ最終作。(シリーズに入っていない場合もある)
 

 アンとギルバートの末娘リラの青春は、両親の青春とは全く違ったものだった。
 初めてのダンス・パーティで、ほのかな思いを寄せていたケネスと踊るリラは幸せいっぱいだった。その夜、第一次世界大戦勃発。
 15歳から19歳までの少女が一番輝く季節を戦時下で過ごす中で、リラは一人の女性へと成長していく。

 兄や幼友だちが従軍していったある日、ひょんなことからリラは父が従軍し、母を亡くした赤ん坊を引き取ることになる。スープ鍋に入れて連れて帰った赤ん坊を、育児書と首っ引きで育てるリラ。自他共に認める赤ん坊嫌いだったリラも、いつしかジムスという愛称の赤ん坊に愛情を抱くようになる。

 アン・シリーズの中で一番、もしかしたらAnne of Green Gablesより好きかもしれない。

 きれいだけど、ちょっと軽薄なところもあったリラが、悲しみや苦難を乗り越えて成長していく姿に打たれる。

  第一次成果大戦下の生活がいきいきと描かれ、フィクションではあるが、生活記録としても価値があるのではないかと思う。

 従軍した飼い主ジェムを駅で待ち続ける忠犬マンディ、天使のような心の少年ブルース、報われることのない思いを抱いて生きていくユナたちが胸を熱くさせる。

 今回、読み終えたとき、イラクへの攻撃が始まるかもしれないという状況にあった。いくら大義のためとは言っても、しょせん戦争は殺し合いである。たとえ、勝利したとしても、戦争が人の心に癒しがたい傷を残すのは、いつの時代も同じだ。戦争とは何かを改めて考えさせる作品であった。

 

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The Blue Castle L.M.Montgomery  ISBN 0-553-28051-1

 
 ヴァランシーは29才、愛したことも愛されたこともなく、人を型にはめたがる家族や親戚に囲まれて、生きている実感を味わうこともなく、漫然と日々を送っていた。彼女が自由に生きることができるのは、空想の青い城の中だけ。 そんな彼女がある日、突如変わり始める。自由に、自分らしく生きたい、そう願う彼女の前に現れたのは、危なげな雰囲気を漂わせる男、バーニー。2人は――。

 "Anne of Green Gables"の著者モンゴメリの書いたロマンス。アンとはかなり雰囲気が違います。良質なおとなのロマンスです。モンゴメリらしい人間観察の細やかさ、ストーリー展開の巧みさ、時間を忘れて読みふけってしまう本です。香りの良いお酒に心地よく酔っている間に読み終わってしまったような、そしてもっとゆっくり味わいたかった、そんな感じさえします。
 ストーリー展開、心理描写、風景描写、どれをとっても秀逸でした。

 モンゴメリを子ども向きの作家だと思い込んでいる方にこそ読んでいただきたい作品です。
 

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Pat of Silver Bush
     L.M.Montgomery 

 銀の森農場のパットは、家族と、家族同然のようなジュディに愛され、銀の森と家族をかけがえのないものとして愛している。家族以外に心を許しているのは、母と離れて暮らすヒラリーことジングルと、長い家に住む病弱で夢見がちな少女ベッツだけ。そんなパットの回りにも、変化は容赦なく訪れる。そんな中でパットは、子ども時代に別れを告げ、大人への階段を歩み始める。
 
 このお話には独特の趣があって、わたしは好きなんですけど、今の時代には合わないのかな。  パットみたいに、自分の家があんなに好きになれるのって、すばらしいと思います。自分の属する場所をいとしいって思えるのは、幸せだろう。

 月の光を浴びながらnakedで踊るパットって好き。Anneの読者はちょっとびっくりするかも。この作品はIrishぽいのでしょうか。ほんとに妖精がいるような気がしてきます。パットって妖精ぽいな。
 だけど、自分のことを醜いと思いこんだり、きれいな従姉妹をちょっと妬んでみたり……妖精ぽいけど、どこにでもいる女の子というところも好きです。

  どんどん大人っぽくなっていくパット。でも、おとなになるということは変わっていくということ。 変化を嫌いながらも、パットは、しっかりと順応していっていきます。ひとりで流れに逆らっているわけでもなく、自分は自分としてしっかりしたものを持っている。しなければならないこと、してはいけないことをちゃんとわきまえていますね。
 
 このお話って、けっこうbitter tasteです。"me jewel"と呼ばれ、愛情いっぱいに育つパットと、実の母にも愛されていないジングルと。23章の最後の方を読んでから、泣けて泣けてしょうがない……。こんなに深いお話だったことを忘れてました。
 
 変わらないものを背景として、変わっていくものを描いています。誕生、死、出会い、別れ……。ジュディのアイルランド訛りに最初はへこたれそうでしたが、読むにつれ、まるで子守唄のように響いてきました。何とも言えないくらい、独特の趣のある物語ですね。哀調を帯びた深い物語、そんな気がします。
 
 モンゴメリがパットに託したのは何だったのか、これからゆっくり考えてみたいと思っています。

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