<チームカラー変更について>


*チームカラー変更問題とは

2004年1月、神戸市を本拠地とするJリーグチーム「ヴィッセル神戸」は、
事実上の経営破綻を受け、
楽天社長・三木谷浩史をオーナーとする
クリムゾンフットボールクラブ(以下、クリムゾン)に譲渡された。
そして、同年3月、
「来季から白と黒のチームカラーを廃止し、クリムゾンレッド(深紅)に変更する」
という記事が新聞紙上を飾った。
この「チームカラー変更」という施策は、もちろんJリーグ初、
百年の歴史を誇る海外でもほとんど行われていない行為である。

結論から言うと、この施策は、史上稀に見る愚策であった。

チームカラーの変更凍結を巡って、他チームサポを巻き込んだ反対署名が行われ、
後に、それが原因でサポーター団体が分裂するという事態を招いたことは記憶に新しい。
また、昨年一年間、
クリムゾンが過去十年の歴史を否定するかのような行動を繰り返したことで、
これまでチームを応援してきた多くの古参サポーターが、次々とゴール裏を離れ、
逆にアンチクリムゾンとして活動をしている。
現在でも両者の間には大きな禍根が残っている。
おそらく、他のチームでは決して起こらないであろう目を覆いたくなるような失態が、
この一年半の間で次々と繰り広げられた。
なぜ、そうなったのか?

我々は今、もう一度自問しなければならない。

原因は一つではない。
主たる要因は、もっと根深い所に存在するだろう。
だが、間違いなく言える。
チームカラーを変更したからこそ、
このような問題が発生したのだと。


*カラー変更理由

彼等がチームカラー変更に踏み切った理由として、いくつかの回答がなされているが、
未だ正式な発表はない。
オフィシャルHPにも、それは書かれていない。
それもそのはず、クリムゾンの言葉は、
その場その場で二転三転し、最後まで一つに定まらなかった。
2005年初頭には、「カラーなど何でもいい」という趣旨の発言が、
統括部長から飛び出す始末。
その原因は明らかだ。
公の場で、カラー変更の真なる理由を語ることができないから、それ以外にない。
その裏事情を隠すために、この一年間、彼等の口から様々な言い訳が飛び出した。

・チームカラーを変えれば、スポンサー収入が上がる。
・チームのイメージを一新する。
・ヴィジョン、戦略を具現化するメッセージ
・メジャー感のある色とデザイン
・従来のヴィジュアルでは、我々の目指す先を十分に表現できない。
・新しい旗印が絶対に必要。
・ヴィッセル神戸のイメージをアンケートすると、「カズ、白黒、弱い」などという結果が得られた。中でも、弱いというイメージを一新するために、チームカラーを変更する。
・赤の方が強そうに見える


残念ながら、これらが全て後付け設定であることは明白である。
当たり前だ。
なぜなら、変更した真なる理由は、
「楽天のグループ会社は、楽天の企業カラーにするのが道理」
という以上の物はないのだから。

*ニューアイデンティティー

なるほど、変更が発表されたのは3月だが、
これはマスコミがリークしたから明るみに出たのであって、
もっと初期の段階から計画されていたのは間違いない。
当然、神戸市から売却を持ちかけられた時点で、このことが頭の中にあったであろう。
その時、彼等は、この方策をめぐって激しい反対運動が起こる等、
具体的な将来のビジョン(想像力)を持ち得ただろうか。
答えは否だ。
もし、俗に言われている通り、議論を重ねた上での苦渋の決断があったなら、
このような事態にはならなかったと断言できる。
あまりにも見通しが甘過ぎた。
つまり、あまりにも変更理由に論理的矛盾が多過ぎた。
だからこそ、後から苦しい言い訳を作り上げなければならないのだ。

そして、その行き着く先が、新チームカラーを発表した時に、
クリムゾンがHP上に掲載した史上最大の暴言
「ニューアイデンティティー」である。
詳しく述べるスペースはないが、
そもそも、アイデンティティーとは他人に与えられる物ではないし、
また、自分のアイデンティティーを他人に強要することを、
日本語で「支配する」と言う。
言い訳であっても、決して口にしてはならない言葉だ。
クリムゾンがサポーターと神戸市民をどのように位置付けているか、
それが最もよく示された瞬間である。

*なぜ、クリムゾンレッドではいけないか

個人的な意見を述べさせて頂ければ、
経営譲渡時にチームカラー変更を条件に盛り込む等、
正式な手続きを踏んでさえいれば、チームカラーを変えること自体は許容範囲内である。
何しろ、一度潰れたチームだ。
手に入れた物をどうしようと彼の自由である。
おそらく、自分が彼の立場であってもそうしたであろう。
ただし、それはクリムゾンレッド以外に限られる。
他の色ならばともかく、クリムゾンレッドだけはいけない。
なぜなら、以下の二つの理由があるからだ。

*クリムゾンレッドは楽天の企業カラーである

Jリーグの理念は、クラブチームから極力企業色を排除することである。
サッカーに興味ある方なら誰でも知っている。
だが、今回の施策は、そんなJリーグの理念に真っ向から反対する行為である。
チームを救ってもらった、三木谷がいなければ潰れていた、
そんなことは全く関係ない。
どんなことがあろうと、理念は遵守しなければならない。
プロ野球文化が骨の髄まで染み付いている日本で、
新たにプロサッカーの芽を育てるためには、それしか方法がない。
Jリーグチームの一致団結こそが、プロ野球に対抗できる唯一の手段である。
それゆえ、理念に賛同しない者は、Jリーグに加盟してはならない。
子供でも分かる理屈だ。
(過去、ヴェルディ川崎が没落していった過程を見れば、明らかである)

しかし、クリムゾンは、「ヴィッセルの親会社は楽天ではない」という、
いわゆる強引な大人の論理で逃げを図った。
残念ながら、その言い訳を支持する自称サポーターも多い。
そういう方々は、一度、仙台にある野球チームをじっくりと見て頂きたい。
なぜ、神戸とは何も関係のないはずの一企業チームが、
全く同じチームカラーのユニフォームを身にまとっているのか。
なぜ、クリムゾン自身、独自色が強いと定義している神戸市のチームが、
仙台市のチームと同じチームカラーにしなければならないのか。
それこそ、ヴィッセル神戸という市民クラブが、
ただの企業スポーツに成り下がった証拠である。

繰り返しになるが、
Jリーグの理念に賛同しない者は、Jリーグに加盟する権利はない。
もし、ヴィッセル神戸が神戸市民のためのクラブを自称するなら、
早急にクリムゾンレッドを廃止すべきである。

*クリムゾンレッドはハーバード大学のスクールカラーである

ハーバード大学は、三木谷オーナーの出身校である。
それ以上でも、それ以下でもない。
神戸市民でハーバード大学に関係する者は、ほぼ皆無である。
また、楽天本社にも、ハーバード大学に関係する者はいないはずだ。
それを分かった上で、そのスクールカラーをクラブチームの新カラーに据えるということは、
そのチームを私物化するということ以外の何物でもない。
これが企業ならば好きにすればいい。
企業チームでも同様だ。

だが、Jリーグのチームはクラブチームである。
チーム名に企業名が入っていない。
代わりに地域名が入っている。
つまり、そのチームは、その街みんなの持ち物=公共物であるはずだ。
その公共物を私物化することは、どのような理由があって許されることではない。
たとえ、潰れかけのクラブを助けたとしても、
たとえ、株式会社を買収したとしても、
絶対に超えてはいけない一線である。
それを理解できない者は、クラブチームを所有してはいけない。
また、それを応援する者は、サポーターを名乗ってはいけない。

チームを私物化するということは、ヴィッセル=三木谷になることである。
しかし、一方で、チームは地域密着(ヴィッセル=神戸市)を目指している。
ならば、どうなるか、単純な三段論法だ。
つまり、神戸市=三木谷になるということだ。
一市民として、神戸市民の誇りを持つ者として、
それは絶対に認めてはならないことである。

*結論

以上二点より、我々はクリムゾンFCに対して、
直ちにクリムゾンカラーの廃止を要求する。
でなければ、このチームを「ヴィッセル神戸」と認めることはできない。
現在、このチームは「ヴィッセル楽天」、もしくは「ヴィッセル三木谷」である。
神戸市民である以上、その憂うべき現状に対して、
最後の最後まで糾弾させて頂く。
それが嫌なら、今すぐ「地域密着」という看板を下ろすべきだ。

*追記

これらの愚策による最も悪質な影響は、前例を作ってしまったことである。
「大義名分さえあれば、チームカラーを変更してもいい」
という悪しき前例。
その考えは、明らかに間違っている。
しかし、一人でも、皆の取り決めを破る者が現われたら、
堤防はすぐに決壊するのが現実。
それゆえ、これらのことは、他のJリーグチームのサポーターにとっても、
決して対岸の火事ではない。
もし、チームが大企業に買収されたら、
愛するチームカラーが企業カラーに変更されてしまうかもしれない。
また、弱小チームのイメージを一新するために、
不可侵のチームカラーに手を付けられてしまうかもしれない。
そのような可能性が生まれること自体、本来、あってはならないことだ。

これらの事態を招いてしまったことに対し、
神戸市民の一人として、深くお詫びを申し上げる。
我々にできることは、
「チームカラーを変えたチームは、必ず失敗する」
という新たな前例を作ることだけだ。

この記事は書きかけです。
加筆、訂正してくださる協力者を求めています。


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