「終わりましたね。少し汚い手だけど、あなたを捕まえればアイリスもおとなしくなる」

その通りだな。アイリスなら、その状態から攻撃なんて出来ないだろう。

レグルス!速くこっちに来い。息を止めている間に!

そうしないと、本当にそうなる!

足音が近づく、もう少し……。

あと3歩……2歩……1歩……ここだ!

立ち上がり左手に持ち直した剣を、頭に向けて振り下ろす。

「消える事なき永遠の闇 我が手に宿り我を守護せよ サタンズシールド」

落ち着いた声。俺が起きているのを、知っていたかのようだ。

レグルスが、手のひらをかざすと黒い楯が表れる。剣が防がれた。

読んでたぜ!レグルス。わざと反応できる速さで振り下ろしたんだ!

剣はおとり、当たらないようぎりぎりで止めた。楯にも軽く触れただけだ。

誰だって、まず最初に頭を守る。剣での攻撃ならなおさらだ!

俺の本命は、別にある。

強く握った右手を、腹に叩き込んだ!

剣を左手で持ったのは、利き手でこうするためだ。

「……さすがですね…………僕の……負けです……」

レグルスの体から力が抜けた。倒れ掛かってきたレグルスを、床に寝かせる。

霧が晴れてきた……。術者が気絶したからだろう。

ようやく話せる。

「みんな、こっちは終わったぜ!ヴリトラ。おまえはまだやる気か?」

ヴリトラが、組み合っていたフィソラから離れた。

『我の主人が倒されたのだ、負けを認めねばならぬな……。

……残念だ……』

ヴリトラが座った。戦う意思もないようだ。

「アイリス、これでいいよな?」

「完璧。でも、心配させないでよ!いきなり倒れたりして!」

少し怒ったように、そう言ってきた。そう言われてもな……。

「これよりいい方法があるか?」

「……」

あるはず無い。実際レグルスは気絶しているだけ、怪我らしい怪我も無い。

「……そうね。ありがとう、これで縛っておいて!」

ポケットから縄を取り出し俺に投げる。

たぶん逃げないだろうが、念を入れておいたほうがいいな。

レグルスの手足を縛り、壁にもたれさせた。この方が、起きた後に話しやすい。

「これでもう大丈夫……彼は幸せになれるわ」

優しく微笑み、そう言うが……

どういうことだ!このあと長老に突き出すんじゃないのか!?

「アイリス、どうやって……」

「終わったようじゃな」

言いかけたところで、急に声がした。

後ろを振り向くと、洞窟の入り口に長老がいた。

「レグルスを渡してもらおうかの。残念じゃが、責任を取らねばならん……」

そう話す。急にアイリスが立ち上がった!

「ウロボス様、どうか私の話をお聞き下さい!」

なにをする気だ?

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