Buy one get one free



アメリカのスパーなどで期間限定での安売りを行う。『Buy one get one free』つまり、1つ購入すると1つが無料と言うこと。つまり、実質的な値段が半額になる。アメリカに来たばかりの頃、何故半額にしないのか疑問だった。この安売りキャンペーンは実際の表示価格を値下げしているわけではない、ここがポイントなのだ。


アメリカではFairと言う考え方が強く、我々の製品でも値下げをすると客先の在庫分も補償してやらなくてはならない。すなわち『プライスプロテクション』と呼ばれ、客の損害を補償するのだ。ある時、マーケッティングマネージャと取引先のことで打ち合わせをしていた。その取引先のリベートを減らす変わりに、出荷価格を下げる事を考えた。普通日本の感覚だったら、単価変更は新規出荷分からで客も大喜びのハズ。しかし、マーケティングマネージャの彼女はその場合は在庫を補償しなくてはならないと彼女は頑張る。『プライスプロテクション』の事は知っていたが、今回の変更は標準価格を下げてるのではなく、卸価格を客が有利になるように下げる案。遂に彼女はレシートを持ってきた、どこかのグロサリーのレシート、裏には30日だったか60日以内に定価を替えた場合(値下げ)はレシートを持って行けば、その分返金してくれると書いてある。だから彼女はレシートを大切にしている。


従って、『Buy one get one free』は定価を変えておらず、過去の購入客への返金問題を解消するバーゲンの手段。


この様なキャンペーンもある、2個購入で1つ無料


また、アメリカでは顧客の権利を大切にする。従って、返品はある期間内は自由、返品時には理由も聞かれない。大型の電気店、グローサリーの入り口にある『Customer Center』には返品をもつ客が列を作っている。返品された製品はそのまま製品棚に並ぶ、従って、僕は電気屋などで購入する場合は開封痕がない箱を選ぶようにしている。


また、レストランでも同じようなことが言える。ステーキを注文するときには焼き方などを伝える、ウエイターは厨房からテーブルに運ぶときに焼き方がOKか客に聞く。僕はNGと言ったことはないが、アメリカ人は平気でNGを出す。ウエイターも笑顔で対応、焼きが足りない場合もその肉に焼きを加えるのでなく新規で調理。ある時、3回NGを出した米人がいた、さすがにOKのステーキが出てきたときには全員デザートを食べている時だった。この時も、ウエイターは嫌な顔一つ見せない。


日本では店員の殆どが店の経営を頭に入れて仕事をする、無駄をなくし利益の上がる事をそれぞれ個人が考えている。或いは、社員教育ではアルバイトに至るまでもそのような教育をされた結果による。

しかし、仕事に対して分業の考え方の強いアメリカでは返品を受ける仕事に従事している人間、客の満足を満たすウエイターなどはただ自分に与えられた仕事をやり遂げているだけなのだ。すなわち顧客を満足させるのが彼らの仕事であれば、それを忠実に遂行している。製品が気に入られないのも、肉の焼き方が客の好みに合わないのも彼らの責任ではない。日本の様に中途半端に余計なことは考えない、経営を考える人間は別にいる。


これは、完全に文化の違い。会社での仕事でも『Job description』で社員とは契約している、つまり自分の仕事の範囲が書面化されて、それで給与を決めている。社員はその内容を上司と打ち合わせ、その契約内容の仕事をまっとうにする。それ以外の事(極端に言えば、人が困っていても)はやらない。事務所の掃除などはもってのほか、日本の様に社員が交替でやることなどは絶対にあり得ない。

赴任時から『Team work』と言って、何とか日本文化の協力・協調体制で進めてはいるが、表面上は理解してくれているがなかなか日本の考え方を押しつけることは無理であり、難しい。


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