メルカバ MK2

イスラエル陸軍が装備する「メルカバ戦車」です。1967年から開発を始め、1974年に試作車が完成、1979年より実戦配備が始まりました。1982年、イスラエルの「レバノン侵攻作戦」で初めて実戦投入されました。MK1からモデルチェンジを繰り返し、現在MK3が生産されています。「世界一安全な戦車」と呼ばれ、その乗員の安全性は全世界が認めるところで、実戦使用でもいまだ正面から撃破されたことはありません。エンジンはアメリカ製、その他はイスラエル国産です。

イスラエルは、その建国の歴史から、アラブ諸国と敵対関係にあり、実際何度も戦火を交えてきました(第1〜4次中東戦争ですね)その数多くの経験から、「とにかく乗員が安全な戦車を」との考えによって開発され、通常の戦車はエンジンやミッションは車体後部に配置されるのですが、メルカバでは車体の一番前に配置されています。乗員のスペースはその後ろに配置されるため、戦車砲や対戦車ミサイルが命中してもエンジンやミッションなどの駆動部が盾となり、乗員のダメージを極力軽減する構造です。「戦車は破壊されても乗員の無事を」との、考えてみれば非常に合理的な設計です。

兵装は、国産の120ミリ戦車砲が1門、60ミリ迫撃砲1門、12.7ミリ重機関銃1門そして7.62ミリ機関銃が2門と、かなりの重武装です。そして弾薬類は、車体後部の耐熱コンテナに格納され、敵弾の命中により火災が発生しても弾薬が誘爆する危険は非常に低くなっており、ここにも「生存性」への配慮がなされています。最新型のMK3では、基本の装甲の上にさらに複合材を積層したモジュラー装甲なるものをぴったりはめこんでおり、たいていの砲弾は内部まで貫通しません。

対戦車砲や対戦車ミサイルの弾は、命中と同時に数千度の超高温のジェット噴流が噴出し、これが戦車のぶ厚い装甲を溶かして内部に高温の溶解した鉄などが噴出し、車内は灼熱地獄と化す訳ですが、このメルカバのエンジン配置と複合の装甲により、乗員に対する安全性は非常に高くなっています。度重なる戦争での経験から「乗員の生存性」を第一に考え設計された「世界一安全な戦車」メルカバでした。