平成17年7月1日発行

育成会だより

             第87号

西脇市手をつなぐ育成会
 会長  竹中 敏文

広報  西脇市大野175
  ワークホームタンポポ内
 

例会のお知らせ

 平成17年7月17日(日)午前10時〜 於 ワークホームタンポポ
西脇市への要望等を話し合います。多くの会員の方の参加を期待します。



育成会総会時に、益田様より講演していただいた内容です。

“しょうがい”の考え方について

 
社会福祉法人 ゆたか会
益 田 毅
1.はじめに
  障害者福祉の方向性
  1980年代から1990年代の国際的な動向の中で、我が国の障害者福祉の流れも大きく変わってきました。そのような中、2003年から2012年までの10年間の障害者施策の基本的方向を定めた“障害者基本計画”では、従来の「ノーマライゼーション」と「リハビリテーション」の理念を継承し、地域生活を支える社会基盤を整備し、施設から地域における障害者の自立と社会参加を支援すると共に障害の原因となる疾病や事故の予防・防止等に重点を置き、人権尊重・能力発揮のできる社会の実現のために、社会のバリアフリー化を推進して国民相互に尊重しあう“共生社会”をめざすとしています。
2.発達障害について
 発達障害とは
もともとアメリカ合衆国の公法で用いられた法律用語
  発達障害の特徴(米国法典集より)
1.原則的に5歳以上の人に見られる永続的な重度の障害を言う。
2.その障害は、知的障害または身体障害、あるいはその重複障害に起因する。
3.その障害は22歳までに現れる。
4.その障害は、生涯にわたって持続する。
5.その障害のために、身辺処理・言葉の理解と表出・学習・移動・自己決定・自立生活能力・経済的な自  立という主要な日常活動のうち、少なくとも3つ以上の領域で機能的にかなりの制限を受ける。
6.そのために、生涯を通じてあるいは長期間、個別的なサービス・支援・援助が必要とされる。
 
わが国で発達障害として取り上げられているもの
 精神遅滞、広汎性発達障害(自閉性障害・アスペルガー障害等)、脳性マヒ、発作性疾患、脳機能障害と関 連した障害(学習障害・注意欠陥多動性障害)、視覚障害、聴覚障害
 
発達障害の分類
・発達障害精神遅滞(全般的で均一な遅れ)
 ・広汎性発達障害 (全般的で不均一な遅れ)
 自閉性障害など
 ・その他の発達障害 (部分的な遅れ)
 LD(学習能力障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など
 
DSM−W 診断基準
精神遅滞
 次の3点を満たすもの
 A.明らかに平均以下の知的機能.
   個別施行による知能検査で、およそ70またはそれ以下のIQ(幼児においては、明らかに平均以下の知的機能であるという臨床的判断による)。
 B.同時に、現在の適応機能(すなわち、その文化圏でその年齢に対して期待される基準に適合する有能さ)の欠陥または不全が、以下のうち2つ以上の領域で存在.
   意思伝達、自己管理、家庭生活、社会的/対人的技能、地域社会資源の利用、自律性、発揮される学習能力、仕事、余暇、健康、安全。
 C.発症は18歳未満である.
 
  広汎性発達障害
自閉的特徴をもつ障害の総称として1980年代より使用されるようになった概念
  自閉症、レット症候群、アスペルガー症候群等
特徴は
 @社会性の発達の質的障害、特に対人場面における相互交流活動の質的障害
 Aコミュニケーションと想像的活動性の障害
 B活動範囲と興味の対象の著名な限定
 
  その他の発達障害
   注意欠陥/多動性障害
   A.(1)か(2)のどちらか
   (1)不注意の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの
   (2)多動性−衝動性の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達水準に相応しない 
   B.多動性−衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳未満に存在し、障害を引き起こしている。
   C.これらの症状による障害が2つ以上の状況において(例えば、学校[または仕事]と家庭)存在 する。
   D.社会的、学業的または職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が 存在しなければならない。
   E.その症状は広汎性発達障害、精神分裂病、またはその他の精神病性障害の経過中にのみ起こるも のではなく、他の精神疾患(例えば、気分障害、不安障害、解離性障害、または人格障害)ではう まく説明されない。
 
学習障害
 学習障害
読字障害
算数障害
書字表出障害
運動能力障害
・発達性協調運動障害
コミュニケーション障害
表出性言語障害
受容−表出混合性言語障害
音韻障害
吃音症
3.障害の概念
  国際障害分類試案の障害の構造
 
    疾 病 → 機能障害 → 能力障害 → 社会的不利
    Disease  Impaiments  Disabilities  Handicaps
   ICF(国際生活機能分類)の構成要素間の相互作用
  
                健康状態
             (変調または病気)
   
 
心身機能       活 動        参 加
身体構造               
 
 
 
         環境因子        個人因子 
 
医学モデルと社会モデル
「障害」のとらえ方として“医学モデル”と“社会モデル”の考え方がある。
“医学モデル”では「障害」は疾病などを原因としておきた個人の問題としてとらえるため、対応のあり方も個人に対する治療や訓練という形で、適応行動がとれるようになるということが目標となっている。
“ 社会モデル”においては「障害」を社会的につくられた問題であるととらえ、「障害」は個人の課題ではなく個人を含む社会的環境によるものであるとしており、その人が生活している回りの状況、その中にある様々な「障壁」によって「障害」が作られていくという考え方をとっている。 
 地域生活という視点で考えると“社会モデル”を基盤に「障害」をとらえていく必要があるように思われる。 
4.支援の考え方について
 ・お金の計算ができない → 買い物に行けない?
 ・家事ができない → 一人暮らしができない?
・不適応行動がある → 障害のある本人だけの問題?
5.自立支援
 
あくまでも自立支援
・プライドを育てること
   対応の基本はあくまでも自立支援です。障害があるがゆえにできないこともたくさんありますが、“どうすればできるようになるのか”“どうすれば一人でできることがふやせるのか”といった視点を周りの人間がもつことによって、自立した生活が送れるようになっていくと思います。自立した生活が送れるようになれば自ずと自尊心というものも目覚め、それが彼らの“生きがい”にもつながっていくのではないでしょうか。
自立について   
   “「何もかもすべて自分の力でできなければ自立とはいえない」ということであれば、自立している人など誰一人いないということになってしまう。われわれの生活を振り返ってみても何もかもすべて一人でできる人などいない。”といったことをよく耳にします。もちろんそのとおりなわけで、われわれは生活の中で知らず知らずのうちに何らかの“手助け”を受けて生きています。ただし、ここでよく考えなければならないのは、われわれはそういった“手助け”を自らの力で手に入れたりその中身を選択したりすることができるということです。ところが、障害のある人達の中にはこのこと自体できない人が大勢います。とすれば、障害のある人の自立支援を考えるときには、よりきめの細かい手厚い援助が必要になってくるのは当然のことです。このことを抜きにして障害のある人達の“自立”は考えられないと思います。
 
 
 ・自己決定について
   最近、“自己選択”とか“自己決定”といった言葉がよく使われます。しかし、本当に自分で選択したり決定したりすることができるだけの“選択肢”がそろっているでしょうか? また、本人たちが自分にとって本当によいものを選べるだけの経験を積んでいるでしょうか? こういった前提がない中では、本来の意味での自己決定というものは存在しえないと思います。
 
・ニーズ
   日々、生活していく上で“必要なもの”“必要なこと”は何かということを考えていくうえで、「利用者がしたいこと」「望んでいること」あるいは「困っていること」を探っていくことはもちろん大切ですが、それだけではなく将来の生活を考えた時に、今、「身につけておかなくてはならないことは何か」「準備しておかなければならないことは何か」ということを考えておくことも必要です。
また、当然のことながらニーズはライフステージによって異なってきます。簡単にいえば、幼少期から学齢期にはさまざまなスキルを身につけていくということに重点が置かれるでしょうし、成人期以降はこれまでに身につけてきたスキルを生かしていかに生活の幅を広げていくかという視点が大切になってくると思います。
 
*エンパワメント
   「差別、偏見などの対象となり、本来有している力を発揮しきれない状態にある人々に対し、その力を引き出すための援助」
   利用者を訓練し環境に適応させるのではなく、利用者の持つ強さ、良さ、長所、潜在能力を引き出すことによって利用者がパワーを身につけ、環境に働きかけることを通して問題解決を図れるよう支援することを意味する。
   
家族の一員として
家庭での役割について
  家庭内において自分の居場所があるかどうか、家族の中で存在を認められているかどうかということはとても大切なことです。自分の居場所や役割を持っているかどうかによって、家庭で落ち着いた生活が送れるかどうかにかなり影響するように思います。
 
年齢相応の対応を
 障害があるがゆえについつい子供扱いをしてしまう傾向があるように思います。あくまでも年相応の対応を心がけることが大切です。それはどんなに重い障害をもっていても同じだと思います。子供扱いをしてしまうことによって、かなりプライドを傷つけてしまうことがあり、それがいろんな行動の引き金になることもあるようです。
 
6.良い関係を保つために
 (1)安心と安全の関係づくり
  ・不安や緊張を与えないような対応が必要。  
 (2)正直に物を言うこと
  ・その場しのぎの対応をしていないか。
 (3)無意識に対して敏感になること
  ・意識していないところで傷つけていないか。
 (4)自尊心(プライド)を大切にすること
  ・認められないことのさみしさを知る。
 (5)できることは見守り、できないところに支援を
  ・やる気が出るような関わりをする。
 
◇将来について
 みんなでかんがえてみましょう
 
講演を聞いての感想
 社会モデルによる「しょうがい」のとらえ方を今一度よく考えてみることが大切だと思います。ある社会では「しょうがい」になるようなことも、別の社会ではそうではないということです。社会ということばの中には、もちろん、すべての人が含まれるということです。