平成15年6月1日発行

育成会だより

                   第62号

西脇市手をつなぐ育成会
 会長  竹中 敏文

広報  西脇市大野175
  ワークホームタンポポ内
 

平成15年度 西脇市手をつなぐ育成会総会
(平成15年6月1日 於 西脇市総合福祉センター)
会長 竹中 敏文
会員の皆様におかれましては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
障害者福祉サービスにおいては、今年4月より支援費制度がスタートし大きな変化点になりました。この新しい制度に、皆様とともに、その名の通り、手をつなぎあって、取り組んでいきたいと思っています。
 これまでの障害者福祉サービスは「措置制度」で支えられてきました。困っている人に対し、行政がサービスの中身をきめるのが措置制度で、契約によるサービスを受けることが支援費制度です。したがって、いままでは、行政が困っている人を発見する義務があったのに対し、これからは「自己責任」が発生し、申請しないとなにもサービスが受けられないということです。
この「支援費制度」は、各市町すべてサービス内容がいっしょではないことをご理解いただきたいと思います。西脇市の支援費制度サービス内容の充実をはかる為にも、まずはサービスがなくても申請に行くことをお願いいたします。待っていても、誰も何もしてくれません。「難しい」とか「面倒くさい」は通用しません。 しかし、実際に自分達の子供にこのサービスが受けられるのかどうかわからないという方も多いかもしれません。案内パンフを見ても、案外理解しにくいかもしれません。
こんな時にこそ、手をつなぐ育成会を利用してください。そのためにも、是非、今後の育成会活動に参加していただき、皆さんと情報交換をしていただきたいと思います。
参加していただき、いろんな具体例を聞かされる方がずっと理解しやすし相談もできると思います。
 また、この一環といたしまして、今年度より、お父様方にも理解を得ていただくために、企画調整部主催の「父親の会」を6月からスタートさせます。是非ご参加していただき、情報交換や勉強会をしていただきたいと思います。
 子供達の将来の為に、ご家族一同協力していただき、今後の障害者福祉にご協力いただきたいと思います。



神戸新聞ニュース:総合/2003.5.16/

地裁「公的支援が不十分」 自閉症長男殺害の父に猶予刑

パニック症状を起こす高機能自閉症の長男=当時(14)=の将来を悲観し、首を絞めて殺害したとして、殺人罪に問われた神戸市北区道場町生野、無職の父親(57)に対する判決公判が十五日、神戸地裁であった。笹野明義裁判長は「動機は身勝手で独善的。しかし、犯行直後に自殺を図るなど、犯行の重大性を認識し、反省もしている」などとして、父親に懲役三年、執行猶予五年(求刑懲役六年)を言い渡した。
判決によると、父親は昨年七月二十四日正午ごろ、自宅二階で寝ていた県立神戸養護学校中学部二年(当時)の長男の首にビニール製コードを巻きつけて窒息死させた。長男は小学校入学後から自閉症の症状が現れ、事件前には症状が悪化していた。特定の言語表現に過敏に反応し、叫んだり暴れたりするパニック症状に連日連夜、陥ったという。事件後、父親の寛大な処分を求め、障害者団体や医療関係者ら計約二万人の嘆願書が集まっていた。
笹野裁判長は、高機能自閉症の現状を「社会的認知度や治療・療養施設などの公的な支援体制が不十分」と指摘。その上で、父親を猶予刑としたことについて「長年にわたり被害者の障害と正面から向き合い、できる限りの看護、対応をしてきた」などとした。

弁論要旨(抜粋)

一、本件は痛ましい事件でした。これ程の不幸があるものかという事態に必死に堪え、家族に愛情を注ぎ込んでいた父親が終に力尽きたのです。誠実一筋に人生を歩んだ被告人が殺人という大罪を犯してしまったのです。そしてその対象は彼が愛してやまなかった自分の子供だったのです。被告人の誠実さと家族に対する愛情の深さが彼に開き直りを許さなかった、その結果ではないかと思います。
二、弁護人は本件の刑罰は何かと考えるに、自分が手にかけてしまった息子の冥福を祈り、福祉関係の仕事に携わりたいという被告人の希望を適えてやることこそが、本件に対して国家・社会が与える罰であるべきだと思うのです。
被告人は隆大君の養育にあたり、福祉問題を己のものとして感じとってきました。だからこそ福祉関係の仕事に携わることで、罪の償いをしようとしてきているのです。自分や隆大と同じように苦しんでいる人が世の中にいる、その人たちの助けになりたい、これが被告人の償いなのです。
犯罪を犯した人に対する国家・社会の罰は、本来その犯罪、その人に対応していろいろなバリエーションがあって然るべくきだと思います。現に強制的な社会奉仕活動を刑罰の種類に加えている国もあります。ただ日本の現行法では刑罰の種類は限定されています。しかし、その限定の中で被告人に対する刑罰即ち、子の冥福を祈らせ、自分や隆大と同じ苦しみを味わっている人の援助をさせるという罰を実現させるのは、執行猶予付判決だと思うにです。
 このことは、服役が本件では全く意味をもたないということからも、裏付けることができます。被告人に法定刑3年以上の懲役を科すことは何の意義も有しません。懲役により罪の意識を自覚させ再犯性を払拭することも必要でないし、強制労働により勤労意欲を涵養させることも不要です。被害感情の鎮静化も本件では必要ありません。一般予防だけが問題ですが、事件の性質や嘆願書集めの際の反応などからそのようなリスクはありません。被告人に服役を科することは只いたずらに時を経過させるだけで、国家社会にとっても被告人個人にとっても全く無益な行いであるばかりでなく、被告人の社会復帰を遅らせ、福祉活動についての資格取得等の障害ともなります。
弁護人はこうした観点から被告人には執行猶予付判決を下していただきたく願うものです。被告人は必ず、裁判所の、国家・社会の期待に応えてくれるはずです。



父親の会に寄せて

 「父親の会」を立ち上げようと話をしたところ、奇しくも、悲しい事件の判決が出ました。同じ兵庫県に住む、障害児を抱える父親の痛ましい事件でした。世の多くの父親が、子どものことは母親に任せきりになっているのに比べて、この事件の父親は、子どものことに対して熱心で、人一倍正義感も強かったと聞いています。そんな父親がなぜこのような事件を起こしたのでしょうか?その要因の中で大きなウエイトを占めるのが、2年前に起こった長女の交通事故でした。長女は植物状態となり、看護と介護が必要となりました。そのため、母親は病院に行くことが多くなり、長男の世話をすることが難しくなりました。そんな中で、父親はできる限りのことをやり、児童相談所にも相談をします。しかし、児童相談所から紹介されたのは、精神病院でのショートスティだったのです。そこでの対応は、パニックになれば、鎮静注射をするという対処療法で、長男の状態はかえって悪くなったといいます。事件のあった日、何日か先に、また、ショートスティに行かざるを得ない長男の安らかな寝顔をみたとき、父親はその不憫さを思い、悲しい出来事を実行しました。そして、すぐ自分も死のうとしました。しかし、死に切れませんでした。このような悲しいことを繰り返さないために、私たちができることはどんなことでしょうか?新聞報道にもある「公的支援」を訴えていくことも、もちろん大切ですが、同じ立場にある者同士、連携をしていくことがまず第一歩ではないかと思います。一人でも多くの父親の参加を期待します。