■へ〜そうなんやF (クリスチャン新聞より転載)

明治8年の神田川事件

 南こうせつの歌う「神田川」は、

貧しい若い男女のラブストーリーが切ないほど心に響いてくる。

だが、曲があまりにロマンチックなので、

神田川を訪れたりするとがっかりしてしまう。

最近は、しゅんせつ作業で少しはきれいになったが、

それでも水の汚れはなくなっていない。

 ところで、キリスト教の歴史を紐解いている間に、

この神田川が重要な意味をもっていることが分かった。

なんと、日本の最初の浸礼式がこの川で行なわれたというのである。

時は、1875年、明治8年のことである。

 もっとも、100年以上前の神田川である。

水清く流れていたことも想像できる。

そこで内田はまという女性が、

バプテスト派のアーサー宣教師によって、ざぶんと水に沈められた。

驚いたのが、神田川沿いの往来を通る多くの群集だった。

 この異様な光景を見て人々は、日本人と西洋人が情死したとか、

西洋人から折檻されたとかうわさがうわさを呼び、当時の新聞にも報道された。

実際は、キリストを信じた証しとして、

水に体を沈めるバプテスマ(浸礼式)が行なわれたのだが、

未亡人だった内田はまは、

28歳の若さで衆人環視を省みず、堂々と信仰を告白した。

 普通、洗礼というと頭に水を垂らす滴礼と体ごと水に浸す浸礼があり、

滴礼による洗礼式は、すでに横浜などでアメリカ人宣教師などによって行なわれていたが、

浸礼となると、この内田はまが最初の浸礼者と記録されている。