■へ〜そうなんや 24 (クリスチャン新聞より転載)

本牧亭の寄席伝道会

今から40年以上も前、

東京・上野にあった講釈場の本牧亭で、

寄席伝道会が開かれた。

小崎道雄、賀川ハル、片山哲など

キリスト教界の長老陣を講師に迎え、

余興に桂文楽、林家昭三等が落語を一席披露した。

本牧亭が、営業目的で寄席伝道会に場所を貸したわけではない。

実はこの企画、講談師、田辺南鶴の肝いりで実現した。

何せそれ以前から、南鶴は、

本牧亭の高座で新島襄や内村鑑三ら

クリスチャンの歴史的人物を講談にまとめ、

熱弁をふるっていたのである。

ところが田辺南鶴自身は、当初、信仰はなかった。

キリスト教視聴覚センターに頼まれて

クリスチャン列伝をうなっていただけである。

だが、ガンで最愛の妻を失い、

自らも病に倒れたとき信仰に目覚め、

1950年、銀座教会の鵜飼勇牧師から洗礼を受けた。

回心の南鶴は、聖書に没頭した。

クリスチャン講談師として、各地の教会を応援しただけでなく、

先のような寄席伝道会を本牧亭で実現させたのである。

ちなみに本牧亭は、我が国唯一の講談専門寄席だった。

安政年間に、江戸だけで200以上もあったと言われる講釈場も、

戦後は本牧亭ただ1つに。

それも1990年には閉鎖、

今は黒門町本牧亭が講談の火を受け継いである。