■へ〜そうなんやP (クリスチャン新聞より転載)

自分のために使われなかった財産

何度覚えても、すぐ忘れる名前というものがある。

アーチバルト・オアーユーイング。

歴史上、ほとんど知られることのないこの名前もそんなひとつである。

1885年の中国は上海。

ある祈祷会に出席したその英国の青年が提案した申し出に、

宣教師のハドソン・テーラーは驚きを隠せなかった。

宣教団の本部建設敷地購入に必要な経費の全額をささげたいと申し出たのである。

中国に来て、まだ8日しかたっていなかったアーチバルトが、

献金するに当たり唯一付けた注文は、決して自分の名前を出さないということだった。

 当時の40万ドルというから、今では4千万ドル、日本円にして50億円近くになるのだろうか。

とにかく、アーチバルトは英国にいる伯父から莫大な資産を相続していた。

その中から、中国奥地伝道団の本部建設資金として、

まず今の日本円で約1億円をささげるのはそんなに大変ではなかったかも知れない。

だが、この無名の青年は、その後も相続した財産を中国宣教のためにささげ続け、

結局、自分のためにはその浴びるほどの財産を何一つ使わなかった。

 敷地購入の資金提供を申し出たその翌日、

アーチバルト・オアーユーイングは、ハドソン・テーラーと共に、北部中国へ出発した。

彼は長いガウンを着て、小さな円形の黒い帽子の下から辮髪をたらし、

できるだけ中国人らしい格好をしていた。

中国宣教の開拓者ハドソン・テーラーがそうしたように、

この青年は生涯清貧に甘んじ、中国の農村に住む失われた魂つ仕え通したという。