■へ〜そうなんやO (クリスチャン新聞より転載)

チャップリンの思い出

20世紀前半、「街の灯」や「ライムライト」などの

名作を遺した英国の俳優で監督でもあったチャップリンが、

映画で追い求めたテーマは「愛」だった。

それは男女の愛というより、

チャップリンの演じる浮浪者が弱い人々に生きる勇気を与える、と言った内容のもので、

日本映画「フーテンの寅さん」の原型でもある。

そのチャップリンが自伝の中で、

母親から聖書物語を聞かせてもらった下りがある。

「夕方近く、母は窓を背にして座りながら、

読むというより演じてみせるという独特のやり方で新約聖書の物語、

とりわけ信者や子どもに対するキリストの愛について話してくれた。…

その時ほど鮮やかな、そして感動的なキリストの姿を私はまだ見たことはない」。

女手一つでチャップリンやほかの子ども達を育てていた母。

若いころ、場末の劇場で女優をしていたその演技力で、

聖書物語を演じて見せたのだった。

弱くて貧しい人々に愛情を注ぐキリストの姿に、

チャップリンも幼心に人生で一番大切なものを学んだにちがいない。

ちなみに当時、苦労のどん底にあった母親にとっての唯一の慰めは、

ロンドンの下町にあった教会で毎日曜日に聞く、F・B・マイヤー牧師の説教だったという。