■へ〜そうなんやN (クリスチャン新聞より転載)

100年売れ続けた本


19世紀最後の年に出版された『平民の福音』は、

日本においてキリスト教の本が議論されるとき、必ず話題となる本だ。

あの社会鍋でよく知られる救世軍の指導者のひとりだった山室軍平が著者である。

今でこそ「平民」という言葉は死後となったが、

明治時代には、普通の人々に伝えられる素晴らしいニュースといった語りかけは、

やはり魅力があったといわなければならない。

ちなみにその発行部数を計算してみると、

世界のベストセラーである聖書は別格として、

キリスト教関係の単行本では700版を超えるという。

途方もない販売数は、群を抜いている。

それが最近まで出ていたというのも驚きである。

ちょっと飛躍するが、

再燃のベストセラー『世界の中心で愛を叫ぶ』(片山恭一著)は300万部を超えたが、

100年後も読まれるとは到底思えない。

ところで「平民」という言葉、

今では「民衆」という言葉に置き換えられて使われている。

アメリカ映画で「普通の人々」というのがあったが、

さしずめ「平民」は「普通の人々」のことと理解していいのかも知れない。

それにしても山室軍平という厳格そうな名前、

実像は穏やかで優しい語り口の人物であったという。