■お父さん出番ですよ22 (ホザナ通信 2005年8月号より)


                                     

 海へ山へと楽しかった夏も、もう終わりに近づきました。

 ホザナ通信をお読みの皆さんのご家庭の夏は如何だったでしょうか。

  さて、7月号は勝手ながら休刊させていただきました。

 今月もより豊かな人生について共に分かち合いたいと思います。

  アンパンマンの作者やなせたかしさんの自叙伝「人生なんて夢だけど」を読みました。

 驚いたことに、彼が漫画家として成功したのは71歳の時だったのです。

 勿論「アンパンマン」で大ヒットです。

 彼はコミック雑誌にはほとんど描いていない珍しい漫画家です。

 でもアンパンマンのキャラクターが2000以上あることで分かるように、

 このアニメが如何に人気があり、長寿番組であるかが分かります。

  やなせ氏は1953年3月に漫画家としての歩みを始めます。

 しかし漫画以外の仕事(似顔絵師、シナリオライター、雑誌の編集など)が

 どんどん舞い込んで、それらの分野で成功してしまうのです。

 言わば便利屋さんとして20数年を過ごしてしまうのです。

 1973年に幼児用絵本「アンパンマン」を出版。

 これが大悪評で、出版社から

 「アンパンマンの絵本はこれ一冊でもう描かないでください」と言われる始末。

 絵本評論家からは「こんなくだらない絵本は、

 図書館に置くべきでない」と酷評。

 しかし5年後何かが動き出したのです。

 保育園や幼稚園でアンパンマンの絵本が野火のように売れ出したのです。

  1988年10月、全く期待されることなくアンパンマンのテレビ放映がスタート。

 月曜日の夕方5時という再放送しかやっていない最悪の時間帯。

 テレビ局側も半年で終わると予想していました。ところがこれが大ヒット。

 「まさかこんなことになるとは…」とテレビ局。それから一気に全国放送。

 アンパンマンブーム到来となりました。やなせ氏、71歳です。

 この本を読みながら、アンパンマンの主題歌が頭の中で流れました。


      ♪そうだ、嬉しいんだ生きる喜び

      たとえ胸のキズが痛んでも

      何のために生まれて、何をして生きるのか?

      答えられないなんて、そんなのはイヤだ

      今を生きることで、熱い心もえる

      だから君は行くんだ ほほえんで

      そうだ、嬉しいんだ生きる喜び

      たとえ胸のキズが痛んでも

      ああアンパンマン やさしい君は

      行け、みんなの夢 守るため


     ♪何が君の幸せ、何をして喜ぶ?

     分からないまま終わる そんなのはイヤだ

     忘れないで夢を こぼさないで涙

     だから君は飛ぶんだ どこまでも

     そうだ、恐れないでみんなのために

     愛と勇気だけが友達さ

     ああアンパンマン やさしい君は

     行け、みんなの夢 守るため


  幼児番組の主題歌とは思えない深い内容の歌詞です。作詞は勿論やなせ氏です。

 彼の人生と考え合わせるときに、

 この主題歌は彼自身のための応援歌でもあったことが分かります。

  自分の夢以外の多くの仕事にも一生懸命取り組む。

 でも自分の夢は忘れない。そして遂に夢が叶う。

 このような歩みをしてきたからこそ、今日の多才はやなせさんがあることを教えられます。

  やりたいことだけをやる、嫌なこと面倒なことはやらないという若者が増えています。

 しかし、それでは豊かな人生、深みのある人間性を養うことはできません。

 人生には、無駄と思えるような面倒で苦しいことが沢山あります。

 しかし、それらにしっかり取り組んでこそ内面を磨き成熟することができるんですよね。

  『君の目の前に、二つの道が用意されているとき、

 まず自分の生きたくない道を選びなさい。

 きっとその方が、後になって君のためになる。』という言葉があります。

 私達親は人生の先輩として、深みのある人生の歩き方を示していきたいものですね。