2006年12月号

☆ 神様は何に感動するのか ☆

  メリークリスマス!

 皆様、クリスマスを楽しんでおられますか?

 平和の君イエス・キリストの平安が皆様のご家庭の上にありますように。


  さて、「クリスマスの鐘」(オールデン著)という童話をご紹介しましょう。



    むかしむかし、ある町に、大きな教会がありました。
 
 教会には、天にそびえる高い塔があって、りっぱな鐘がつるされていました。

 その鐘には『クリスマスの夜にだけ鳴る』という、不思議な言い伝えがありました。

 ところが、まだ一度も、この鐘が鳴る音を聞いた人はありませんでした。


 クリスマスが近づくと、町の人たちは塔を見あげて話しあいます。

 「今年こそは、あの鐘の鳴る音が聞かれるかなあ?」

 「わしは八十年も生きているが、まだ一度も聞いたことがない。

 なんでも、わしのじいさんが子供の頃に聞いたそうだが、

 それは素晴らしい音色だったそうだ」

 「どうすれば、あの鐘は鳴るのだろう?」

 「神様に贈り物をすれば鳴る、という話だよ」


  さて、この町のはずれの小さな村に、

 ペドロという男の子と弟がいました。

 ある日、ペドロは弟にいいました。

 「クリスマスの教会って、想像もできないくらい素晴らしいんだってさ」すると、

 弟は目を輝かせてせがみました。

 「わあ、ぼく行ってみたいなあ」

 「よし、連れて行ってあげるよ」ペドロは、弟と約束しました。

                         
  そして、待ちに待ったクリスマスの日。 

 ペドロと弟は、しっかりと手をつなぐと町へ向かいました。

 夕方、町の入り口まで行った時、二人は女の人が倒れているのを見つけました。

 「どうしたのかな?この人、動かないよ。

 お兄ちゃん、どうしよう?」

 「このままほうっておいたら、こごえ死んでしまう。困ったなあ?」


  あたりには、だれもいません。

 ペドロはポケットから銀貨をとり出すと、弟にさし出しました。

 「この銀貨は神様への贈り物だよ。

 ぼくはこの人を助けるから、一人で行っておいで」

 「えっ、ぼく一人で行くの?

 お兄ちゃんだって、あんなに行きたがっていたじゃないか」

 「いいんだ。さあ、行っておいで」

 弟は仕方なく、一人で町の中へ入っていきました。


  教会の中は、沢山の人で賑わっていました。

 どの人も神様への立派な贈り物を、得意そうに持っています。

 キラキラと眩しく光る宝石、山のような金貨、立派な銀食器・・・。

 誰もが素晴らしい贈り物をして、鐘を鳴らそうと考えていました。

 けれど、鐘は鳴りません。


   「今年こそ、鐘を鳴らしてみせるぞ!」

 最後に王様も、命の次に大切にしている金の冠を捧げました。

 さすがに、これで鐘がなるだろう。と、みんなはジッと耳を傾けました。

 でも、高い塔の上は、シーンと静まり返ったままです。


  「ああ、なんと、王様の金の冠でもだめなのか」

 「きっと、あの鐘は永久に鳴らない鐘なんだ」

 「そうだ。そうにちがいない」人々が諦めて帰りかけた、その時です。
 

  突然、塔から美しい鐘の音が響いてきたではありませんか。

       ♪カローン、コラーン、カローン、コラーン・・♪


  「あっ! 鳴った、とうとう鳴った!」

 「なんて、美しい音色なんだ」

 「それにしても、鐘を鳴らす程の贈り物をしたのは、一体誰だろう?」

 王様をはじめ、人々はいっせいに振り返りました。


  そこにはペドロの弟が、恥ずかしそうに立っていました。

 「ぼく、お兄ちゃんから預かった銀貨を一枚、神様に捧げただけだよ」。



  私達はこの物語をとおして、神様が何に感動なさるのかを知ることができます。

 神様は、人目にはつかないけれども、

 心のこもった愛の行いや捧げ物を喜び、感動なさるのです。

 クリスマスのこの時期、

 心のこもった小さな愛を実践する心を取り戻したいですね。

                          教会学校教頭 新谷和茂