2006年11月号

☆アドベンド〜待つ喜び〜☆

   きれいなイルミネーションを目にする季節になりました。

 今年もクリスマスが近づいて来たんですね。 
                                      
 ところで、みなさんは世界中の教会で         

 クリスマスの前に持たれる

 大切な期間があるのをご存じですか?

 それは「アドベント」という期間です。

 クリスマス前の4週間、

 みんながクリスマス(イエス様の降誕)を待ち望む期間のことです。

 私は子どもの頃、このアドベントに疑問を持っていました。

 「どうしてイエス様のご降誕を待ち望むの?

 もうイエス様はお生まれになったのに」って。

 「なんで毎年もう一回待つところから始めるんやろう?

 いきなりクリスマスからお祝いしたらいいことなんとちがうん?」。

 けれど大きくなって、

 このアドベントの大切さを感じるようになりました。

  最近は時の流れが速くて、

 人々は「待つ」ということを

 忘れてしまっているかのように感じることがあります。

 温かいご飯が食べたいと思えば、

 レンジでチンすればすぐに食べれる

 (私が子どもの頃はお鍋に湯を入れてその中にお茶碗を置き、

 火にかけて蒸気で温めたりしていました)。

 ストーブだって最近のには「速暖」というスイッチができて、

 それを押していたらすぐに温風が出てくる仕組みになっている

 (昔の石油ストーブにマッチで火をつけても、

 暖かくなるまでに時間がかかったものです)。

 人との待ち合わせでも、

 何かあればすぐに携帯で連絡を取ることができるから、

 何も分からないままずっと待つということはなくなっています。

 手紙を送って返事を待つより、

 メールであっという間にやりとりができてしまう。

 たくさん便利になった変わりに、

 「待つ」ことをどこかに置いてきてしまったのかもしれません。

 待たなくていいことが便利だと、

 早く簡単にできることが便利だと思っていたからかも知れません。 

  でも何もかもインスタントみたいにはいきませんし、

 インスタントでは困ります。

 時間をかけなければならないこともたくさんあるのではないでしょうか。

 早く終わって欲しいと思いつつも、

 がまんして待たなければならないことも。

 私達の大切な子供達を育てることも、

 そんな「待つ」連続かもしれません。

 それは便利にしてしまってはいけないことなんではないかと思います。

 だってインスタント家族、インスタント子ども、

 インスタント愛なんて誰も欲しいと思わないでしょうから。

 「待つ」ことがあって完成する。

 忍耐することで得ることができる。

 そんなものを大切にしていきませんか?

  欧米諸国に行くと、

 クリスマスまで完成しないクリスマスの飾りがあります。

 それがアドベントカレンダーです。

 アドベントカレンダーは12月1日から25日まで、

 まい日一つづつオーナメントを飾っていくもの、

 一つずつ窓を開けていくと中からかわいい絵が出てくるもの、

 そこにチョコレートやお菓子が隠されているものなど

 たくさんの種類があります。

 でもどれも共通しているのは、一日で全部をしてしまわないことです。

 「毎日一つずつ」が大切なんです。

 クリスマスの25日が一番いいものであることは

 初めからわかっています。

 またそこで完成することもわかっています。

 そうしたら早くそれを見たいし、

 初めからきれいに整えてしまいたいと思うかもしれません。

 でも、一日一日「クリスマスを待つ」その気持ちを味わいながら、

 その日その日の出来事を感じながら、

 やがてやって来る「その日」を楽しみに待つワクワク感・期待感。

 そしてそれを味わったからこそわかるクリスマスという特別な日。
        
 このアドベントの期間を通して、

 子供達と共にゆっくり味わってみてはいかがでしょう?

 毎日少しずつ、クリスマスの聖書箇所を読んでみたり、

 マリヤさんの気持ちを考えてみたり、

 羊飼いさん達の思いを感じてみたり、

 イエス様が生まれてきて下さる喜びを共有したいと思います。

  そして、このアドベントを通して私達の心を見つめ、

 「待つ」ことのできる親として成長できるチャンスとできたらいいですね。

 子供達の成長も同じ。

 子供達の人生も同じ。

 すぐに結果が出なくても希望を持って待つことができる、

 耐えることができる、その先にある約束を見つめ続けることができる、

 これは親にとっても子供達にとっても

 かけがえのない力になっていくものです。

  ユダヤの人々がずっと待ち続けた救い主。

 求めてすぐにやって来たわけではなかったけれど、

 でも彼らは諦めず、失望せず、ずっとずっと待ち続けました。

 それがアドベントの始まりでした。

 そしてアドベントの後に必ずクリスマスがやって来ます。

 クリスマスの来ないアドベントはありません。

 私達の人生も、神さまがそのように導いていて下さいます。

 皆さんがステキなアドベントを過ごされますように。    

                   教育主事 小森仁美