2008年12月号

☆ クリスマスは新しいスタート ☆

  今年もいよいよ最後ですね。

 このホザナ通信が届く頃にはクリスマスは終わって、

 新年の準備が始まっているでしょう。

 でも教会暦では1月6日(公現日)まではクリスマスシーズンなので、

 クリスマスにちなんだお話でも許されるでしょう。

        

  
ドイツに「小さな飼い葉桶の前で」(ヴァルター・バウデート作)

 という短いクリスマス童話があります。

 ヨーロッパではクリスマスになると街角や教会には、

 クリッペと呼ばれる飼い葉桶が飾られるそうです。

 これはクリッペに眠るイエス様を囲む、

 両親のマリアやヨセフ、羊飼い達の人形です。

 日本でもカトリック教会に行けばクリッペが飾られており、

 24日の夜になって赤ん坊イエス様が飼い葉桶の中に

 飾られるという演出がなされます。

 この「小さな飼い葉桶の前で」はそのクリッペのお話しです。

 短いので全文をご紹介します。


  小さな坊やは、木彫りの上手なおじいちゃんのことが、とても自慢でした。

 なんでもない木切れから、“生きている”人形が

 だんだん出来ているのを見るのは、本当に好きです。

  おじいちゃんがクリスマスの人形を作っている間に、

 坊やは木彫り人形の世界に入り込んでしまいました。

 そして、羊飼いや学者達と一緒に動物たちのいる小屋を訪ね、

 飼い葉桶の中の赤ちゃんの前に立ちました。

  そこで坊やは気付いたのです。

  「赤ちゃんの手は空っぽだ!

 みんな何か持っているのに、赤ちゃんだけは何も持っていない。」

  びっくりして坊やは言いました。

  「ぼく、君に一番いいものをあげるよ。

 新しい自転車にしようか。…そうだ、電気で動く鉄道セットにしよう。」

  その赤ちゃんは、にっこり笑って言いました。

  「ぼく、鉄道セットはいらないよ。それより、君のこのあいだのテストをちょうだい。」

  坊やはおどろきました。

  「だって、あんなの…“やりなおし”って書いてあるんだよ。」

  「だから、ほしいんだよ。」と飼い葉桶に寝ている赤ちゃんイエス様は言いました。

 「ぼく、君の“やりなおし”が全部ほしいんだ。

 そのために生まれてきたんだから。」

  「それから、もっとほしいものがあるんだけどなぁ」と、

 赤ちゃんは言いました。「君のミルクコップなんだ。」

  坊やは悲しくなりました。

  「ぼくのミルクコップ?…だって、あれ、こわれちゃったよ。」

  「だからほいしんだよ。」ちっちゃなイエス様は言いました。

  「こわれたものは、何でも持っておいで。ぼくがなおしてあげる。」

           

 
 「もうひとつ、ほしいものがあるんだけど。」

  赤ちゃんは、また坊やに言いました。

  「あのコップが割れたとき、君がお母さんにいった言葉がほしいんだよ。」

  坊やは泣き出して、しゃくり上げながら言いました。

  「あのとき、ぼく、うそついちゃった。

 ぼく、お母さんにわざとやったんじゃないって言ったけど、

 ほんとうは怒ってコップを投げたら、割れちゃったんだ。」

  「その言葉がほしかったんだよ。」と赤ちゃんのイエス様は言いました。

  「君が怒ったり、うそをついたり、いばったり、こそこそしたりしたときには、

 ぼくのところにおいで。君をゆるして、そうじゃないようにしてあげるから。

 そのために、ぼくは生まれたんだよ。」

  そして、赤ちゃんは坊やに、にっこり笑いかけました。

  坊やはじっと見つめ、じっと耳をかたむけ、びっくりしていました。


  どうです、なかなかの内容でしょう!

 クリスマスの意味が見事に描かれています。

 イエス・キリストは、私たちの人生途上における失敗や罪責感、

 汚れをすべてゆるし、

 新しい人生へと造り直すためにこの世に来られたのです。

 私達がイエスを救い主として心に迎え入れるならば、

 その新しい創造が起こります。

  教会暦はクリスマスから一年が始まります。

 キリストによって、全てが赦され、新しい命が与えられて、

 文字通り新しい一年が始まるのです。

 皆様の新年の歩みが祝福されますように。

                          教会学校教頭 新谷和茂