2008年6月号

☆ ターニングポイントの乗り越え方 ☆

   日を追うごとに暑気もつのり、じっとりと汗ばむ季節となりました。
 
 皆さん、いかがお過ごしですか。

  さて、弱い日本ハムファイターズを2006年はリーグ優勝と日本シリーズ優勝、

 2007年はリーグ優勝へと導いたトレイ・ヒルマン元監督の半生を綴る

 「ターニングポイント」という書物が出版されました。

  この本には、タイトル通り、ヒルマン氏が「人生のターニングポイント(転換期)」にどのように直面し、

 新たなる選択をし、今日の人生を築いてきたかが記されています。 

 以下、彼自身の文章を引用します。

                 
   …高校生活を終えた私は、スポーツ特待生としてテキサス大学に入学し、

 卒業後、クリーブランド・インディアンズのマイナーチーム選手としてプロ入りした。

 そこで3年頑張ったが、期待していたメジャー昇格は実現しなかった。

 フリーエージェントと契約したが、どのチームからも声がかからなかったのだ。

  正直言って、これはかなりこたえる経験だった。

 自分がいたいと願う場所に居場所が与えられないと、

 自分自身の存在価値まで拒否されているような気持ちになってしまう。

 幼いことから何事につけ、割と順調に過ごしてきた私にとって、

 これが初めての挫折といえるかも知れない。

 それも、これからの人生を大きく左右する挫折だ。私は野球を愛していたし、天職だと思っていた。

 しかし、この野球界で必要とされないのなら、それは私の一方的な願いで終わってしまう。

  その頃の現実を考えると、厳しい要素はいろいろあった。

 かかとに大きなけがをしていたし、膝にも150キロのボールを受けたところだった。

 また、右打者にとって重要な左目の視力が落ち始めていた。

 それでも私は、野球を離れて生きていくということが想像できなかったのだ。

  そこで、崖っぷちまできた25歳の時、心の中にあることをそのまま神に訴える祈りをした。

 「神様、どのチームからも声はかかりません。肉体的にも満身創痍です。

 しかし私は、野球を通してあなたに仕えたいのです。

 あなたの忠実な兵士になります。決してあなたを裏切りません。」

  クリーブランド・インディアンズから、スカウトマンにならないかとの声をかけられたのは、

 その2、3日後だった。私はそれを、神様からの答えだと確信した。

  祈ったとき、私は野球選手として生き残りたいと願って祈ったのだった。

 スカウトマンになることは、考えもしなかった。しかし、神様は私以上に私のことを知っている。

 そして、「野球選手にしてやることまではできないが、スカウトマンくらいにならしてやってもいい」

 というような、けちで意地悪な方ではない。

  神様が私に下さろうとするものは、いつでも私にとって最善のものだ。

 いつだって神様は、私を祝福したくてたまらない方なのだ。

 それまでの経験から、私はそう信じることが出来た。

  人生が思い通りに進まないとき、この約束を信じて握りしめることが出来たら、

 それはあなたにとって本当に大きな力となる。

 このときの体験から私は自信を持って、そうお勧めすることが出来る。神様はあなたを裏切らない。

  こうして私は、本意ではなかったけれども、信仰によって前向きな気持ちで現役を引退し、

 アメリカのプロ野球史上一番若い、25歳のスカウトマンになった。なってみてはじめて、

 私は人にアドバイスをすることが得意だということに気がついた。

 自分で思った以上に、その仕事を楽しむことが出来た。

 そして2年後には、ニューヨーク・ヤンキースのマイナーリーグの監督になったのだ。…

                  
  このヒルマン氏の体験談のポイントを挙げるとすれば以下のようになるでしょう。

    @人生の転換期から逃げないで直面した。

    A転換期に神様に熱心に祈った。

    B神様からの答えは、彼の願い通りでなかったが、彼はそれを前向きに受けとめ決断した。

    C結果、第2の職業は、意外にも彼の長所や性格にぴったり合ったものだった。

  神様はヒルマン氏以上にヒルマン氏のことをよくご存じで、彼を最善の道へと誘っておられたのです。

 ヒルマン氏に限らず、誰にでも人生のターニングポイントが訪れます。

 その時あなたはどうしますか?ヒルマン氏の体験は、その時の良きモデルです。

  ヒルマン氏は11年間ニューヨーク・ヤンキースのマイナーリーグの監督を務め、

 その実績が日本ハムファイターズに認められ、2003年に監督として来日しました。

 そしてあの時祈った答えが、日本の地で大輪の花として咲いたのです。

 今彼はメジャーリーグ、カンザスシティ・ロイヤルズの監督を務めています。

  ヒルマン氏ははっきりと言います。「神は夢より素晴らしい現実を知っておられる方だ」と。


                                教会学校教頭 新谷和茂