2007年11月号

☆ 紅粉船長をささえたもの ☆

  冬支度がままならぬ間に、

 寒さが身に沁みる季節となりました。

 ホザナ通信をお読み下さっています皆様、健康にお気をつけ下さり、

 今年最後の12月をお過ごし下さい。

  私は、北朝鮮抑留を体験された紅粉勇(べにこいさむ)さんの手記

 「人生の嵐を超えて―北朝鮮抑留7年間の真実」を読みました。

   1983年、北朝鮮に拿捕された日本の冷凍運搬船第19富士山丸。

 船長だった紅粉さんと栗浦良雄機関長の二人はスパイ容疑で不当逮捕され、

 約7年にわたって抑留されました。

 この紅粉さんは、神戸にある教会に通うクリスチャンです。

  事件の切っ掛けは、

 北朝鮮からハマグリを積んで帰国の途についた第19富士山丸に

 北朝鮮軍人が密航者として潜入していたことに端を発します。

 商船会社と紅粉さんは

 密航者の身柄を北朝鮮に帰すように日本政府に命じられました。

 ところが日本政府の致命的な連絡不行き届きによって、

 紅粉船長は密航者を乗船できないまま北朝鮮に向かわざるを得なくなりました。

 北朝鮮に到着した紅粉さん達は不当逮捕されます。

 北朝鮮の地で役人によって、これを書いたら

 「日本に帰してやる」と言われ何10回となく陳述書を書かされ、

 役人主導で出来上がった陳述書は、事実無根そのもので、

 紅粉さん達はスパイ活動を行っていたというものになってしまったのです。

 当然「日本に帰してやる」というのはウソでした。

 北朝鮮では紅粉さんがいくら本当のことを言っても聞き入れられず、

 全て北朝鮮側が作ったウソ偽りの内容にすり替えられていきました。

 そして遂に15年の労働教化刑が宣告されました。

                

  そんな厳しい状況で、紅粉さんを支えたものは何だったのでしょうか?

 それは聖書の言葉と信仰でした。こんなエピソードが記されています。

 何一つ真実が通らない状況で、彼は2つの聖書の言葉を思い出しました。

 「見よ、私は世の終わりまでいつもあなたがたと共にいる(マタイ28章20節)」

 「あなたがたは心を騒がせないがよい。

 神を信じ、またわたしを信じなさい(ヨハネ14章1節)」です。

 誰ひとりとして自分の真実の声を聞き入れてはくれないが、

 神様だけが知っていて下さると思うと嬉しくて、

 彼は部屋の中をはね回ったというのです。

 日本にいる時は名ばかりのクリスチャンであった彼も、この時ばかりは、

 涙を流して初めて神様に感謝の祈りを捧げたのです。

 目には見えなくても、神様は確かにおられるだけでなく、

 この私と共にいて下さると確信できた瞬間だったのです。

 このことを境に彼は持っていた新約聖書をむさぼるように読み、

 暗記し、そして神様に祈りを捧げる日々をおくりました。

  日本では教会が中心となって「紅粉夫人を支える会」が発足。

 必死の努力の結果、国会議員を動かし、

 1990年10月、紅粉船長は栗浦機関長とともに帰国を果たしたのです。

              

   「あとがき」のなかで紅粉さんはこう言っています。

 『私は、北朝鮮に抑留されて初めて、

 生ける真の神様に出合うことができたと確信しています。

 それ程までに自我の強いものでした。

 人生の中で起こる数々の試練を、

 不幸として嘆き悲しみあきらめで終わるか、

 試練の中でも喜びと感謝と希望を持って生きるかは、

 自分の力だけではなるものではありません。

 神様を信じるか信じないかで決まります。』

  人生には様々な試練があります。

 その時本当に頼りになるのは人ではありません。

 人には自分の命や生活を守るという限界があるからです。

 本当に頼りになるのは、

 目には見えませんが確実におられる神様です。

 この神様はあなたを愛しておられ、

 聖書の言葉を通してあなたに希望と生き抜く力を与えて下さるのです。

 紅粉さんを支えた神様は、あなたも支えて下さいます。

                教会学校教頭 新谷和茂