ギフチョウは「春の女神」とも呼ばれる美しいチョウです。よく見かけるアゲハチョウと同じ仲間ですが、アゲハチョウよりもふたまわりほど小さく、飛び方も緩やかです。
 ギフチョウは世界でも日本の本州だけにしか棲んでいません。北は秋田県から南は山口県までの範囲で、しかも所々しか見つかっていない、古い時代の名残をとどめた珍しいチョウです。
 かっては、比較的普通に見られたチョウだったのですが、近年、開発や乱獲によって、各地で数が減ってきており、緊急に保護されなければならない生物として、国や県から指定されています。
 加古川市でもギフチョウを守る取り組みを行っています。その中で見かけたエピソードをまとめて見ました。

1.田畑の畦の笹の葉上で交尾

 平成10年生息地の成虫観察会で、羽化したばかりの成虫を見つけた。
 回りに2頭の成虫が飛び回っているのを同時に確認出来た。
 羽化した成虫が初めて飛び立ち、見失い、あたりを探していると1頭がいつのまにか2頭になって草むらに隠れるように、止まっているのを見つけた。
 上空を飛び回っていたうちの1頭とおもわれるが、よく見ると、交尾をしており、それから40〜50分同じ場所で交尾の様子を観察できた。
 終盤にお尻をふって交尾盤を♀に付ける様子など大変感動した。ビデオにも収録出来た。








2.足を小刻みに震わせて16個の産卵

 成虫観察会にて生息地でいきなり目の前で、ギフチョウが産卵を始めました。
あわててビデオを回しながら地面に這いつくばって、産卵の様子を夢中で記録しました。
あとで様子を見ると、卵を産む直前に足を小刻みに震わせて、産むタイミングを取っているように見えました。大変神秘的で印象に残りました。














3.21個の卵の抜け殻と13匹の幼虫

 私たちの今までの観察では、卵は5個〜12個ぐらいが一番多かったが、写真のケースは、観察した中で一番多い産卵のケースであった。
 2回にわけて産卵したか、または、2頭の違う個体が産卵したのかもしれない。
 1齢幼虫と思われるが、すでに8匹は、不明で、外敵に食べられたか、見当たらなかった。卵から生まれて翌春成虫に成れるのは、わずか3〜7%と言われるのが、分かるような気がする。

  

4.蛹の発見4例

 自然状態で、4例の蛹を発見することが出来た。
石の下2例、土の中のくぼ地、朽木の皮の中
そのうち2例は蛹に穴を開けられており死んでいた。蛹の中にダンゴ虫のような小さな虫が蛹の中から這い出してきた。

5.リンゴの花で吸蜜

 ギフチョウが花におとずれる様子を観察した情報をまとめてみると、私たちの所では、コバノミツバツヅジ、ヤマザクラ、ショウジョウバカマ、タチツボスミレ、イカリソウ、シバザクラ(民家の庭で)、リンゴであった。そのうちリンゴの花に訪れたケースは、きわめてめずらしのでは、と思われる。
 その日は朝からギフチョウが舞うには条件のよい日和で、風も弱く、あたたかな日でした。私は、家の田の草刈りをしていました。生息地に近いメンバーの方から「ギフチョウが庭のシバザクラに飛んできている」と電話連絡がはいり、さっそく車を走らせ心躍らせながら、訪問しました。
 ビデオ片手にさがしまわっていると、視線にいきなりギフチョウがはいり、あわててビデオカメラを向けました、リンゴの花に止まっている時間は、ほんの2〜3秒で、花から花へと、忙しそうに飛び回っていました。
 ビデオ映像よりキャプチャーしましたのであまりきれいではありません。

6.33年前と同じ場所で成虫観察

 成虫は風の強い日は活動しないのが普通であると言われているが、その日は、午後2時頃で、風が強く、アゲハが、なんとか飛べるような状態であったが、広場で木に囲まれて風の当たらない、日差しのさし込む場所で、日光浴をしていると思われる羽の痛んでいないきれいなギフチョウに会えました。
 少し飛んでは止まり、を繰り返して同じ場所を離れませんでした。
 33年前、同じところでサクラの花に飛んできているギフチョウを確認しており、若きその日のことが、ふと思い出し、大変感動しました。この場所は、ギフチョウにとっても、特別な居心地の良い場所では?。