硫黄 S8 sulfur d=2.07g\cm3 mp=112.8ºC bp=444.674ºC
岩石中には硫化物、単体、硫酸塩などとして存在する。火山ガス中には硫化水素、二酸化硫黄として含まれるので。火山地帯では、自然硫黄が産出する。現在では、石油精製工程で生じる回収硫黄などから生産されている。
常温では、斜方晶系硫黄(rhombic sulfur、α硫黄ともいう)が最も安定で、王冠形S8分子からなる。水に不溶だが、二硫化炭素へはよく溶ける。金、白金族元素以外の単体金属と加熱すると硫化物が生じる。マッチ,火薬,医薬品の製造に用いる。
チオ硫酸ナトリウム sodium thiosulfate Na2S2O3 d=1.69g/cm3 mp=48ºC
ふつうは五水和物で俗にハイポ(hypo)ともいう。無色の単斜晶系柱状結晶で水に易溶である。ハロゲン化銀を溶かすので写真の定着に用いられたり、ヨウ素とは定量的に反応するのでヨウ素滴定に用いられたりする。また、還元剤として水道水に含まれる塩素分を除くのにも使われる。
硫化水素 hydrogen sulfide H2S d= g/cm3 mp=-85.5ºC bp=-60.7ºC
火山ガスや鉱泉水に含まれ、また硫黄を含むタンパク質の腐敗によっても生じる。
無色、腐卵臭のある有毒気体。
分子は折れ線形で、空気中で燃えると二酸化硫黄になる。
還元性があり、空気中の酸素によっても徐々に酸化され硫黄を遊離する。
弱い2価の酸で、pK1=7.02,pK2=13.9。
適当なpHで金属塩の水溶液に通じると各金属元素に特有な色をもつ硫化物の沈殿を与えるので重要な分析試薬となる。硫化水素の検出には、酢酸鉛で湿した紙を黒変させることを利用する。実験室では、固体硫化水素を加熱して利用している。
亜硫酸水素ナトリウム sodium hydrogen sulfite NaHSO3 d= g/cm3 mp= ºC bp= ºC
時計反応で利用する。
亜硫酸水素ナトリウムは水溶液中でだけ存在し、炭酸ナトリウムの冷飽和溶液に二酸化硫黄を通じて水溶液を得る。溶液から単離できるものは二亜硫酸塩Na2S2O5であってNaHSO3ではない。この二亜硫酸塩は、商習慣上、亜硫酸水素ナトリウム無水塩として市販されている。水溶液は強い還元性を示し、酸で分解されて二酸化硫黄を発生する。写真用現像定着助剤をはじめとして
亜硫酸ナトリウムと同様に、広い用途をもつ。
チオシアン酸カリウム potassium thiocyanate KSCN d= g/cm3 mp=173ºC
ロダンカリともいう。
潮解性の無色斜方晶系の結晶で、SCN-イオンは直線状。
Fe3+の溶液と赤色を呈する反応はきわめて鋭敏で,Fe3+の検出、定量に用いられる。
亜二チオン酸ナトリウム sodium dithionite Na2S2O4 d= g/cm3 mp= ºC bp= ºC
ヒドロ亜硫酸ナトリウムで、ハイドロサルファイト(hydrosulfite)は誤称である。
無水塩は無色の単斜晶系結晶で乾燥状態ではかなり安定だが、湿った状態では不安定である。
水溶液は、酸性にするとすみやかに分解して硫黄を遊離する。アルカリ性では強力な還元剤で、藍染めでインジゴを還元するのに使う。