硫黄 16S=32.07

S 硫黄 S8 sulfur d=2.07g\cm3 mp=112.8ºC bp=444.674ºC
岩石中には硫化物、単体、硫酸塩などとして存在する。火山ガス中には硫化水素、二酸化硫黄として含まれるので。火山地帯では、自然硫黄が産出する。現在では、石油精製工程で生じる回収硫黄などから生産されている。 常温では、斜方晶系硫黄(rhombic sulfur、α硫黄ともいう)が最も安定で、王冠形S8分子からなる。水に不溶だが、二硫化炭素へはよく溶ける。金、白金族元素以外の単体金属と加熱すると硫化物が生じる。マッチ,火薬,医薬品の製造に用いる。


Na2S2O3 チオ硫酸ナトリウム sodium thiosulfate Na2S2O3 d=1.69g/cm3 mp=48ºC
ふつうは五水和物で俗にハイポ(hypo)ともいう。無色の単斜晶系柱状結晶で水に易溶である。ハロゲン化銀を溶かすので写真の定着に用いられたり、ヨウ素とは定量的に反応するのでヨウ素滴定に用いられたりする。また、還元剤として水道水に含まれる塩素分を除くのにも使われる。


硫酸 sulfuric acid H2SO4
普通は濃度96%であり、密度1.84g/cm3(15℃),18mol/dm3である。水とは自由に混合するが、多量の熱を発生するので注意を要する。強い脱水作用があり、とくに有機化合物から水素と酸素とを2:1の割合で奪う。2価の強酸であり、100%硫酸よりさらに強い酸は超酸という。希硫酸は亜鉛,鉄,マグネシウム,アルミニウムなどと作用して水素を発生するが、冷濃硫酸は作用しないので注意。加熱すると強い酸化作用を示す。硫酸は工業上の用途が広く,化学工業および金属,食品などのあらゆる分野にわたって用いられるので化学工業の指標となる。


硫化水素 hydrogen sulfide H2S d= g/cm3 mp=-85.5ºC bp=-60.7ºC
火山ガスや鉱泉水に含まれ、また硫黄を含むタンパク質の腐敗によっても生じる。 無色、腐卵臭のある有毒気体。 分子は折れ線形で、空気中で燃えると二酸化硫黄になる。 還元性があり、空気中の酸素によっても徐々に酸化され硫黄を遊離する。 弱い2価の酸で、pK1=7.02,pK2=13.9。 適当なpHで金属塩の水溶液に通じると各金属元素に特有な色をもつ硫化物の沈殿を与えるので重要な分析試薬となる。硫化水素の検出には、酢酸鉛で湿した紙を黒変させることを利用する。実験室では、
固体硫化水素を加熱して利用している。


S8 亜硫酸水素ナトリウム sodium hydrogen sulfite NaHSO3 d= g/cm3 mp= ºC bp= ºC
時計反応で利用する。 亜硫酸水素ナトリウムは水溶液中でだけ存在し、炭酸ナトリウムの冷飽和溶液に二酸化硫黄を通じて水溶液を得る。溶液から単離できるものは二亜硫酸塩Na2S2O5であってNaHSO3ではない。この二亜硫酸塩は、商習慣上、亜硫酸水素ナトリウム無水塩として市販されている。水溶液は強い還元性を示し、酸で分解されて二酸化硫黄を発生する。写真用現像定着助剤をはじめとして 亜硫酸ナトリウムと同様に、広い用途をもつ。


KSCN チオシアン酸カリウム potassium thiocyanate KSCN d= g/cm3 mp=173ºC
ロダンカリともいう。 潮解性の無色斜方晶系の結晶で、SCN-イオンは直線状。 Fe3+の溶液と赤色を呈する反応はきわめて鋭敏で,Fe3+の検出、定量に用いられる。


Na2S2O4 亜二チオン酸ナトリウム sodium dithionite Na2S2O4 d= g/cm3 mp= ºC bp= ºC
ヒドロ亜硫酸ナトリウムで、ハイドロサルファイト(hydrosulfite)は誤称である。 無水塩は無色の単斜晶系結晶で乾燥状態ではかなり安定だが、湿った状態では不安定である。 水溶液は、酸性にするとすみやかに分解して硫黄を遊離する。アルカリ性では強力な還元剤で、藍染めでインジゴを還元するのに使う。


二塩化二硫黄 disulfur dichloride S2O2 d=1.69g/cm3 mp=-80ºC bp=138ºC
硫黄を融解して塩素を通すと生じる橙色で油状の液体。分子は過酸化水素分子に似たCl-S-S-Clの構造をもち、∠ClSSは107ºで,2つのS-Cl結合はS-S軸に対し約83ºねじれている。水分があると発煙して、硫黄、二酸化硫黄および塩化水素に分解するので大変臭い刺激臭がある。ゴムの冷加硫剤としては重宝する。


二硫化炭素 carbon disulfide CS2 d=1.26g/cm3 mp=-111.6ºC bp=46.3ºC
不快な臭いを持つ無色の液体。固体は正方晶系結晶。気体分子は直線形である。 きわめて引火性が強く有毒である。炭素原子は求核攻撃を受けやすく、たとえば、
CS2+C2H5OK→C2H5OCS2K のように水酸化アルカリのエタノール溶液と反応してキサントゲン酸塩を生じる反応は、ビスコースレーヨンなどの製造に使われる。遷移金属原子への配位結合がC=Sに直角に配位したサイドオン型の構造をとったり,金属‐水素結合や金属‐炭素結合間に挿入される例もみられる.ゴム,硫黄,ろうなどをよく溶かすので溶剤として使われ、また四塩化炭素,人絹,スフ,セロハンなどの合成に用いられる。

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