十一番目の志士
これは痛快。
最後の最後のあとがきをよんだ後も、この物語の主人公は
実在の人物だと思いこまされた。
奈良本辰也さんの解説をよんで始めてそれが架空の人物だと気付かされた。
それくらい、うまくできている。
さすが司馬さん。
長州の下層の出の天堂晋助を、高杉晋作が見初めて
剣客として世に送りだし、京、大坂、江戸、長州で活躍(?)するストーリー。
ここで私はいかにこの作品がおもしろいかという事を語るつもりではない。
司馬さんの作品がおもしろいこと、
『十一番目の志士』がこの上なく痛快なことは読んだ人なら誰でも知っているからだ。
私が一番おもしろいと感じた一幕がある。
“おのう”という女が登場する場面である。
晋助の周りの女は必ず災難にあうのだが、この“おうの”自ら死にたいというのだ。
あなたのために、おくにのために死にたい、
のだそうだ。
ここで晋助は(女とはわからん)と思うのだが、
このキチガイじみた女の気持ちがよくよくわかる気がした。
もし、私が晋助に幕末の出会ったならば本気で惚れると思うし、
この男の為に死んでもいいと思っただろう。
まぁ、それが晋助にしてみたら大迷惑なのだろうが。
実在の人物の中で動きまわる架空の人物、天堂晋助。
惚れた。
司馬さんもきっとこんな奴がいたらおもしろいだろう、と考え書いたに違いない。