Trick or treat
「とりっくおあとりーと!」
黒いローブに黒い三角帽子を被ったキラがいきなり食堂に飛び込んできた。
「…なに?」
「だから、とりっくおあとりーと!」
笑顔で両手を差し出す。隣や前に座った同僚を見渡せばお互い顔を見合わせている。
…というか、俺にキラのこの行動を説明しろと言いたげだ。
そう目で訴えられたところでわかるわけがない。いくらある程度、思考は読めると言っても。
「…キラ?それはなんの仮装なの?」
「え?知らない?魔法使い」
「それで三角帽子なわけかぁ」
「いや、ディアッカ…そういう問題じゃ…」
ディアッカのどこか的外れな感想に俺はため息をつく。
「何かのイベントなんですか?」
ナイスだ!ニコル!!
内心ガッツポーズを取りつつキラの答えを待つ。
「えっとね、『はろうぃん』なんだって。今日」
「『はろうぃん』?」
俺はふと記憶に引っかかりを覚えた。
…似たようなやり取りを幼年学校時代にやったような…
あの時は『はろうぃん』とか言うのじゃなくて…
なんだったっけ…図書館で本を読んだからとか言って、何処からか笹を持ってきて…
そうだ、『七夕』!
…そうだ、あの時と似ているんだ…
「なんなんだ?その『はろうぃん』っていうのは」
「あのね、イザークから借りた本に載ってたんだけど、10月31日にお化けの格好して
とりっくおあとりーとって言うとお菓子が貰えるんだって」
「お菓子、欲しいの?お姫さんは」
「僕は姫じゃないってば。くれるの?」
「ここにはないけど、部屋になら」
「行く!」
「キラさん、ディアッカの後でいいですから僕のところにも来て下さいね?」
「行く行く!!」
「……キラ?」
「あ、イザークのとこにも行かなくちゃ」
「…………キラ」
シカト…?
キラが俺をシカト!?
………お・し・お・き決定★
「…キラ」
「イザーク」
「間違いを訂正しておく。Trick or treatっていうのは脅し文句だぞ?」
「脅してないよ?僕」
「Trick or treatの意味は“お菓子をくれなきゃいたずらするぞ”だ」
…いたずら…ねぇ…ふぅん…
良いこと思いついたかも
「え〜、じゃあ、とりっくおあとりーとっ」
にこにこと笑顔でイザークに向かって両手を差し出すキラ。
イザークも満更ではない様子で…っていうか、あの勝ち誇ったような顔はなんだ!?
「…キラのしてくれるいたずらにも興味はあるが、ほら」
「わぁ〜いvv」
キラの手のひらに落とされるのは色とりどりのキャンディ。
…こういう可愛いもの好きなんだよな、キラは…
「かわい〜…」
「気に入ったか?」
「うん、食べちゃうのもったいない」
「溶ける前に食えよ?」
…な…っな、な、な…
「い、イザークっ!?」
「本の貸し出し賃だ」
がたがたっと音をたてて立ち上がり、キスをされた頬を押さえるキラとは対照的に、
慌てもせず、俺を睨んでいるイザーク。
…間違いなく宣戦布告、なんだろうな…
…いい度胸してるよね…俺からキラを奪おうだなんて…
「キラ、おいで?」
「アスランもなにかくれるの?」
「そうだね、部屋に帰ってから…ね」
「うん、わかった。ディアッカ、ニコル後でちゃんと貰いに行くからね?」
「は、はは…頑張れよ…姫…」
「手加減してあげてくださいね…」
「今のうちに楽しんでおくんだな」
3人の言葉の意味を掴みかねているキラの手を引いて俺は食堂を後にした。
「アスラン、とりっくおあとりーと!!」
無邪気に手を差し出してくるキラに口付けながら、ベッドに押し倒す。
「あ、アスラン?」
「お菓子をあげなかったら悪戯してくれるんでしょ?どんなことをしてもらおうかな?」
「え……?」
「今日は、泣いても許してあげないよ?」
可愛い可愛い俺のキラ。イザークになんか渡すものか。
魔法の箒で、飛んでいかないようにいっそのこと閉じ込めてしまおうか…
End or…?
ハロウィンネタ
ザラ様微妙に勝利。
もう、真っ黒です。
ザラ様。
この行事シリーズ…ザラVS王子になるかも…
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