花に負けない笑顔で笑って
この言葉は君のために…
キラとの婚約が決まった。
もし反対されても(特に某幼馴染)キラを攫うつもりだったけれど。
もちろん攫う云々はキラにはまだ内緒だ。
婚約して初めて、キラの部屋にいく。
…なんか緊張…
婚約指輪は急だったので間に合わず
(間に合わないとわかった時点でオーダーメイドにした。世界に一組しかない)、
キラにぴったりだと思って買った鉢植えだけ。
…格好がつかねぇ…
ピンク色の小さな花からはふわふわといい匂いがする。
「ミゲル〜、いつまでそんなところで突っ立てるの〜?」
「き、きら…」
いきなり玄関が開いてキラが顔を出す。
俺は慌てて花を後ろに隠した。
「何?何?何を隠したの?」
目ざとく、俺に迫ってくる。
いつもは超が付くほど鈍感なのにこーゆーときだけ…っ
そういう雰囲気も読めないくせに……
「…わかった。わかりました…ハクジョウシマス…」
「最初から素直になればいいのに…。で、何を隠してるの?」
キラにおされて、俺は結局、後ろに隠していたものを出してしまう。
鉢植えにされた花を見て、キラの目が輝いた気がする…
「わぁ…かわぃ…」
「…俺の婚約者さんにプレゼント…」
「ありがと。…なんか言いたそうだね?」
「……指輪も間に合わなかったし、俺的にはもっとかっこよく渡したかったんだよ」
「…僕にはこれだけでいいよ。この花、桃でしょう?」
「ああ。可愛いからキラに似合うと思って…」
「桃の花言葉って知ってる?」
「花言葉?」
「知らない?」
…知ってるわけないっての。
キラにぴったりだと思ったから買っただけで、花言葉まで気にしちゃいなかった。
「桃の花言葉はね、“私はあなたの虜”っていうんだよ。ミゲルは僕の虜でしょう?」
「…っ」
うぬぼれんなよ。
と気軽に言えたらどんなにいいか…
実際、キラが居れば何もいらないくらいに俺はキラに侵食されていて。
ああもう…ベタ惚れだよなぁ…
「違うの?」
こくりと首を傾げる。
そんな仕種もとてつもなく可愛くて。
「ち、ちがうくないぞ…っ!!」
俺は力いっぱい否定する。
惚れたら負け。
なんて俺のためにある言葉だよなあ…
「…僕からもミゲルにプレゼント」
「俺に?」
俺に渡されたのは、カントリー風の箱に入ったもの。
「僕も植物なんだけど…」
「なんの?」
「四葉のクローバー。幸運のね」
「…ちなみに花言葉は?」
「知りたい?」
「…まぁ、それなりに…」
「ちゃんと育ててくれるのなら教えてあげるよ?」
「育てます」
「よし。花言葉はねぇ…」
俺の耳に吹き込まれた言葉に少し目を見張る。
本当にこいつはなんて可愛いんだろう…
緩んだ頬を隠せず、キラを抱きしめた。
こんな束縛なら、喜んで縛られよう…