Village Green Preservation Sociey (1968)

Special Deluxe Edition (2004)

数あるキンクスのアルバムの中でも、ひときわキンクスらしいアルバムはこれだと思います。
初めて聴いたときは、わたしの好む世界がアルバム一枚まるまるに繰り広げられてることに驚きました(笑)
このアルバムを聴いてて、わたしの目の前に広がるのは美しく穏やかな英国のカントリーサイド。鮮やかな緑の丘。冷たい水をたたえた小川。花に囲まれた小さな愛らしい家々。「これだわわたしの求めてた世界は・・・」一世一代の出会いでした(笑)

その後元々このアルバムは2枚組みでリリースされるはずだったということを知ります。未収録の曲は「Great Lost Kinks Album」という不正規盤に入ってるらしい、ということも知り、いろいろ探したが見つからず。キンクスファンの某レコード店店主さまにカセットテープをもらった時はほんとに嬉しかったです。そして聴いてまたビックリ☆「もったいない!」なんちゅう素晴らしい曲ばかりなのだ!これが正規盤としてはリリースされてないとは?!それって罪やでレイ・・・

しかし2004年、ついにその一部の曲と未発表曲が「VGPS」に帰ってまいりました。
軽やかな「Mr.Songbird」「Misty Water」あまりに儚くロマンチックな「Lavender Hill」(アタシの魂の住所はここだ!)。こんなのレイにしか書けない小さな名曲「Rosemary Rose」。もう胸がきゅーん!!!と息苦しくなるほど切ない「Where Did My Spring Go」。どういうシチュエーションで生まれたのかが知りたい(笑)「ミックのぱんつ」などというインスト曲もアリ!まあ聴いてみてくださいよ奥さん。わたしは改めて今回このアルバムを聴いて、「テープに入れてキンクスを知らない人に聞いて欲しい!」と、若い頃にやってた衝動に駆られました!いやもうわたしが大金持ちならアルバム買い占めて各家庭に配りたい気持ちです(レイはそんなことせんでいいと言うでしょうが)。

「VGPS」リリース当時は全く売れなかったというアルバムです。もちろん売れるに越したことはないし、ヒット曲が出るということはファンを増やすということですから、とても大事なことだと思います。
しかしこのアルバムは売れなくって正解だったのではないでしょうか(当時は大変だったでしょうが)。天使のような美しさを持った女性がいたら、なかなか気軽に口説けないと思うのですが、そういう不可侵の魅力を持ったアルバムがこれです。宝箱にしまっておきたいような、大切な大切な。
「VGPS」はとても馴染みやすい、ラヴリーなアルバムですが、同時に「けして汚してはならない」ある意味神秘的な魅力を持っています。

村歌といえるのどかでキャッチーなタイトル曲、ウォルターのことを憶えてる?、写真アルバム、ジョニーサンダー、最後の機関車、大空(なんとなく不安なカンジが出てるのがヨイ)、川岸に座って(のどかで幸せ)、農場、ヴィレッジグリーン(泣ける。超名曲)、スターに夢中(無邪気でシングルっぽい曲)、スゴイネコ(チェシャキャット?)、友達はみなそこにいる、いたずらなアナベラ、モニカ、みんなで撮りあった写真。と、直訳タイトルだけでもおよそロックアルバムのイメージからは程遠いです。確かに刺激はないかもしれません。
でも誰もが経験したことのある生活。忘れてしまいがちだけど、とても穏やかで幸せな喜びがある世界。レイ・デイヴィスが描いた「Village Green」という世界は、キンクスファンの心はもちろん、キンクスを知らない人の心にも、みなの心の奥底に必ず存在する村なのです。
リリース当時はあまりに近すぎて、その大切さに気づく人が少なかったのかもしれません。でも最近このアルバムが重要視されてきた、というのはただ単なる理想や懐古趣味ではなく、やっと世間がそういうことに気づき始めたからではないのでしょうか(だといいなと思ってます)。

今回ボートラとして入ってる「Polly」という曲は、都会に憧れて家出した少女が、家庭の大事さに気づいて親元に戻る。母親も彼女を許し、喜びを持って迎える、という内容なのですがまさにこの愛情深い母がいるポリーの家は、Villege Greenという村の性格と一緒だと思います。変わらぬ愛情でいつでも自分を受け入れてくれる永遠の故郷。いつでも自分の居場所があるところ。。

だからキンクスファンはVillage Greenを愛するのではないでしょうか。
「わかる人にはわかる」「知るひとぞ知る」的なマニアックな異世界ではなく、「誰もが持ってるがゆえに、気づくのに時間がかかる」変わらぬ場所、Village Green。
未聴の方はぜひ聴いてみてください。きっとこの村で、穏やかで暖かな時間を過ごせることと思います。