キンクスの、キンクスらしさで満ちている、愛すべき小品といった趣のアルバムです。個人的にはベスト3に入ります。
わたしが一番初めにハマったミュージシャンはデヴィッド・ボウイで、彼も英国人なのですが、わたしにとってボウイは「ヨーロピアン」という方のイメージが強く、彼をきっかけに英国に憧れる、ということはありませんでした。
しかしこの「something else」を聴いたあたりから、激しく英国(特にカントリーサイド)に憧れを持つようになりました。わたしにとってはとても英国の香りに満ちたアルバムです。
「something else」というタイトルから、レイは「言い表すことの出来ない、雰囲気で感じ取ること」みたいなものを大事にしてるのではないかな、と思います。♪ふぁふぁふぁふぁーふぁー「David Watts」なんて、クラスのヒーローデヴィッド・ワッツくんに憧れてるだけで、だからどうしたとか、そういうのがないんですよね(笑)「彼みたいになりたいなあ」って、夢見てるだけ。でもそういうのって、凄くよくわかる感情じゃないですか?なれないんだもん。だからといって自分は自分でいいっていうんでもなくて、ただひたすらに彼はいいな〜いいな〜って(笑)
6人の姉に囲まれて育ったレイが書く「two sisters」はイントロからハープシコードの音がとても切なく、美しい曲です。マーチふうの「harry rag」(煙草のことらしい)。「tin soldier man」はおどけたカンジの曲に「plastic man」とほぼ一緒な歌詞をのせてる。まあこういう歌詞を指して人は「ひねくれてる」というのかもしれないですが。非常に地味ですが「situation vacant」は好きな曲だなあ。地味ながら展開がドラマチックで美しい「lazy old
sun」。別れた?恋人とのお茶の時間を懐かしむ哀愁溢れる「afternoon tea」は隠れた名曲です。デイヴの「funny face」は、珍しく抑え目に歌うデイヴの声がかわいい。古いミュージカル映画の1曲のように,、ロマンチックに歌う「end of the season」。そして名曲「waterloo sunset」での、儚いほどにやさしく暖かいレイの声!!
レイデイヴィスは「夢や理想」と「現実」の境目でうろうろしてる人々のことを描き上げる事が多いと思います。20歳でデヴューして、ミュージシャンとしても成功は早い人なのに、なぜ?はた目には確実に登っているように見えても、1段登るごとに彼もまた、理想と現実の狭間で悩み苦しんだひとりだということなのでしょう(人生いろいろ、な人だし。レイも)
そういう点でも、キンクスはとても親しみやすい世界だ

と思うのですが・・・

Something Else By The Kinks (1967)