星 合 氏 講 演 会


日  時 2007年1月14日 午後3時から5時まで
会  場 彦根市原町西団地自治会集会所
弁  士 星合弘三郎氏(前石和町議)
主  催 場外舟券車券売場建設に反対する自治会連絡協議会
場外舟券車券売場建設に反対する会

 お久しぶりでございます。
平成9年にこちらにお伺いしました。

 若杉さんという石和町の元町議会議長で商工会長をしていた人が「場外馬券場が出来れば人が来て商店が繁盛するからいいだろう」という事で誘致に協力したんですが、それから5年ほど経って「どうだい。若杉さん、馬券場は良かったかい?」と尋ねたところ「駄目だ!」ということでした。
そこで、私が「いま石和の現状を話してくれと言われ、あちこち出歩いているんだが、一緒に歩くかい」と言ったところ「いいよ。応援するよ」ということでした。
この人は満蒙開拓団で帰って来た人で、自民党の方ですけど非常に正義感は強くて「そういうことなら俺も話をして回るわ」ということで回りましたが、残念ながら85歳でお亡くなりになりました。

 私ももう来年80歳になるので、前に来たときから10年経っているんですね。
この10年間、皆さんの熱意が、お気持ちが馬券場をつくらせないでここまで来たんだなあと強く感じました。
やっぱり何処へ行ってもそこの真面目な良心のある方がしっかり運動するということが大事だなと思います。

 彦根市議会に出された請願書に「教育文化施設整備事業支援が得られる」とありますが、環境整備費の交付はあくまで土木関係ですからこういう部分は入りません。
ただ、学校、保育所、それから馬券場に関係している自治会が四つありますが、その四つに対しては1年おきに50万円ずつ呉れる。
私が区長やっていた時に50万円でコピー機を買ったこともあります。
地域によっては公民館の給食施設を作るところもありますが、これは法的には交付金とは別のものです。
また、馬券場からのお金で学校の扇風機を買ったとの報告を受けたこともあります。
事実は事実として報告しておきます。

 彦根市議会で田島議員が「石和でも交通渋滞は起こっていない」と言ったそうですが、確かに普段は渋滞なんかありません。
というのは、いま馬券というのは馬券場に行かなくても電話やインターネット等で買うことが出来ます。
だから若い人はそういうものを利用して馬券場に余り来ないということもありますが、中味としては色々問題があります。

 昨年12月24日の有馬記念があった日には非常に交通が渋滞していました。
それに問題なのは親に連れられて子供が入っていたことです。
そして親が子供に鉛筆を与え、馬の名前に×をつけさせてバクチをさせていました。
そして当たればきっと「お前えらいぞ」等とほめてやるんだと思うんですが、そういう光景を実際に見てきました。

 そして馬券場の施設というのは非常に素晴らしい施設です。
言うなれば高級応接室だと思います。
しかし、応接室でやっても花札やれば、これは花札で、賭場でやっても花札で、良いことではない訳です。

 一面、そういうように施設を綺麗にして良くしないと、また議会で「大丈夫ですよ。綺麗ですよ。良いですよ。」と強調しないとつくれないということが問題です。
例えばスーパーマーケットであればちょっと渋滞するなと思っても地域の皆さんや議会にお願いしなくても計画書を出して商工会がOKすればいいというのが一般的です。
しかし、ギャンブル施設をつくる場合には地域の皆さんや議会にお願いしなくてはならないこと自体、問題があるからなんだと私は思います。
やはり悪いものは悪いということをはっきりしていかないとならないと思います。
そういう点では皆さんも甘い言葉に騙されないでこの地域をしっかり守ってこられたと思います。

 私も今日、現場を見て参りましたが、確かに広い所だから何か使わなければもったいない。
だけど、インターの真下で変なものが出来たらこれはもう彦根市としても顔ではなくなってしまいます。
やっぱり駅降りてとか、インター降りてとかいう所はそこの町や市の顔になるちゃんとしたものがないとまずいんじゃないんかなと思っています。

 石和町に交付された中で、昭和61年に3億円の特別寄付というのがありますが、これは図書館を作ったんです。
私が当時の町長に「あんなもの(馬券場)をつくったんだから罪滅ぼしに図書館をつくれ」と言ったら「お金どうしましょう」と言うんで「お金ぐらい中央競馬会からとり出せ」と言って中央競馬会から3億円とって1億5千万円位足して、なかなかいい図書館をつくりました。
馬券場側としても、町長としても「本当に迷惑をかけて申し訳ないから何とかしよう」という表れでして、だから「馬券場が良いと言うことではない」と思います。

 また、
交付金が毎年4千万から5千万円近く来ますが、これは道路環境や橋をなおす費用です。
しかし、この費用のうちの20%は市民の税金が使われます。
例えば4千万円交付される場合は5千万円の事業を行い、1千万円は税金を使わなければ出来ない。
そして、この事業を実施しなければ交付金は出ないということです。

 それも馬券場の目の前や周囲は広くし舗装して綺麗にしてありますが、それは馬券場の周囲だけで一般の住民には関係ない所です。

一歩裏に入れば道路もなおっていないというのが実際なんです。
道路整備事業も、10年経つと周辺の道路がかなり壊れていますので、そこの補修事業とかが多くて一般の住民が利用する道路にはそれほど影響ないということが言えると思います。

 
交付金で町の中の全てが良くなるということにはならない、どこでもそうだと思います。
だから馬券場が出来れば全てが良くなるかというと、それは駄目です。

1994年12月29日の「山梨日日新聞」の「風林火山」という記事を紹介します。

▼有馬記念で石和の馬券売場では11億3900万円を売り上げた。
これでも前の年を7%程度下回ったという。
年間の総売り上げは522億円。
全国トータル3兆8000億円の中で下から5番目程度の売り上げだ。

▼石和の今年の年間売り上げは昨年並みで横ばいだが、入場者は21%伸びて、年間200万人。
どうりで、ものすごい渋滞になるわけだ。
有馬の日、石和に向かう道路はマヒ状態だった。

▼馬券の発売は年間104回。
だから、程度の差はあれ、毎週渋滞が発生する。
沿線の商店、ホテルは商売にならない。
住民はあきらめ顔の裏で消防車や救急車が動けないことへの不安を抱いている。

▼馬券場があるため、石和町には渋滞対策費も含め、年間約5000万円の交付金が還付される。
使い道は道路整備に限定されている。
町の歳入は63億円(6年度)だから、競馬の金は1%に満たない額だ。

▼馬券場ができて10年。
周りにあったホテルや観光農園、養魚場は姿を消し、そこいらじゅう馬券場の駐車場と化した。
混雑する日曜とは裏腹に、平日は一日中人通りもなく、夜の道は暗い。

▼馬券場には街灯をつけてという要望もあったが、電気代をだれが負担するか決まらず立ち消えになっている。
天野知事は石和に住み馬券場を誘致した人でもある。
諸問題を解決すべき立場にあることを忘れてはなるまい。

 有馬記念の日はマヒ状態だが、無い日は閑古鳥が鳴いている、夜の道は暗い。
ホテルも無くなったし、商売も潰れたという記事で、これは事実です。

 今回、ブドウ狩に来る観光バスが馬券場があるために入れないので観光農園をやめて駐車場にしたという人に会って話を聞いてきました。
「今はガラガラで固定資産税を払うのが大変だ」というんです。
混めば混むで渋滞で困るし、空いてくると固定資産税を払うのが大変だと言うことです。

 石和の場合は、平成18年度の環境整備費が3,900万円程で多い時に比べると1,000万円近く減っています。
環境整備費は売り上げに対していくらということではありません。
全国の馬券場の環境整備費全体を決めてから各馬券場に割り当てて、「あんたとこはいくらだ」という呉れ方をします。
馬券場全体の売り上げが落ちていますし、石和が下から5番目だということもあって石和の環境整備費が減ってきているようです。

 かつてのように景気が良くないですから馬券を買いに来るというようなことは皆おさえていると思います。
お小遣いが乏しくなれば先ずギャンブルをやめる、次に外食を控えると言うことになりますからね。

 青少年問題は非常に難しいところがあると思うんですね。
これは「荒れた学校として名指しをされた石和中学校が生徒達で汚名返上、2年かけて再生した」という昨年12月4日の読売新聞に載った記事です。
 本当に荒れた学校で、ガラスは割られる、建物は壊される。
ただそれが表に出ないということなんで、一般の人にはわからないんです。
この記事にも書いてあるんですが「赴任先が笛吹市立石和中学校に決まった教諭は生徒指導の苦労をくんで同僚から慰められた」というほどの学校でした。
このように学級崩壊、喫煙、備品破壊、荒れた学校と名指しされた石和中学校でしたが、「現3年生が中心になって学校を変えた。」ということです。
私の孫もこの石和中学校の3年で生徒会長をしています。
 先生が頭から「お前たち悪いことしちゃ駄目だ」と言ってもなおりませんけども、生徒たちが自分達で克服したということです。
荒れた学校とか、荒れた子供達の問題は馬券場も影響するし、今の教育の問題や家庭の問題なんかも影響すると思います。

 田島茂洋議員が「合併特例債を使わなくてもよいほど財政は良くなったと言われていました」と発言されていますが、旧石和町の場合は無駄な公共事業とか不必要なお金は使いませんでした。
町側が計画しても「駄目だよ」と。国民健康保険なんかも「払えない人には払えるような対応をしなさい」というようなことをやってきました。
当時の町長は本当に無駄なお金は使いませんでした。
そのかわり合併して昔の役場を広い庁舎にしたいんですけど、狭くて困っているというのが現状です。
当時、合併するときに近所の町村は「この際だから」と道をなおしたり教育施設をつくったりかなりしたんですが、ですから旧石和町の議員等が「こちらの黒字のお金を全部取られてしまうのではつまらないじゃないか」と言ったりしました。
今、新しい市庁舎をつくるのも簡単につくるのではなくて、「市民みんなが『ここにこういうものをつくるんだったらよい』となるまで待っていろ」ということで合併特例債を使っていないということです。
 昨年12月に笛吹市総合計画審議会が出来まして、私も審議委員になっているんですが、先日も市長に会いましたから「総合計画は簡単にはいかんよ。地域がいろいろあるんだから分科会をうんとやってしっかりやらなきゃならんよ。1年や2年で終わると思っては駄目だよ」と言ったら「わかりました」と言ってましたが、そういうことをしっかりやっていかなければならんと思っています。

 馬券場のメリットといえば、土地を潰して駐車場として貸した人は平成10年頃まではメリットがあったかも知れませんね。
 当時の町当局も「
場外馬券場の利用者は車が多く町内には渋滞が多く見られ、商店の活性化は見られない」と言っているように、実際ものすごい車の量でした。
近くにスーパーマーケットをつくろうとしたけども馬券場の車が多くてお客さんが来られないということでゴルフの練習場にしましたが、それも今は潰れています。
馬券場が出来た為に他の商売が出来なくなったので、馬券場のお客さんを相手に駐車場を始めた人は、今は固定資産税を払うのもえらい位に困っているというのが現実です。
まさかバブルがはじけて、こんなに馬券を買いに来る人がいなくなって、普段はガラガラで困るということはその頃は考えなかったと思うんですよね。

 石和町として場券場のメリットは考えられないですね。
私達が行政と一緒に町づくりをもっと真剣に考えておれば、今みたいではなかったと思うんですよ。
日本自体が、国民一人当たり500万、600万の借金を抱えている日本ですから大変難しい時だと思いますけど、それでもなにかやっぱり自分の住む町を良くする、元気にするということは考えなきゃならない。
しかし、それがどれだと言われるとその町に住んでいなきゃわからないと思います。
自分の町を自分が良くするということでなきゃならないと思います。
ただね、「
ギャンブル施設をつくって町が良くなるって事は絶対にない」という事はもう皆さんも御存知だと思うんですけど、その辺を知っておいて、どうするかという事を考えないとならないと思います。

 子供の教育崩壊の問題では、
同級生の女の子が男子の家に遊びに行ったら机の引き出しに馬券が入っていたという事を聞きました。
子供達が自然に馬券を買ったり見たりするようになるという事は問題だと思います。

 馬券場が出来た頃、石和では
土地を売って夜逃げしたというのが相当多かったですね。それは土地の値段が高い頃です。
坪50万円も100万円にも売れる頃です。
馬券で損したと言えませんから、みっともないですから他の理由つけて土地を売って行ったという事だと思うんですけど、そういうかたが結構ありましたね。
 今はそんなことから農地が草だらけで放棄農地というのが結構ございますね。
石和という所は割合、土地が安くていいんですよね。
東京から近いし甲府市も近いし、どんどん住宅地になり家が増え、1年に500人、1,000人と人口が増えてきたんですから、うんと良い所なんですけど、今では耕作放棄で草茫々の農地がいっぱいありますね。
「だからこうだよ」とは言い切れないと思います。
私もわかりませんが、土地の価値が下がったんじゃないですかね。

 日本の政府というのは10年位前は「年寄りをうんと大事にしろ」と言って、老人保険で無料でとか、色々やってくれましたけど、近頃は年寄りはじゃまっけになったからと言って税金の高齢者控除を無くしたり、逆に今度は少子高齢化で子供が少ないから「子供は大事にしろ」と言って子供を育てるためにお金を出すというようにその場限りでね。
本当に政府自体がその場だけで、日本の200年、300年先を見据えてどうするかということがないじゃないですかね。
 私たちもそういう点で、非常に大事なんだけども難しい面に直面していますよね。
こうやれば「打ち出の小槌」になるよというのは今は難しいのではないでしょうか。
ただ、そうは言っても地道に地元で考えて、地元でしっかりやるという事はやっていかなきゃならんと思っています。
やっぱり自分達で考えなきゃ、他人に知恵を教えてもらってやろうなんてのはもう駄目じゃないですかね。

 舟券売り場や車券売り場もあっちこっちで呼ばれまして伺いましたけど、主管する政府の機関が違うだけで中味は馬券売り場とそんなに変わりないと思いますね。
国交省がやるか、経産省がやるか、農水省がやるかということだと思います。

 石和のすぐ隣りに県庁所在地の甲府市があるんですが、バイパス通りに沿って「グランバーク」という色々映画館があったり、一時は「トイザラス」も入ったりとかいい施設があるんです。
その「グランバーク」もやっぱりなかなか営業が今のことですからえらいということで、4年位前に車券売り場を誘致するという話が出てきたんですね。
やっぱりご近所の方や、グランバークで働く人たちの反対もあって潰れちゃったんですけど、車券売り場でも馬券売り場でもそういう点では同じだと思うし、逆に言えば地方競馬はもっとそうですけど車券売り場とか舟券売り場とかは中央競馬会より、何て言えばいいのか券が安く買えるから、もっとそういう点じゃ色々問題が起こり易いという事は聞きますね。

 それから馬券売り場とか車券売り場とか舟券売り場というのはギャンブル施設ですよね。
スポーツとして馬が駆けるよとか、そういうのじゃないですからね。
例えば、相撲の勝ち負けでもやっているらしいけど、それをこういう場所をつくって「やるよ」って言えば「これはちょっとまずいな」というふうになるだろうし、そういう事じゃないでしょうかね。
市長さんの答弁にあった「イナバウワーと品格」で「ここの人は品格が失われる」という答えがあったけど、その通りだと思いましてね。

 石和では馬券場が出来ても
馬券買って、儲かって、お店で買い物して、ホテルへ泊まってという人はいません」と言ってもいい位だと思いますね。
ですから、間接的にお金は少し来るけども、直接的には何もない。
それより、さっきも言ったように子供の問題や家、屋敷を売った、或は馬券やパチンコで多重債務をつくって「多重債務困るんで、何とかしてくれ」と私んところへ駆け込んでくる方のほうが多い位です。

 
雇用問題については、今はそんなに雇用しませんよ。
自動発売機だから、発売も自動だし、お金もらうのも自動だから。
 人はね、中央競馬会から来てる人が6人、あとは警備の警察官の古株が5人位いて、あとは場内整理とか、何か居ますけどね。

 それに、土日だけしか使わないでしょ。
土日しか使わなくて時給を1,200円とか1,300円出すでしょう。
だけど働く人は安くても毎日仕事がある方がいい。
土日の5時間かそこら、少しくらい時給良くてもというのがあるので、どうですかね。

十分おわかりいただけない部分もあったと思うんですけど。
また、是非みなさんで自分の町をどうするかということをよく考えて頂くように、よろしくお願いします。