諏訪緑さんについて

 北海道釧路市出身。1984年『バラモンの塔』(『プチフラワー』〔注1〕掲載)でデビュー後、現在に至るまで上質な歴史漫画を描き続けています。舞台となる時代が、新しくても平安時代(9世紀)頃までなのは〔注2〕、制作スタイルに深く関連していると思われます。

 諏訪さんは執筆前に数多くの資料を読み、登場人物(多くは歴史上の実在の人物または神話や古典文学の登場人物です)のみならず、背景や時代考証に関しても綿密な下調べを行っていらっしゃるようです。そうして得た知識を基に、基本的には史実や原作を踏まえた設定の上に大胆な解釈を施して、いつもあっと驚くような新鮮な物語を発表されています。比較的現代に近い時代を舞台とするなら、このようなオリジナルな展開をすることは難しいのではないでしょうか。なにしろ資料がたくさん残っているので、自由な発想の余地が少なくなってしまうからです。

 諏訪さんの描かれる物語は、一貫して「少年(青年)が世界と出会い成長していく」ようすを主題としているようです。自分の狭い価値観の中で生きていた少年が、旅をして世間を知り、人と出会い、別れ、友と師を得ながら、他者とあるいは自分自身とぶつかり葛藤することを経験して、自分が何者であるかを知り大人になっていく。初めて諏訪作品『玄奘西域記』を読んだとき、「こういう漫画を描く人が今の少女漫画界にもいたんだ!」と胸が熱くなりました。1970年代後半から80年代前半にかけての、24年組を中心とした少女漫画全盛期の流れを正当に受け継いでいる貴重な作家であると言えるでしょう。

 現在は『flowers』誌上にて、諏訪版三国志『諸葛孔明 時の地平線』を好評連載中です。『玄奘西域記』『うつほ草紙』に並びかつ超えていく、諏訪さんの代表作になることはまちがいないと思います。 

                                            

 〔注1〕2002年6月号よりリニューアルし、現在は『flowers』として月刊化されています。
 〔注2〕唯一の現代物『B型を狩れ!』を除きます。


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