今月の『ひすいの国』 2008年



★『凛花』2008年 第3号 (2008年2月14日発売)

・感想遅くなりました・・・。
雑誌が出てから8ヶ月、コミックスになってからでも2ヶ月もたってしまいましたよ。
なんでこんな前代未聞な遅れ方をしたかと考えてみるに、仕事が忙しかったとか体調不良とか月刊誌で毎月50ページ以上も描かれるもうひとつのサイトに手を取られていたとかいろいろありますが、第3話の展開が思ったより早くて自分の中でうまく整理できなかったというのもあるような気がします。
まあここまで遅くなった以上何を言っても言い訳だけどさ〜。

・さてさて、↑でも書いたように、80ページも一挙に読めたのは嬉しいのですが、なんだかさくさくさくっと話が進んでしまってあれよあれよというまに第一部終了。
もう少し2人の出生に関する葛藤とかで引っ張るのかなあと思っていましたが、どうやら第一部は導入編、本筋はこの後になるんじゃないかなー。『凛花』は年3回しか出ないし諏訪さんは霊鳥シリーズも描いているし、どの程度の長さで構想を練っているのかはわかりませんが。

・そしてこの話も「時地」や他の作品同様、時代や設定が変わっても、人が生きていく上でのアイデンティティ(自分は誰なのか、どういう人間なのか、何をしたいのか)の問題と、経済と政治の密接な関わり、その理想的な関係と現実とのギャップ、等々をテーマにしているんですね。
私はこういうふうに「自分の物語」(問題意識と言えるかも)を持っている作家さんが好きです。
そういう人って何を描いても結局同じ話になるのよね。(ワンパターンとかそういうことじゃなくて。作品を通じて表現しよう・訴えていこうとしているもの、こういうものが正しくて美しくてあるべき姿なんだ、という、作品の裏に透けて見える気持ちがはっきりしている、というか)
そういえばちょっと前におお振り関係のファンの方たちと話をしていて「作家で読むか・作品で読むか」という話になったとき、私以外の人は皆「作家にはこだわらない、作品重視」と言っていてちょっとびっくりしました。私はその作家さんの物の考え方とか人間と世界に向ける気持ちや態度に一旦惚れてしまうと、ほとんど永遠にその人の作品を読み続けるのですが、そうではない方もたくさんいるのですね。
話を戻すと、諏訪さんのテーマには↑の大きなものに加えて、人の心の弱さとそれに打ち勝っていく強さ、というものもあると思っているので、第2部以降ではそこも大きくクローズアップしてほしいなあ。今のところ政はまだ本当の意味での心の強さとは何か、ということには気付けていないような気がするので。

・では小ネタ。
いつものようにすみっこに手描きで書かれるモノローグが程よく肩の力が抜けていてステキです。
「命をかけてお守りいたしますぞ」と熱血している元生がおかしいw 燃えてるし! しかしこの人も16年前に既に王の側近中の側近で王子の護衛をまかされるくらいだから実際相当いい年のはずだよね。でもせいぜい20代後半、いって30代前半くらいにしか見えないんですが。彼もまた孔明達のように「年取らない病」にかかっているのか?
あと、暁ちゃんのアクションシーン、もしこれが少年漫画とかなら格闘美少女の最大の見せ場、もっと力をこめて描かれるはずなんですが、相変わらず簡単すぎ! 諏訪さん、「ヒロインの見せ場! かっこいいアクションを描こう!」とかいう気、全然ないでしょ〜。なんか力が抜けて笑えてきましたよ。(あ、バカにしてるとかそういうことじゃなくて! ほほえましいというか。)
私は元気な女の子が好きなので、暁ちゃんのシーンはどれも楽しいです。「誰がガサツよ あんたたちが乙女なのよ!」もよかった。まあ実際女子の方が現実的でシビアだったりすることは多々ありますもんね〜。「三角関係」発言も、本気でそんなこと思ってるわけではないのでしょうが、なんか面白くないぞ、という感じがよく出てる。
諏訪さんご自身も多分さっぱりした女の子がお好きなのでしょうが、たまにはしれっとした悪女(峰不二子みたいな?)も読んでみたいなあと思います。諏訪さんが描くとどうなるのか興味ありますね。


★『flowers』2008年1月号 (2007年11月28日発売)

・新連載第2回! で、わくわく、のはずなのにショッキングな情報が〜!
次回から増刊号の『凛花』へ移動ってどーゆーこと!? 『凛花』って季刊ですらない、1年に3冊しか出ないんですよ。しかも少女漫画誌としては掟破りの分厚さで(『アフタヌーン』とタメはる?)、悪いけど書店で見て「売れてないんだろうなあ・・・」と思っちゃったくらい先行きの不安そうな雑誌で。いや2号は買いましたけどね、諏訪さんの読みきりが載ってたから。でも載ってなかったら多分買わなかったと思う。
いや普通さ、増刊ってデビュー直後の新人さんが修行のために描く場所で、そこで人気が出たら本誌へ移動、みたいな位置づけじゃないの? それだとあまりにも売れそうになくて、ベテランを移動させて誌面のレベルを上げる、みたいな意図ならまだいいんだけど…。だってこのままじゃ雑誌としての存続も危なそうなんだもん、4ヶ月も間があく以上に雑誌が消えて描くところなくなるほうが心配だよ!
諏訪さんの公式サイトの日記を見たら「バイトする」とか書いてらしてすごく切なくなってしまいました。年3回の掲載じゃ確かに食べていけないよなあ…。単行本が爆発的に売れてるわけでもないだろうし…。ああ考えると暗くなってきた…。
唯一の慰めは1回あたりのページ数が増えるかもしれないということでしょうか。まとめて80ページくらい、いやせめて60ページでも読めるならあきらめも、いや、つかねえぞ!。
とにかくアンケート葉書を出して、諏訪さんが載らないならもう来月から買わない旨をはっきり編集部に伝えようと思います。同じく不満に思ってる方いらしたら、葉書は面倒でもflowersの公式サイトにもアンケートあるのでよろしかったら意見表明してやってください。

・ああ興奮したら疲れた。
今月号の感想書きます。

・序章の『蜃市』で描かれていた徐福の立場、政との関係が冒頭から簡潔に説明されていましたね。やっぱり徐福が本当は始皇帝(になるべき人物)だった、ということで。こんなにあっさり確定してしまったということは、話の主眼は出生の謎を解明、ではなくて運命(という名の人為)によって翻弄される2人の少年の成長etcになる、のかな。
そういえば前回も政が徐福を見て「誰かに似てる」と思っていましたが、それは多分お父さん(現国王)に似てるってことでしょう。元生に徐福の護衛を頼んでいるということは政が本当の子ではないと気づいているのでしょうが、それでも政の母を疑ったり政本人を疎んじたりすることなく普通に愛情持って接している様子を読むと、顔だけじゃなくて、そういう周囲に惑わされないどこか超越した雰囲気も似ているのかもしれません。
あと、政と徐福のお祖父さんの頭蓋骨の形が同じ、というのも2人の血がつながっているということなんでしょうね。
しかし呂不韋と親子だということを認めたくなくて、「誰か他人のそら似だと言ってくれ」と願って徐福に問いかけたのに、結果的には「親子である」という証拠をまたひとつ増やしてしまったようなもので、政の気持ちを考えると気の毒になってしまいます。今のところ本人は「やっぱり他人のそら似なんだ」と安心できている分余計に。

・やーしかし、なんか徐福はかわいいなあ。政と話しててときどき口をぽかーんと開けてるのが何にも考えてなさそうで(おい)なんとも。いやちゃんとしっかり考えてるんだけどね、苦労してきた分。
先月号の感想でも書きましたが、諏訪さんのキャラ、しかも主役としては今までなかったパターン。なんだろうね、一見ふわーとしてるんだけど実はちゃんと地に足がついてて状況判断とかもかなり冷静で。
元生に「皇子として名乗りをあげろ」と言われても、とまどうでも怒るでもなく淡々と「みんな大人の事情を言うけど ぼくらの事情は後回しなんだよね」とひとり考え込むあたり、すごく新鮮な印象があります。でもそのうち焦ったり激怒したりわんわん泣いたり、感情的な面も見られるのかな? 今のところはその辺は政が全部受け持っているみたいですが。

・後半の政と徐福の会話シーンを読んで、「ひすい」や「ひすいの国」は2人、特に政にとっては憧れの象徴というか、ここにある現実から抜け出して行ってしまいたい桃源郷のようなところと捉えられているのだなあ、と思いました。
この話のタイトルが「ひすいの国」というのも、そのあたりに何か理由があるような気がします。
まだ話は始まったばかりなんだけど、「どこかにあるはずの桃源郷」は実はどこにもないんだよ、とか、いつも心の中にあって、辛いときに支えになればそれでいい、とか。

・関係ないけど、中国人ひすい好きですよねえ。やっぱり彼らにとっては特別な意味がある石みたい。香港にも露天のひすい市場があるし、いい物は全然手が出ないけど、安いのでよければアクセサリーとか動物を彫った小さな細工ものとか可愛いものが結構見つかります。
実は私も今年香港に行ったとき、上海灘というお店でひすいがふんだんに使ってあるバッグを買いました。黒い革に大胆な模様で錦っぽい織物の生地がパッチワークしてあって、持ち手と本体をつなぐ輪がひすいで、本体にも2cm直径くらいのひすいがばしばし埋め込んであるド派手なヤツ。ここの店って素材は結構いいもの使ってるのにデザインが超キッチュで楽しいです。コーディネイトには結構気を使いますが。合う服と合わない服が極端で。
何が言いたいかというと、もう1年くらい前に買ったものなのに、うまいこと諏訪さんの新連載とリンクしてたのが嬉しいというそれだけの話です。

・今回のラスト、2回目にしてかなり盛り上がってきたと思ったのにこの続きは3ヶ月先ですか・・・。
あーーーー、早く続きが読みたい〜〜!
とりあえずアンケ葉書出してこなきゃ。



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