今月の『三蔵法師の大唐見聞録』 2010年

 

『ホラー&ファンタジー倶楽部』 2010年11月20日配信(第4回)

・今回体調不良のため箇条書きで手短にいきます。

・毎回カラー表紙がつくのは嬉しいですね。WEB連載ならでは。
坂田靖子さんも嬉しいと書いていらっしゃいましたが、負担に感じる漫画家さんもいらっしゃるようで。諏訪さんが楽しんで描いてたらいいなあ。

・冒頭からいきなりポロの試合でアクションシーン。
昔に比べてアクションを描いてて楽しそうというか、迫力が出てきたような。効果線とかが違いますよ。
そして今頃気がついたけど、諏訪作品には珍しく、主人公が短髪。「ヨナの災難」とかもそうだったけど、あれは短編連作で狂言回し的な主人公がほかにちゃんといたもんね。
髪の毛のせいなのか、玄奘が成長したせいかはわかりませんが、以前よりも行動に迷いがない、というか考える前に動け、的な雰囲気がありますね〜。(それって成長したのか?)

・前回から後姿で登場していた謎の人物、てっきりハザクかと思っていたのにな〜。「玄奘西域記」のキャラは出さないつもりなんでしょうか。
既存のファンには楽しみだけど、新規読者さんには知らないキャラが当然のように出てきてもとまどうだけ、というのはあるかもしれません。

・そしてその新キャラ・ムンアの目的は?
「義によってお助けいたします」(懐かしいせりふだ・・・士元)という「義」とは?
単純に子ども1人に大人が大勢よってたかって、というくらいの意味だったのかもしれませんが、でもそれだけではなさそうな気も。
高句麗か新羅というと現在の朝鮮地域ですが、今も当時も中国という大国と地続きで軍事的にも文化的にもいろいろな影響を受けていたし、大国の都合で振り回されることもあったでしょう。
彼が単身であの場にいたことの理由もきっとストーリーに関わる何かがあるはず。
それと、「三蔵法師」に反感を抱く理由もね。宗教的には、当時の高句麗・新羅では仏教と道教が主流だったようですが・・・。


『ホラー&ファンタジー倶楽部』 2010年9月18日配信(第3回)

・この作品、「H&F倶楽部」のジャンル分けでは「冒険、アクション」となっていて、初めて見たときは「え・・・?」と思ったのですが、3回読むうちに妙に納得。
確かにこれは「冒険、アクション」物ですよ。
諏訪さんが『玄奘西域記』の頃よりも経験を積まれたのもあるのでしょうが、毎回派手な見せ場があって、次から次へと事件が起こり、話がテンポよく進んでいってます。
WEBだから諏訪作品を初めて読む読者を意識しているというのもあるのかな? よりエンターテインメント色が濃い感じ。
もちろん今後、特にクライマックスにかけては『玄奘西域記』のようなシリアスで感動的な展開も期待していますが、今のところ個人的には大変楽しく読んでいます。
ちょっとシノワズリアドベンチャーシリーズを思い出しますね。

・↓でも書きましたが、共都姐さんをホーフツとさせる踊り子の団長さん(麗麗姐さんと名前が出てますね)、思いがけず旅に同行しているばかりか、ストーリーにもかなり絡んできていて嬉しい限り。
私はこういうかっこいい姉御肌の女性キャラが大好きなので〜。
ポロのシーンは楽しかった。「勝負で勝つしかないんだよ!」にはシビレましたです。
そして麗麗姐さんは「書き物してるときは話しかけるな」とか言ってるし、ひょっとして文学的な趣味もあるのかしら。案外詩人だったりしてね〜。

・今回冒頭から、袁天さんの道士的な描写が多くなっています。
麗麗姐さんの「お墓の方向が〜」のセリフもあるように、ひょっとしたらこの作品では道教が重要なポイントになってくるのかな?
個人的には道教(中国古来の民間宗教的な教え?なイメージ)と仏教(海外から渡来した新しめの学問的な宗教←つっても前作『玄奘西域記』の頃にはすでに衰退しつつある側面もあったけど)の対比、というだけでなく、異文化との出会いと融合、共存、みたいなところに進んでいくのではなかろうか、と期待交じりに考えています。
と書いて思いついたけど、これって結構現代的なテーマですね。
いや諏訪さんの作品は今までもテーマ自体は非常に現代的なものでしたが。

・最後に。
インドの師(正法蔵様?)の言葉「智恵を捨てるとは智恵を開くことだ」。
私にもよくわからないけれど、今までの智恵(古い思惑とか既成概念とか?)を一度捨て去ったところにしか新たな悟り(一段階上の理解?)はない、みたいな感じ、かなあ・・・?
今後の展開に期待です。
あ、そういえば、最後に後姿で出てきたのはやっぱりあの人だよね!
次回の再会が楽しみです。毒舌再びw
私の好きなプラさんも再登場希望ですよ〜。


『ホラー&ファンタジー倶楽部』 2010年8月20日配信(第2回)

・今回で起承転結の「起」の部分が終了、というところでしょうか。
唐でのいろいろなしがらみや事情をなんとか力技で乗り越えて、ようやく次回から旅の空へ。
諏訪作品の主人公に必須の「苦悩」と「旅」がちゃんとこの話でもセットで用意されていて、これでなくっちゃねー、という感じがしますよ。
描かれている時代的なこともあって(物見遊山の旅行なんかそうそうできない時代ですから)、もちろんどの主人公も必要に迫られて旅に出ているんだけど、でもやっぱり諏訪さんが描く青年たちは、定住型か漂泊型かというなら断然漂泊型だよね。
松尾芭蕉とかブルース・チャトウインみたいに、ひとつの土地に留まって安定して暮らすことはできないタイプ。漂泊の思いやまず、夢は枯野を駆け巡る。
事件に巻き込まれてやむをえずとか、経典を持って帰るとか遣唐使として優れた文化を学びに行くとか、ちゃんとした理由があって旅をせざるを得ないのだけど、そういう事情がなければ落ち着いて暮らせていたかというと決してそんなことはないだろうな、という。
心の中ではいつも「ここではないどこか」に憧れてるんだと思います。
と書いて気がついたけど、だから諏訪さんの主人公はいつも「永遠の青年」なのだね。
ひょっとしたら孔明が最後まで青年の姿で描かれていたのは、そういう理由もあったのかもしれません。

・五台山への旅、少しずつヒントが出されていますが、今回のポイントになりそうなのが「尉遅敬徳」。
ウィキペディアをチェックしてみましたら、ちゃんと実在の人物ですね。中国史に興味がある人にとっては基本的なことなのでしょうか。唐の時代に最強の戦士と言われた大将軍だったようです。
拙サイトの年表では玄奘が唐に帰国したのが西暦645年(ただし、年表ページにも書きましたが、『玄奘西域記』は時間軸が史実とは数年ずれています。そもそも玄奘が取経の旅に出た年齢が史実ではもっと年をとってからなので)。一応、史実のこの時期、尉遅敬徳は皇帝と意見が合わず、唐の軍を辞職して隠遁し道教の修行に励んでいたそうで、なんとなくいろんな話がつながってきたような。
「尉遅」の読みが「うっち」となっていますし、ウッチの「我が家の事情」というのもこれに関連していて、袁天は尉遅家の親戚もしくは側近か何か、というのはどうやら疑いのないところ。
多分盗まれた経典の件もここにからんでくるのでしょう。
話が複雑そうで楽しみです。

・で、どうでもいいっちゃどうでもいいんだけど、ラストシーン、玄奘が「見送りにきていた」のはきれいどころの踊り子さんたちだよね。ちらっと画面にも出てきているし。
彼女たちも旅に同行したりするのかな?
直接ストーリーには関係なさそうだけど、ちょっと共都姐さんを思い出させるあのお姐さんが一緒なら話がなんだか楽しくなりそうな予感がします。(ないだろうけど・・・)


『ホラー&ファンタジー倶楽部』 2010年7月20日配信(第1回)

・待ちに待った諏訪さんの本格新連載スタートです! しかもあの『玄奘西域記』の続編ってマジですか!? と、予告が出てからずーっと楽しみにしていた作品。初回はなんと60ページもある〜。
しかし初のWEB連載ということで、まずとまどったのは感想書きながらぱらぱらページをめくれないことです。今までずっとPCの横に本置いて、あっちこっち見返しながら書いてたのになー。
現在はブラウザのウインドウと切り替えながら書いてますが、やっぱり不便。
そろそろPC買い替え検討してるので、デスクトップで大型のディスプレイにしないとなあ。
あと、無料なのはいいけど、期限がすぎたら消えてしまうのが痛い。保存しておけないから後から読み返せないしねえ。
たくさんの人が気軽に読めるという点ではいいのですが、今のところWINDOWSのみだし。これだけiPadが話題になっているんですから、ぜひMACでも読めるようにしてほしいところです。

・ま、ハード的なことはとりあえずこの辺で。

今回は連載1回目ということで、物語のイントロ、設定の説明と、ここから大きく動きますよ、というところで終わってしまいました。
え、もう終わりなの〜、と少々あっけなく感じてしまいましたよ。
60ページなんてあっというまですね。
しかし最初の方で若い頃の玄奘と長捷、ハザク、プラジュニャーカラの姿を見て、それだけでなんだか涙が出そうになってしまいました。
ところが本編はちゃきちゃきとかなりテンポよく進んでいく(笑)。感傷はこの際置いておいて、とにかく新しい物語へ進もう、という感じです。
正直、読む前は、唐に帰ってきて経典を翻訳してる話をどういうふうに読ませるのか、と不安を感じていましたが、序盤から話は動く動く、新しいキャラクターは出るわ(しかもミステリアスな美形だよ)、謎は次から次へと提示されるわ、息つく暇もないくらい。
アクションシーンも結構ありましたね〜。諏訪さんには珍しく(?)気合が入っていたような気がw
でも真面目な話、あのシーンで中盤の展開がぐっとスピーディになったと思います。あれよあれよというまに話が進んで旅に出ることになっちゃったよ、みたいな。

・とりあえず一番気にかかるのは、新キャラ2人かな?
ウッチは西域人のようですが、袁天は名前からしても漢人、しかも「ウッチどのをお預かりしている」等の言葉遣いから、どうもウッチはある程度身分のある家の出身のようだし、2人はなぜ2人きりで旅を続けているのか、何かから逃れてきたのか、それとも目的があるのか。
そして玄奘も、また経典を求めて旅に出ることになりそうですが、一般の人には読めないし意味を理解もできない経典がなぜ盗まれたのか、どうして賊は五台山へ行くのか、長捷さんの夢はいったいなんだったのか、やーもう謎が多すぎるよー。
『玄奘西域記』のキャラも再登場希望! ですし、とりあえずかなりの長編になりそうですね。
次回の更新が楽しみです。



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