平成20年11月19日 佐野美術館 正宗から村正まで

 日刀保の全国大会の帰り、弟子の和田君が静岡の三島に有る佐野美術館で開催中の「正宗から村正まで」の展覧会を見たいというので、私も寄ってみました。実は私は開催前日に、この展覧会の期間中ここのミュージアムショップで販売する古釘刀子を届けに行ったので、一足先に覗かせてもらったのですが、結構面白いのでもう一度覗いてみる事にしました。

 この展覧会は、鎌倉から東海道を順に伊勢までの刀鍛冶の作品を紹介しているのですが、これがまた面白い展覧会で、展示してある作品は会津新藤五、陸奥新藤五から始まり正宗や貞宗は勿論、秋広・広光などの相州伝の名品、それに東海道の島田などの刀鍛冶の作品、伊勢の村正の名品などが展示してあります。

 この中で目を引いたのが会津新籐五と陸奥新藤五で、特に陸奥新籐五を私は初めて見ました。陸奥新籐五は新藤五には珍しい太刀で、重ね彫りがしてあります。地刃の出来も素晴らしく、付属する太刀拵えも古い物らしくなかなかの物でした。実はこの太刀の前の持ち主を私は知っていて、何度かお宅にお伺いして沢山の刀を見せて頂いた事が有るのですが、あいにくとこの太刀だけは貸し出し中だったりして、見せてもらう事が出来なかったのですが、やっとここでガラス越しでは有りますが見る事が出来ました。この展覧会では他にも包丁正宗が一振り出ていますし、島田の助宗作の「おそらく」の本歌や、村正の名品も多数展示して有り結構楽しめます。

 でも私がこの展覧会を皆さんにお勧めする理由は他にも有ります。この美術館では、以前よりデジタル技術を駆使した展示方法やデータの保存方法の開発に力を入れていて、私の「写真教室」の頁に有る様な考え方で、技術を研究して来ていました。そして今回ついにその成果の一端を展示に使用しているのです。全ての展示品では有りませんが、作品の後ろにはデジタルデータを元にした拡大した刀の画像が展示してあり、刃文や地鉄の特徴が非常に分かりやすくなっています。

 また、展示室の中には、一部の作品では有りますが、作品のデジタル画像データを直接呼び出して見る事の出来るモニターが置いてあり、入場者は自分で好きな作品の画像を選び、全体でも部分でも自由に拡大して見る事が出来ます。この画像の迫力は素晴らしく、最高の光の条件の元で、直に手に取って作品を見るのと同じ位か、それ以上の見応えが有ります。

 これらの展示方法はこれからの刀の展覧会の展示方法を変えるかもしれません。私個人的にはそう有って欲しいと思っています。皆さんも、もし時間がありましたら一度佐野美術館の「正宗から村正まで」をご覧になってみて下さい。今年一押しの展覧会です。これを見ると刀の見方が変わるかもしれませんよ。

佐野美術館へのアクセス等はこちらから
http://www.sanobi.or.jp/
会期は12月21日(日)までです。

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