平成20年6月2日 新作刀展覧会の勉強会

 読者の広場にも書きましたが。6月2日に刀剣博物館の新作刀展覧会の勉強会に行ってきました。私は刀匠会にも日刀保の伝統ナンタラ部会に入っていないので、この勉強会で刀を見せてもらえるのか会場に入る前、協会の人に一応お伺いを立ててみました。協会側はどうもそう云う質問は想定していなかった様で、皆さんちょっと相談していましたが、なんとか許可が下りました。私は一応、協会の会員では有りますし、特例で認められたのかもしれませんが、詳細は不明です。でも、以前は刀匠会にも三匠会にも入っていなかったので、この勉強会には入れてもらえなかったのですから、これは良い変化だったですね。

 で、会場に入ってみると、出品者が例年の半分くらいという事で、刀鍛冶の多くは勉強会にも来ておらず、会場はかなり空いていました。刀の部門は出品刀が少ない事も有り、今年は特選が会長賞と薫山賞の2口だけで、優秀賞3口、努力賞6口となっていました。ちなみに、無鑑査出品は10口でした。去年は18口でしたから、かなり減っています。その顔ぶれを見ると、それぞれの先生方の今回のごたごたに対する考え方も少し分かる様な気がしますが、まあ生臭い話はおいておきまして、作品のお話をしましょうか。

 今回の圧巻は特選第1席の松葉刀匠の3尺を超える太刀ですかね。いかにも松葉さんらしい豪壮な出来でした。もう1つの特選、古川さんの刀も地鉄が良く出来ていて面白かったですね。また地鉄の事なら、短刀の部門の古川さんの包丁正宗写し、これが更に面白い地鉄をしていて参りました。その地鉄の自然な変化は、鎌倉時代や更に古い時代の刀に通じる物が有り、刃文の出来と相まって私は引きつけられてしまいました。本人曰く、刀と同じ地鉄の作り方だと言っていましたが、私には理解出来ませんでした。

 同じく短刀の部の杉田さんの逆丁字の寸延び短刀も出来が良く、去年から、あちらこちらで開催されている一文字展を見た人は、これは同じ手法で焼きを入れられたのではと思う人は多いのではと思います。足先が切先に向かう逆丁字という事を除けば、刃の形や映りの出方もかなり近い物が有ると私は思うのですが.........。そう思うのは私だけでしょうか?

 その他にも私の唯一の弟弟子、栃木の加藤君が刀の部で優秀賞、短刀の部で努力賞に入っていましたし、同じ兵庫の高見君が刀の部で優秀賞と、嬉しい事が沢山有りました。でも私個人としては、皆どんどん上位の賞を取る様になったのに、私はこんなにノー天気に構えていてよいのか、ちょっと不安もよぎりました。でもまあ自分は自分で今の行き方に決めたのだから、ここはブレル事無く我が道を進みましょう。

 それから、今年は千葉の松田さんが出品していませんでした。電話で本人に聞きますと、今回のごたごたに関連して、出品を取り止めたのではなく、単に研ぎが間に合わず締め切りを過ぎてしまい、出品が出来なかったとの事です。(でも研ぎ師さんが悪いのではなく、松田さん自身の仕事が遅れたので、研ぎ師さんにしわ寄せが来てしまっただけなんですけどね。)作品はその内見せてもらえると思いますが、ちょっと残念でした。

 お昼は読者の広場にも書いた様に、宮入一門で勉強会に来合わせていた、古川さん、松川さん、加藤君、それと義村君のたった5人でそばを食べに行きましたが、本当にこんな状況で良いのか、先行きになんだか不安を感じる今年の展覧会です。

 午後からは義村君と平成名刀会へご挨拶と、7月18日から27日までの青龍の会に出品させてもらう短刀を届けに行ってきました。平成名刀会でも日刀保や展覧会をめぐる四方山話をしましたが、それほど景気が良くない昨今、私達刀鍛冶は勿論、業界全般に面白くない話題が多く、なんともお寒い話ばかりになってしまいました。

 でも、ついでに、出来たての今年後半のカレンダーを少し置いてきましたので、今なら「ただ」ででもらえると思います。それから、青龍の会でもカレンダーを置かせてもらおうと思っていますので、ちょっと刀を買いに行ったついでに、もらってやって下さい。こちらは景気よくぱ〜〜と、先着100枚くらいはおくばり出来ると思います。

 まあ初日はこんな事で、恒例の一門会の宴会も無く、後は寂しく一人でいつもの飲み屋さんで酔っぱらって一日を終えました。

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