平成18年6月9日 中学生の弟子入り 2006

 今年も兵庫県の恒例行事、中学生のトライアルウイークが行われました。兵庫県ではトライヤルウイークと云っていますが、他の都道府県では同じ様な事が行われているのでしょうか? ご存じない人の為に少しトライアルウイークの説明をしておきますが、これは、中学2年生が一週間、地元の事業所へ仕事をしに行く制度で、最近よく行われるインターンシップの中学生版みたいなものですね。これは単なる職場見学ではなく、実際にその職場で仕事のお手伝いをして、仕事の現場で仕事の厳しさや社会の仕組みを学ぶのだそうです。職種は中学生自身が希望を出して、学校などが各事業所に受け入れの交渉をしている様です。行き先は会社の事務所や製造現場、病院やスーパーからJRの駅や消防署に至るまで様々です。そんな中、今年も鍛冶屋をやってみたいと云う変わり者の中学生が二人現れました。そんな訳で6月5日の月曜日から9日の金曜日までの5日間、二人の中学生のミニ弟子入りが行われたわけです。

 私はどんな仕事でも下仕事が大切だと云う事を分かってもらう為に、例年、炭切りをさせる事にしています。それも朝の出勤時から夕方帰るまで、まるまる二日、ただただ炭ばかり切らせます。私は最初の二日間は出張のため家を空けていましたので、弟子に炭切りのやり方を教えてもらいましたが、大人の刀鍛冶志願者でも生半可な気持ちでくる連中は、三日も炭を切れば飽きてしまい辞める輩もいます。今年の中学生も二日目の夕方にはかなり飽きていたそうですが、仕事の内容は事前に打ち合わせてあったので、三日目の朝には鍛冶仕事をするつもりで、とても元気にやってきました。

 
元気に鍛冶仕事をする中学生たち

 鍛冶仕事の方は、今年から小刀の形を工夫して少し作りやすくなったとはいえ、例年通りの本格的な刃物作りをやってもらいました。地鉄に鋼を貼付け、火造りをしてゆきます。でも上の写真を見て今年の異変に気が付きませんか? 右側の子は女の子なのです。しかも鍛冶仕事をやらせると、筋が良いと言うのか鎚の使い方が最初からとても上手いのです。これには皆あきれてしまいました。この話が有った時に、片方が女の子だと云う事で火傷や怪我が心配で、しかも鍛冶仕事は力が無いとできない仕事ですから断ろうと思ったのですが、本人の強い希望と云う事で受け入れました。でもこれで納得です。やはり今は女性の時代なんですね。昔なら鍛冶場に女性が入る事すら禁じられていたのですからね。

 仕事は更に生仕上げ、焼き入れ、と二日足らずで順調に進みましたので、二日目の残りの時間は荒研ぎをする事になりました。


焼きの入った小刀を研ぐ真衣さん

 今の子供は(いや大人もでしょう)砥石で刃物を研ぐ事など殆どありませんから、今度は砥石で手の皮を研いでしまったり、指を切ったりで、絆創膏を貼りながらの大奮闘です。それでも仕上げの砥石まで使い研ぎ上げた小刀はヒゲが剃れるほどの切れ味になりました。


鞘を削る和範君

 更に時間が少し余ったので、最後の日は出来たての小刀に鞘を作る事にしました。半日ばかり頑張ってちょっとイカシタ鞘が出来上がりました。


上が真衣さん 下が和範君の作品

 いつも思うのですが、子供は物作りに熱中すると、とても凄い力を発揮します。それは本来、人の持っている能力なのでしょうが、大人になって物や道具を作れない人は沢山います。その人達はきっと子供の時に物を作る習慣が無かった為に、その能力が消え失せてしまったのでしょう。今はお金さえ出せば何でも手に入りますからね。でも私は、物や道具を作ると云う事は人類の文化その物だと思うのです。特に日本人は物を作る事に関しては優れた民族だったはずです。この大事な部分を今の日本の様に、ないがしろにして良いのでしょうかね?

家でも、学校でも、もっと物を作らせましょう!!
物を作っている子供達はとても楽しそうですよ!!

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