寸延(すんのび)短刀

南北朝時代に出現した短刀の姿で、重(かさね=厚みのこと)が薄く身巾が広く寸が延びるのが特徴です。又この短刀には信仰の対象として、不動明王を表わす梵字と不動明王の持つ剣が図案化して彫ってあります。

刃長 32.4cm 反り 0.4cm 元幅 3.2cm 元重 0.6cm

切先の部分の拡大

白っぽい刃の部分と黒っぽい地の部分の境目に、白く輝く帯状の部分がありますが、これを匂口(においくち)といいます。この匂口のかたちを刃文といい、その形には刀の作られた時代や流派により特徴があります。又、「たたら場」や「鍛冶工房」で逐次説明していきますが、古い時代の刀剣は材料の地鉄が不均一であったり、介在物が残っているため、精密に研磨すると、地肌に木を削ったときに現われる木目のような模様や、刃文にからむ変化が現われます。これが古い時代の刀の大きな特徴の一つです。

中程の刃文の部分の拡大

「鍛冶工房」の焼入れの部分で詳しく説明しますが、刃文は焼入れの際、刀身に塗る土や焼入れ温度の関係で色々な形になって現われますが、材料の地鉄にも大きく影響を受け、上の写真の様に雲のたなびく様な又、墨を流した様な模様が現われます。こういった不思議な模様が現われることが、世界的に見て特異な鉄の工芸品「日本刀」の大きな特徴の一つなのです。

元の部分の拡大

地肌に木の肌のような杢目や板目が現われています。刀は鋼で出来ていますが、身の回りにある現在の鉄に比べると趣がまったく異なり、いくら眺めても飽きない面白みがあります。

茎の拡大

茎(なかご)とは柄に入る部分です。この部分は鑢で仕上げて作者の銘(めい)を切ります。刀鍛冶の流派や刀鍛冶個人の特徴がもっともよく現われる部分の一つです。銘は古い刀のほとんど、又、現在作られている刀のすべてに作られた年期とともに切られています。

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