一人一人が自立した人間となり、「日本一」の野球部を目指す。
見る人全てに夢と希望と感動を与える活動・プレーを心がける。
高校野球は他の高校スポーツとは違って世間から大きく注目されている。春や夏の甲子園では全試合テレビ中継をされ、新聞にも大きく取り上げられている。甲子園での選手のプレーを見て甲子園への夢を見る小中学生、また私たちであってもプレーを見て感動を覚えることが多くある。では、甲子園でのレベルの高い戦いだから我々は感動するのだろうか。
人間は、人の一生懸命な姿に感動するのである。それは甲子園であっても練習試合であっても変わらない。毎日の練習や試合を見ることのある吹田高校生や教職員、保護者、OB、地域の方々などに、我々が一生懸命プレーする事によって同じく「夢や感動」を与えられるのではないか。そんな野球部を目指すからこそ、誰からも愛され、応援されるチームになると考える。
「他人依存」ではなく「自力達成」の精神で行動する。
監督やコーチ、OBが自分の技術を向上させてくれるのではない。全ては自分の努力しかないのである。「誰かが何とかしてくれる」という「他人依存」の意識ではなくて、「自分で何とかする」という「自力達成」の意識が自らを向上させるためには必要不可欠である。どんな時も積極的に自ら行動できるような意識作りが必要である。
上記の基本理念の実現のために以下に3つの行動指針を挙げる。
1.【態度の向上】
野球だけでなく、学校生活や今後の人生に役立つ態度の向上を目指す。
高校野球はあくまで教育の中に位置づけられるものであって、それを忘れてはいけない。野球が上手いだけでは、たとえ甲子園に出場したとしても社会に出れば通用しないのである。グラウンドで一生懸命練習することは当たり前であるが、授業を疎かにするなどと、野球と学校生活や私生活の態度を変えてはいけない。どんな時も一生懸命、素直に謙虚に行動できる態度を育成するために、以下に5つの具体的行動指針を定める。
A.野球部員である前に他の生徒の見本となるような立派な吹田高校生となる。
学校の目的の1番は勉強をすることである。それを疎かにして野球を1番に考えてしまう者が多い。授業を疎かにせずに真面目に取り組んだ者のみがグラウンドに立つ資格を有する。服装・態度・行動のどれをとっても一目置かれるような存在でないといけない。1人1人が伝統ある吹田高校野球部員としての自覚を持ち、他の生徒に流されることなく学校生活を送ることが、吹田高校が変わるきっかけにもなる。
B.グラウンドでは「自分のしなければいけないこと」「自分ができること」に全力 を注ぐ。
どんな人間にも1日は24時間しか与えられていない。その中でグラウンドで練習できるのは3時間程度である。甲子園に出場するチームでも1日に3時間程度しかグラウンドを使えない所も多くある。条件が同じなのになぜ差が出るのか。それは練習の質、時間の使い方に大きな差が出る。甲子園出場を狙うチームの3時間の練習と、ただ単に練習をこなしているチームの3時間の練習では同じ3時間の練習であっても大きな質の差が生まれる。3時間しか使えない貴重な練習時間を疎かにすることは絶対に許されない。
C.時間や提出物の期限を厳守し、時を守る。
遅刻をすることで他人に迷惑がかかり、遅刻をすると信用を失う。また、心に隙や油断があるから遅刻という結果になる。心に隙や油断があると、それは怪我や事故につながる。提出物も早めに準備に取り掛かって期限間近になってあせらないようにする。「時」をしっかりと意識して行動しなければいけない。
D.身の回りの整理整頓、履物や道具を揃え、場を清める。
身の回りが整理されていないと自然と心が荒んでいく。身の回りを整理し、履物や道具を揃えることで自らの心はきれいになる(ブロークンウインドー理論)また、整理したり揃えようとすることで、様々なところに気づく力が高められる。結果としてこれが上達に影響する。自分の活動する「場」に常に気を配らなくてはいけない。
E.挨拶や返事は明るく・はっきりと・大きな声で。そして自分からの挨拶を心 がけ、礼を正す。
挨拶や返事などは野球だけでなく社会生活においても基本となる。相手より早く挨拶をすることは、相手より先に気づかないといけないので、気づく力が高まる。元気に・明るく・はっきりと挨拶や返事を行うことで、自分(たち)の印象が良くなり、応援してもらえる人(チーム)になる。どんな相手に対しても「礼」を正す意識を持たなくてはいけない。
2.【価値観の向上】
自分を成長させるのは自分。何事も自らやる気を高め、自らの意思決定で行い、自らの行動に責任を持つような価値観を育てる。
指導者がいくら高度な技術を教えても、選手が「やる気」を持たなければそれを身につけることはできない。ではそのやる気はどのようにしたら出るのだろうか。それは明確な「目標設定」である。その目標も指導者から与えられたものではなく、自分自身が考え出したものではならない。そしてその目標に基づき、自らの意思で行動できてこそ、野球だけでなく人間として成長することができる。野球以外の全てのことに言えることだが、自分を成長させるのは自分以外誰もいない。自らの行っている事に自ら価値観を見つけて行動できる能力を育成するために、以下に5つの具体的行動指針を定める。
A.なぜ野球をしているのか、野球で何をしたいのか、原点に立ち戻り、未来への夢や目標を明確に持つ。
野球を始めたばかりの時は、どのような気持ちだっただろうか。練習が楽しくて、待ち遠しくてしかたなかったのではないだろうか。そして現在はどうだろうか。半ば義務感を感じながら練習をしていないだろうか。誰もが持つ「野球が好き」という原点を思い出して練習に励み、それをモチベーションにして目標を設定し、努力を重ねれば結果はついてくる。
B.野球日誌を毎日書き、自分の現状と課題点を認識し、未来の目標達成に向けて心を整理する。
目的は「その日に自分が出来た事と出来なかった事を仕分けして、翌日の目標を立てて記入することで1日の自分の行動を反省し、翌日に1ミリでも成長できるようにする」という事を目標とする。人間は「書く」ことで思考を強化していく。書かないと極端な話、目標を忘れてしまう。毎日のノート記入を継続することで、常に自分の状態を把握し、心を整理しなくてはいけない。
C.「守・破・離」の原理原則を守って行動する。
「守」とは、まず教えてもらった事に忠実に練習するというステージ。「破」とは、教えてもらった事を自分なりにアレンジして練習するというステージ。「離」とは、教えから離れて自分オリジナルの技術を身につけるステージ。この原理原則から外れると技術は向上しない。まずは「守」の指導者からの教えを守って練習することから始める必要がある。
D.常にベクトルを自分に向ける。「主体変容」まずは自分が変わること。
周囲が変わらない、環境が変わらないと愚痴をこぼす前に「自分が変わる」という考えを持つべきである。「主体変容」とは、「自分である主体が変わる(=変容)ことで、周りを変えられる」という意味である。社会ではリーダーにこの主体変容が求められている。悪い結果が出た時、その原因を他者にではなく自分にあると考えて変わろうと努力する。チームの一人ひとりがこの考えを持ち、行動することができれば、この吹田高校野球部は大きく変わることができると確信する。
E.常に感謝の気持ちを持ち、他人の為の事であっても全力で取り組める豊かな心を育む。
経済的な理由で野球をしたくてもできない人達もいる。「野球ができる」という事を当たり前のように考えてはいけない。保護者や地域の方々、OBや指導者などその他大勢の人々の協力の元で吹田高校硬式野球部は成り立っている。その全ての方々に感謝の気持ちを持ち続けなければいけない。また、野球というスポーツはチームプレーである。お互いが助け合って初めて1つの勝利を手にすることができる。「情けは人の為にならず」1人の問題は全員の問題と考えて、助け合わなければならない。
3.【野球技術の向上】
心・技・体のどれもが欠ける事無くバランスよく向上させる。
野球の技術やトレーニング方法などは一昔前には無かった事が常識となるように日々進化していっている。常にアンテナを張り巡らせ、自分の能力を向上させる可能性のあるものは積極的に取り入れていく姿勢が大事である。また、試合で結果を残すためには「心・技・体」の全てをバランスよく鍛えなければならない。ここでは5つの具体的行動指針を示し、吹田高校野球部の練習の基礎とする。
A.メンタルトレーニングを実施して心(メンタル面)の強化を図る。(心)
詳しくは「MENTAL TRAINING PROGRAM」に書いてあるのでそちらを参考にする事。1流選手ほど「心」の部分のトレーニングを重視する。2流3流の選手は『技・体』を重視して「心」のトレーニングを行わないので、能力があっても試合で実力が発揮できない。専門家のサポートを含め、メンタル面の強化を最重要課題とする。
B.言葉の力を理解して有効に活用する。(心)
言葉には大きな力がある。何気ない一言が人を傷つけたり勇気付けたりする。そして試合の流れを左右することも多くある。言葉には「意味のない言葉」と「意味のある言葉」がある。前者はただ単に練習中などに出している言葉。これには全く意味がなく、無駄で疲れるだけである。後者は「状況に応じてその時に必要な事を考えて発する言葉」と言うことになり、指示や確認の声になる。どんな時も常に考えて言葉を有効に使うことが上達や勝利につながる。
C.技術向上は個人の意識次第。正しい努力で最高の成果を引き出す。(技)
学校での練習時間は限られている。技術を伸ばすには、練習時間以外の部分でどれだけ努力できるかにかかっている。例えば一流選手で素振りをしない、遊びまわるような選手がいるであろうか。また、間違ったフォームなどで素振りを繰り返しても間違ったフォームしか身につかない。下手になる練習をしていることになる。指導者に自らチェックを依頼するなどして、正しい努力をする必要がある。
D.基礎基本の徹底反復。当たり前のプレーが当たり前にできるチームが最後は勝つ。(技)
甲子園に出るチームの選手と自分たちは何が違うのだろうか。もちろん身体能力などは大きく違ったりするが、彼らだってエラーはする。しかし送球ミスや基礎を忘れたようなプレーを殆んどしないのが大きな違いではないだろうか。野球の基礎基本と言われているものを徹底反復して身につけ、それをしっかりと行う事ができれば試合になっても簡単に負けることはない。この基礎基本を疎かにして発展的な技術を身につけようとしても、それは形だけのもので終わってしまう。基礎基本を「守・破・離」の原理原則によって身につけることが、勝利に直結する。
E.体という茶碗の中に心・技という米が入る。茶碗を大きくする事に努める(体)
プロ選手並みの技術を持っていたとしても、体力が無ければ酷暑の夏の大会でその技術を発揮することができないし、怪我をしてしまっても同様の事である。技術をつけようと思っても、体力が無ければ練習についていくことができない。それだけ「体」の部分の重要性は大きい。「体という茶碗」を大きくすることは簡単ではないし、苦痛も大きい。しかしそれを大きくできたものが、さらなる成長を得ることができる。