タイ国での「S-cable」特別セミナーの記録 
"S-cable" in Thailand

  

1."S-cable" in Thailand までの道のり
特別セミナー記念写真

図1  タイ国IPSTでの特別セミナー記念写真

  今回の講座は,2007年5月22日,大隅紀和先生(コーディネーター)からのe-mailでの非公式打診から始まりました。

  内容は,タイ国 「IPST」(The Institute for the Promotion of Teaching Science and Technologyの略で,日本語では「教育省・タイ国科学技術教育振興研究所」,タイ国教育省の理・数・技術科を統括しています)で,「パスカル電線」の製作および実験紹介の特別セミナーをしてほしい‥という招請です。

  勤務先以外での「パスカル電線」の講座経験はなく,しかも海外となると雲をつかむような状況で,自信も現実感もありません。そこで,「出張許可が出れば考えます。」と曖昧なまま先延ばしにしておいたら,教育長決済も下り,一挙に現実化しました。費用のすべてはIPST負担ですから当然の帰結ということです。また,当初,10〜12月頃の予定が9月初旬に早まり,さあ大変,当日まで3ケ月余り,しかも,多忙な夏季事業を控えてというのは厳しい!

  セミナーの詳細は意外なもので,驚かされました。各地から選抜した若い優秀な中・高等学校の先生29名を対象とした2泊3日の日程で,さらに,これを機会にパスカル電線を製品化し,タイ国内だけでなく近隣諸国へも広めたいというのです。その関係で,使用権についての私の意向,世界で通用する名称への変更依頼もありました。
  結果,使用権は「無償提供」させていただき,名称は提案していただいた「S-cable」になりました。
(「S」は,”Supecial””Super”,そして”Sugihara”の頭文字を指すそうで,ありがたいことです。)
  また,IPSTの職員対象の教材紹介をしてほしい‥という依頼もありました。

  この事業は,「日本の”東レ理科教育賞”を受賞した先生を招く。」という,Prof.Dr.Surin所長の発案で具体化したものです。タイ国の理科教育への並々ならぬ思いと期待が込められていることは間違いありません。なお,所長は,日本で学位を取得されており,「タイ国東レ科学財団」理事という要職で,中・高校の先生たちの理科教育賞への応募を増やしたいという意図もあるようです。もちろん,タイ国の「東レ科学財団」も,日本の「東レ科学振興会」もご存知の事業です。

  このような,詳細が明らかになるにつれ,当然ながら気が重くなります。しかし,この特別セミナーによって「S-cable」の認知度が大きなものになるのは間違いなく,嬉しいことです。

  製作用の「S-cableキット」の準備は,IPSTがしてくれますが,さまざまな関連器具や部品は送付の必要があります。また,「S-cableテキスト」も必要になります。長い文章となっている日本語テキストの英訳は難しいので,ほとんどを図に置き換えることにしました。結果,今までで最高にわかりやすいテキストになりました。IPSTの職員対象の教材選択も悩みました。わざわざ持参して,「知ってます!」となると申し訳ありません。そうなると”オリジナル教材!”‥国境を越えて生かせるのは,オリジナルだけです。とにかく多忙な準備作業でしたが,気持ちの良いものでした。

  7月24日,25日,IPSTの大隅先生が公務として帰国され,わざわざ勤務先を訪問されました。詳細を打ち合わせましたが,その時,「IPST製の素敵なS-cable」を持参いただき,嬉しいことでした。ただ,線径が0.34mm2であり,日本の規格である0.3mm2より太いのです。国によって,工業規格が違うようです。どうしようかと不安がよぎりましたが,返って優れています。15V電源で7mまで可能となるからです。

2.S-cable in Thailand


2007年9月9日(日)「タイ国へ出発」   不安でいっぱいなのに,こんなにもわくわくする出発とは,何とも不思議なものです。朝6時20分に家を出ると,京都駅から,予定より1本前の「はるか5号(6:46発)」に乗れました。関西国際空港で,タイ航空のTG623便に搭乗,タイ国Suvarnabhumi Airportに着いたのは,15時35分です(2時間の時差で,日本では17時35分となります)。手荷物の中の大半は,一般の方には理解しにくい実験道具(京都NHKから預かったビデオカメラもあります)です。中を調べられたらどう説明しよう!,そんなことより忘れ物はないか?,受け入れ側の事業規模を考えると,絶対に失敗は許されません。機内ではシナリオを考え続けていましたが,日本語→英語→タイ語の通訳の手間と進行の時間調整はどうなるのか?‥とにかく,未知の要素が多過ぎ(-_-;)
関空

図2  関西国際空港での搭乗タイ航空機
Suvarnabhumi Airport1

図3  タイ国Suvarnabhumi Airport
Suvarnabhumi Airport2

図4  タイ国Suvarnabhumi Airport


  Suvarnabhumi Airportは,成田の7倍という巨大なハブ空港で,どこをどう進んだらよいのか不安なことです。Iimmigrationを無事通過し,『杉原先生』というプラカードを持った出迎えの大隅先生を見つけ,ほっとしました。車は,速度表示のない道路を猛スピードで走行し,招請していただいたIPSTに向いました。

セミナー会場正面

図5  セミナー会場の正面


  IPSTは,いくつもの建物からなっていて,かなり大きな施設のようです。
セミナー会場に入ると,正面の舞台の壁に

「Japan Toray Science Foundation Winner Mr.Sugihara's Special Seminar on S-cable」

と書いた大きな紙が貼られています。何ともいえないプレッシャーを感じます。
  まずは,郵送した荷物を見つけ,すぐに開梱しました。破損はなく,ほっとしました。
具体的な準備は明日とし,IPSTを後にしました。

IPST1

図6  IPST
IPST2

図7  IPST
IPST3

図8  IPST図書館


  IPSTの車で宿泊先のAriston Hotelへ向う頃,少し暗くなってきました。夕食は,日本人経営の日本食‥タイ国に来たのだからタイ料理が当然ともいえますが,観光ではない出張旅行ですから,ほっとします。
※IPSTはBTS(高架鉄道)のEKKAMAI駅の南西にあり,ホテルは2駅西のPHROM PHONG駅の近くにあり,便利なロケーションです。もっとも,すべて,IPSTの車(車内の芳香剤が驚くべきものでした:後述)での送迎となります。
hotel1

図9  ホテル正面
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図10  部屋の窓から見る早朝
時差の関係で2時間早い4時30分に目覚める!
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図11  近所のビル

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図12  近所の公園
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図13  近所のデパート
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図14  近所の屋台



2007年9月10日(月)「講座準備」   8時15分,出迎えの車でホテルを出発,9時にIPSTに到着。大隅先生のオフィスで打ち合わせ後,セミナーの準備です。いちばん心配だったのが,日本のPower Pointで作成したファイルが作動するかどうかです。タイ国のパソコンを立ち上げると,当然のことながら英語のみ,しかも,アイコンやメニューの配置が違っています。しかし,ファイルは無事に開き,ほっとしました。ほとんど英語に変換していましたが,いくつか残った日本語も表示されています。日本語Fontを持っていないのに不思議なことです。しかし,当然のことながら,その部分の編集はできません。
  昼食は,大隅先生,気さくな副所長とタイ風ヤキソバ‥甘口で食べやすい。
歓迎夕食会

図15  Pro. Dr. Surin所長らと歓迎夕食会


  午後は,引き続きセミナーの準備。「IPST製S-cableキット」は,発泡プラスチックの白い本体で,素敵なものです。大変だったのは,私の実験準備‥頼んでおいた機材で,同じように実験できないのです。ようやく何とかなりましたが,救ってくれたのは優秀なスタッフでした。

  6時からは,Pro. Dr. Surin所長らを囲んでの歓迎夕食会。今まで見たことのない大きなホテルで,世界中の料理が並んでいます。しかし,慣れない緊張とともに明日からのセミナーも気になって,落ち着いて食べることはできません。もったいないことです。

  選挙で選ばれたという所長は,とても感じがよい紳士で,日本に留学していたこともあって日本語が堪能です。理科系の方なので,その事を意識して選び抜いたお土産 「蘭引」 を手渡し,「日本でも極めて珍しく,タイ国にはないはず!?」と説明しました。岐阜県にあるエーザイの「内藤記念くすり博物館」で購入したものです。なお,職員用には,京菓子をお土産としました。



2007年9月11日(火)「特別セミナー1日目」
昼食会

図16  Surin所長,青木社長らと昼食


  8時,出迎えの車でホテルを出発,IPSTに到着後,午前中はセミナーの準備作業の継続です。
  タイムスケジュールを考えると,「S-cableキット」の完成度を,もう少し上げておくべきだと考えていました。そこで,板の接着をスタッフに依頼すると,二塩化エチレンで簡単にできてしまいました。ベニヤ素材の私の作なら,両面テープか木工用ボンドとなり,手間と時間がかかります。すごいなあと思いました。時間に余裕ができたので,パーツパネルも,スタッフにネジ留めしてもらいました。結局,参加者は,はんだ付け作業のみとなりましたが,これが正解でした。

  昼食は,Pro. Dr. Surin所長,副所長らほか,タイ東レの青木社長や取締役,通訳の秘書らを交えてのものとなりました。それぞれが,そうそうたる面々であることはよくわかります。嬉しいことですが,期待の大きさを感じ,どんどんと気が重くなっていきます。



スリン所長挨拶
  
図17  Pro. Dr. Surin所長挨拶
青木社長挨拶
 
図18  タイ東レ青木社長挨拶


  午後1時からOpening Ceremony,Pro. Dr. Surin所長やタイ東レ青木社長らの挨拶の後,張り詰めた空気の中,セミナーが始まりました。
セミナー1

図19  S-cableセミナー


  最初は「天然磁石」の提示,「裏表NSの円形フェライト磁石」のNS極の決定方法など,知ってるようで知らない?基礎事項から始めました。これは,賭けに近い気持ちでのオープニング実験でした。もしタイ国での常識事項なら座が白け,大失敗です。

  結果,日本と同じで,どなたもご存じないようです。これで,こちらのペースに引き込めたと安堵しました。しかし,その表情は日本と違い,困惑してこわばっているように見えます。どうやら前途多難です。
  S-cableを用いたエルステッドの実験を始めると次第に打ち解け,少し笑顔が出るようになりました。言葉ではなく実験そのもののおもしろさです。
  S-cableに救われたようです。

  最初の実験の後,Power Pointで,S-cableによる「エルステッドの実験」の歴史的意義と今日の科学技術との関連を説明しました。要するに,S-cableは,単なる投げ込み教材でも,おもしろ教材でもなく,本質的な理科教材であるということです。

  Coffee bleak後,「S-cableはんだ付け作業」を始めました。ビデオカメラを担いだタイNHKの取材もあり,雑然としながらも日本と変わらない楽しい雰囲気のセミナーになってきました。作業に手馴れていない先生が多く,80%程度の参加者が完成したところで終了としました。

製作1
  
図20  S-cable製作
製作2
 
図21  S-cable製作
製作3
 
図22  S-cable製作


  夕食は,極めて珍しい展示のあるタイ料理のお店に連れて行ってもらいました。Water mist冷房の緑に包まれた屋外の席でしたが,突然,屋根の下に入るように指示されました。しばらくすると激しいスコール,地元の方は,予知能力があるようです。

2007年9月12日(水)「特別セミナー2日目」   8時,出迎えの車でホテルを出発。IPSTに到着後,「S-cable製作」のお手伝い。9時から,S-cableを用いた鉄粉の実験に始まり,電気ブランコ,電磁誘導,モーターへと,実験→質問→説明を繰り返しながらセミナーを進めました。
  10時15分と午後2時30分の「Coffee bleak」は,結構な習慣で,お互いが休憩と頭の整理ができます。日本では,講師が調子に乗ってくると時間を忘れて無理な進行をすることが多いように思います。こういった間をとる必要性を感じました。

  午後は,参加者による指導案の作成です。私は途中で抜け出し,IPST北隣の「Bangkok Science Museum」を見学しました。サイエンスショーに拍手喝采,プラネタリウムが終わると,これまた拍手喝采,素朴で元気な子供たちです。また,Museumの北隣の教材販売店も見学しました。IPSTとの半官半民の店で,教科書と指導書,授業の参考図書,各種教材が揃っています。日本にはないタイプのお店で,長時間,調査しました。面白そうな理科教材も多かったのですが,タイ語の説明文で,よくわかりません。結局,タイ語の周期表に目をつけただけで帰りました。IPSTで相談すると,周期表を安く買える事を副所長から教えていただき,40枚,注文しました。これが,日本の先生方へのお土産となりました。
関空
  
図23  Bangkok Science Museum
Suvarnabhumi Airport1
 
図24  見学の子供たち
Suvarnabhumi Airport2
 
図25  サイエンスショー

関空
  
図26  屋外の巨大レーリーすだれ
Suvarnabhumi Airport1
 
図27  水族館
Suvarnabhumi Airport2
 
図28  プラネタリウム


  明日の実験準備をしましたが,アンプが不安定で使えません。しかし,優秀なスタッフがいて,基盤から調整し始めました。これなら大丈夫と,任せてホテルへ帰りました。夜は,かなり高価な日本食レストラン‥やはり,ほっとします。

2007年9月13日(木)「特別セミナー3日目」   8時,出迎えの車でホテルを出発。IPSTに到着後,すぐにアンプを点検すると,期待通り見事に安定しています。「S-cable」に音声電流を流して試していると,参加者が次々にやってきて興味深深,こうなると,開始前に見せたくなります。実験のやり方を少し説明すると,自分たちで,どんどんと工夫,発展させていきます。初日とは打って変わった積極性で,表情も生き生きしています。やはり,タイ国の先生も日本の先生も同じであることがわかります。これが,S-cable実験の優れたところです。
  音声電流を用いた実験は,いわば,おまけのおもしろ実験。しかし,直流実験との関連に気付くと,学習を発展的に深めることができます。電流と磁気の関係という原理は同一なのです。

  本日は最終日とあって,一緒に記念撮影に納まって欲しいという依頼殺到,こんなことは初めてで嬉しい悲鳴でした。

音声実験
  
図29  S-cable音声実験
音声実験
 
図30  S-cable音声実験


  音声実験の後,Power Pointで,電磁気教材の現状と「S-cable開発の理由と意義,タイ国でのセミナー教材に選ばれるまでの30年の歩み」を説明しました。そして,参加者に「けしてあきらめない!」というメッセージを伝えて,私の話を終えました。最後は,全員の指導案発表が続き,特別セミナーの終了となりました。

まとめ
  
図31  セミナーのまとめ
発表
 
図32  授業案の発表
終了
 
図33  セミナー終了


  午後は,Closing ceremony。所長らの挨拶の後,「S-cableに関する覚書の調印式」を行いました。IPSTに無償で利用を許可するというものです。なお,大隅先生の提案で「杉原の開発品であることを明記する。」という文言も入っています。覚書を所長と交換した後の割れるような拍手と,皆さんの笑顔は素晴らしいものでした。「ここに来て良かった。」と感じました。

  所長らの挨拶の後,受講者に終了証が手渡されました。受け取っている一人ひとりの笑顔が,とても素敵でした。全員の記念撮影の後,セミナーが終了しました。参加者の方に満足していただいたという自信はありますが,最も嬉しくて満足しているのは間違いなく私ですね‥受講者の皆さんに心から感謝しています。

  メインの講座は終了しましたが,まだ,明日のIPST職員対象の講座があります。タイ国の理科教育の中枢の専門家対象ですから,この方が重荷です。実は,用意した教材の中で,一つだけ,実施すべきかどうか迷っている内容がありました。それが,樟脳ボートです。最近,私が,新たな実験方法を開発したということと,タイはタイガーバームという樟脳製剤が多く使われているということもあって,もし,知られていないのなら意義深い紹介になると考えました。

  副所長に,日本から持っていった樟脳の匂いをかいでもらうと,すぐに持ってきてくれました。なんと,副所長の自動車の芳香剤だったのです。そこで,ようやく気付きました,送迎してもらっている自動車の車内の香りは,樟脳だったのです。日本からE-mailで,タイの樟脳を調べてもらったのですが,「見つからない‥」という返事でした。用途が違ったからのようです。これで,明日の講座は大丈夫だとわかり,ほっとしました。
注:タイ国での樟脳の防虫剤利用については,わかりませんでした。
夕食

図34  大隅先生と夕食


  副所長がタイ語の周期表を手渡してくれました。IPST経由で,ずいぶんと安くしてもらえました。
  後日,この周期表に,日本と違う部分のあることがわかりました。GaもFrもLiquid(液体)と表示されています‥融点が約30℃なので,暑い国情としてはこうなるのでしょう。日本では「常温で液体の金属は水銀だけ!」ということになっていますが,世界で通用しません。しかし,CsはLiquidになっていません!?

  夕方,大隅先生とスーパーマーケットに寄りました。ディスプレイは,日本より上手できれいでした。日本の食材コーナーがあり,なんでも揃うようです。日本の,ある会社のカレールーやビールが入り口に展示され,人気商品であることがわかります。夜は,BTSのTHONGLO駅近くの日本村の料理店に行きました。日本で,これほど美味しい刺身は食べたことがありませんでした。明日は,非常に楽しみな講座であり,精神的な余裕もでてきました。日本のことは,すっかり忘れていましたが,少し気になりだしました。


2007年9月14日(金)「特別セミナー4日目」   8時,出迎えの車でホテルを出発。IPSTに到着すると,副所長が新品の樟脳(カラブーンと言います)を買ってきてくれていました。ぎりぎりのタイミングで,樟脳ボートもテーマにすることができました。9時から開始です。

  会場の会議室は,予定外の参加者も多く,何人かよくわかりません。「タイの水でソーラー電気分解」「タイのレモンで作った1個の電池で豆電球やLEDの点灯」「タイの樟脳で樟脳ボート」「重心こまとアンバランス皿回し」と続きます。樟脳ボートは,広島の理科センターにおられた方が知っていただけでした。最近,開発した安全で簡易な方法を披露しました。
  ハイテクの最新技術ではなく,どちらかというとローテクの「簡単で本質的,応用発展の容易さ」などを意識したものを紹介しました。いずれも興味深深で,あまり説明を要しなくても,自由に楽しんでいただけました。

  昼食は,レストランに移動し,所長らを囲んでの心温まるもので,素敵なお土産をいただきました。午後は,そのまま所長が付き添って,実験の続きを見せ続けることになりました。理科系で,実験好きなのがよくわかります。タイ国は,素晴らしい所長をトップに擁しています。このセミナーを最後に,所長ともIPSTとも,お別れとなりました。

  午後3時にIPSTを後にして,Bangkokの中心街へ行きました。タイシルクのブランドである「JIM TOMPSON」の本店は素敵なところで,いくつかの買い物をしました。多忙な中で,全く期待していなかったお土産もできました。夕食後は,デパート内を見学しました。日本商品の広がりや世界のブランドのランクなどを知ることができました。日本では入手しにくそうな電球や,安価な民芸品など買いたいものがたくさん見つかりました。しかし,既にザックは持ち帰る実験道具で満杯‥買い物好きとしては残念無念でした。


2007年9月15日(土)「BANGKOK市内見学」   IPSTから車と運転手さんを提供していただき,観光見学をさせていただきました。実は,疲れていて気乗りしなかったのですが,大隅先生の案内上手もあって次第に目が冴えてきました。一般的な観光地の見学の後,特に興味深かったのが,The Oriental Bangkok Hotelでした。宿泊客であるハイソな方々のプール遊びの風景,そしてエマニエル婦人が腰掛けた椅子,裏にある泥で濁ったMae Nam Chao Praya川の雄大さなどは,明らかに別世界でした。ホテルを出ると,雑多な文化の入り混じった街角や路地が交互に続き,複雑な社会構造が見えてきます。わずかな見学でしたが,意識の一変する貴重な機会でした。
まとめ
  
図35  タイ国王の記念碑
発表
 
図36  Oriental Bangkok Hotel前
終了
 
図37  Mae Nam Chao Praya川



2007年9月16日(日)「帰国」   朝の日本語新聞に,JICA援助による南北ベトナムを結ぶハイヴァントンネルの完成と関連するダナン港の改良事業の記事を見つけました。疲れを忘れ,ほっとしました。実は,タイに来る時に,機内に表示されたGPS画像が,ベトナムのダナン上空にあることを示していました。ここは,かつて巨大な米軍基地のあったところで,ベトナム反戦世代としては,特別な思いのある地です。日本の地道な努力を嬉しく思いました。また,私も,そういった活動の一端を担えたわけで,胸のつっかえが少し取れた思いです。

  早朝6時30分に迎えが来て,ホテルともお別れです。速度表示のない道を猛スピードで突っ走り,Suvarnabhumi Airportに着きました。タイ航空のチェックインを済ますと,あとは,だだっ広いデパートのような空港内を彷徨うことになります。電光掲示板を見ると,搭乗口が変更になっています。この広さでは,一つ間違うと大変です。残りのタイバーツを使い切って,タイ航空TG620便に搭乗し,マニラのNinoy Aquino International Airport経由で,キラキラ輝く街灯りを見下ろしながら夜の関西国際空港に降り立ちました。行きと違って,関空は小さくてわかりやすいと思いました。税関で,その筒は何ですか?と聞かれました。「周期表」の束ですが,説明しても理解してもらえないでしょう。とっさに,「カレンダーみたいなものです。」と言うと,笑って通してくれました。

フィリピン
  
図38  経由地のNinoy Aquino International Airportから離陸
関空
 
図  夜の関空上空


  JRの駅で出迎えの奥さんを見て,「やはり日本が良い。わが家は,なお良い。」と思いました。
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《SUGIHARA  KAZUO》