「パスカル電線(S-cable)Ver.3」 

  電線着脱版の製作例  

  
★観察実験には専門知識と経験が必要です。本サイトの閲覧は理科教育関係者に限らせていただきます。★
1.はじめに

  「パスカル電線(S-cable)」は,試作段階からコネクターによる着脱構造のものも作っていました。本体の左右端にコネクターを付けた(計2個)完全着脱版で,数種類の長さの電線と交換可能としました。これは,当初,最適な長さがわからなかったからです。つまり,研究用としての着脱構造。

  次第に「6mか9mの長さで良いだろう」ということがわかり,コネクターは「6m版では必要なかろう!」「9m版ではあっても良いな!?」と考えるようになりました。いずれにしても,長さが決まれば両端での完全着脱は不要で(詳細はマニュアル参照),片端着脱だけで利点(以下,参照)を享受できます。微細なはんだ付け作業もほぼ半減し,製作は非常に楽になります。

コネクター着脱の利点は,展開(引き延ばし)と収納がさっと出来,電線のよじれを気にする必要がないことです。要するにスマートなんですね。
・課題1:本体へのコネクター取付作業とはんだ付け箇所が増え,手間である(電子工作に堪能な方にとっては簡単なことだと思います)。更に,クラス実験を意図して複数台作るとなると躊躇させられます。しかし,3台あればクラス全員での同時実験が可能なので,大した手間にはなりません。
・課題2:コネクター着脱構造は接続部で接触不良のリスクがあります。ただ,私はそういった事故を経験していません。

このページは,コネクター着脱版「パスカル電線(S-cable)Ver.3」の製作例を紹介するものです。参考にしていただければ幸いです。

※パスカル電線「S-cable」贈呈希望の方は,こちらのページ→「パスカル電線(S-cable)」概要からご覧ください。
  贈呈版はコネクター着脱できない電線固定版「パスカル電線(S-cable)Ver.2」6mです。



2.「コネクター」の選択

  開発当時,数A程度の電流を流せる10ピンの大型コネクターが普通に入手できました(条件が揃っていました)。選んだのは,以下の2種類です。

旧コネクター1
図1  旧コネクター1
旧コネクター2
図2  旧コネクター2

  どちらのコネクターも次第に入手難,ついにはお店の在庫を買い占めることまでしました。そんな中,パソコン時代となり,Dsubコネクター(D-sub,Dサブともいう)が普及し始めます。これが見事に良くできたコネクターで,ほっとしました。

  従来にない良さは,さまざまなパーツを組み合わせて意図に近い仕様のコネクターにできることです。作りはとてもしっかりしており,各ピンには適度な深さの筒状の穴があってはんだ付け容易,入手も容易(もちろん,電子パーツ店),しかもとてもリーズナブルな価格で驚きます。必要なパーツの組み合わせ選びは少々手間ですが…

  用いるDsubコネクターは9ピンとし,ねじ止めできるように必要なパーツを選びます。下の図を見ると仕組みがわかると思います。なお,ネジはすべてインチ規格のようで,同じ商品棚ですべてのパーツを入手してください。
ヒント:パスカル電線(S-cable)の標準仕様10芯線に合わせるため,Dsubコネクターの本体金属部を利用して10接点とします。こういった使い方はよくあります。



3.電線着脱「パスカル電線(S-cable)Ver.3」9mの製作例

(1)外観
  アルミシャ−シ(180×120×40mm)の右端がコネクター接続部となっています。一端の切り離しだけで,展開(引き延ばし)と収納がとても楽になります。

  上が開いており,厚紙製の蓋が被せてあります。厚紙は下にもう一枚接着してあり,前後左右には動きません。アルミシャ−シと蓋を輪ゴムか紐で縛れば外れません。厚紙蓋は丁寧に塗装し(3度塗り),上には教具名などを印刷した紙をラミネート封入して貼り付けました。

  このようななわずかな手間(デコレーション)で雰囲気が盛り上がります。
「動けばよい」確かにそうなんですが,かっこよく目立つ教材で児童・生徒の興味を引き出すのも理科だと思います。

全景
図3  電線着脱「パスカル電線(S-cable)Ver.3」9m
本体全景
図4  コネクターを挿し込んだ本体部分


  Dsubコネクターの脱着です。図5は外したところ,図6は挿し込んだ後,ねじ留めしています。

本体全景
図5  コネクター部(Dsub9ピン)
コネクター部
図6  コネクターのネジ留め

(2)本体内部(全体)
  端子台を用いて「S-cable結線」の見える化を意図したもので,一目瞭然で原理を理解できる良さがあります。
  見える化によって製作も楽になります。簡単な結線ではありますが,実際の工作では少し悩まされるからです。

・中央の黒い棒状のものは,入手の容易な10ピン端子台(サトーパーツML-3182-10P)です。
・10芯線を一段ずらす「S-cable結線」では「11ピンの端子台」が必要で,1ピン足りません。そのため,左の黒芯線1本だけは直接スイッチピンに接続します。
  (右の赤芯線はコネクターの本体金属部接続ですが,同じくスイッチピンに直接接続してもよい。つまり,端子台は最少「9ピンでも可」となります)   
内部全景
図7  内部全景

内部(手前)
図8  内部(手前から)
内部(後ろから)
図9  内部(後ろから)

(3)本体(部分)と差し込むコネクター内部
  スイッチとコネクターのピンへのはんだ付けは,少し手がかかります。
  はんだ作業の良し悪し(得手不得手)は「はんだごて」の選択にあります。少し高価ですが温度調節機能付(私はgoot PX-338)を用いると簡単に作業でき,驚かされます。

・スイッチとターミナルのはんだ付け部分です。
・入手し易い小型の「2回路2接点(中点OFF)トグルスイッチ」を用いました。最初に「スイッチへビニル電線をはんだ付け」すると後の作業が楽になります。
・図ではビニル電線の接続位置がわかり難くなっています。マニュアルをご覧ください。
穴開け
図10  ビニル電線のはんだ付け

・Dsub9ピンコネクターのはんだ付け部分です。
・細いピンに筒状の穴があり0.3mm2の芯線が入るので,はんだ付けは容易です。
・右端の赤ビニル電線がコネクタの本体金属部を利用した10本目の線となります。
切り込み
図11  コネクターピンのはんだ付け

・10芯ケーブルの固定です。
  しっかりと固定できていないと,回転したり引き抜けたりします。
1:アルミシャーシ穴に電線の傷防止用ゴムブッシュ取付。
2:アンテナ線固定具2個を用い,木の台にケーブルを固定。
  (例:ELPAコードクリップ,アンテナ線5C用)
3:クリップ内面に接着剤塗布,ケーブルをクリップに固定。
  (例:ボンドSUクリア)
4:水糸(綿)で縛り瞬間接着剤含浸,抜け止めとする。
切り落とし
図12  10芯ケーブルの固定

・本体に差し込むコネクター内部です。
・10本目となる赤芯線の処理→コネクターの本体金属部にはんだ付けします。
コネクター内部
図13  コネクター内部


   自由利用マーク  
《SUGIHARA  KAZUO》