…それは、過去か、未来か…

 

 …いや、今は、今でしかない…

 

 

 

「…なにっ!?」

 

 

 唐突に感じる浮遊感…否、落下感に…

 

 

 …ドーーーーーンッッ!! …ガラガラガッシャーーーーーーッッッッンン!!!!

 

 

 …魔力の暴発…それによって巻き起こる破壊が部屋中を駆けめぐる。

 

「…ここは…」

 

 どこかで見たことがある場所…いつか経験したような記憶…そんな駆けめぐる記憶の混乱をデジャヴと呼ぶのなら、そんな記憶の混乱すらデジャヴすることをなんと呼ぶべきなんだろう…

 

 ……タッタッタッタッタッッッ!!!

 

 あせったような足音が、こちらに向かってくる。それすらも懐かしい。

「くっ…」

 言いようのない気分で、瓦礫の上にどっかと腰を下ろす。

 

 カチカチとなる、破壊を免れた柱時計が指し示す時間は午前2時…

 

 …さて、第一声はどんな文句を言うべきだろうか、…そしてそれに、第一声にどんな文句を言われるだろうか…

 こみ上げてくる笑いは、これまでの戦いの中でもなかなかの強敵であり、かみ殺すのは非常に難しい。

 

 …ッドッッカアァァーーーーー!!!!

 

 扉は外側から蹴り破られる。その向こうから現れたのは…

 

 

 

 

 

 

〜そして、物語は始まった〜

 

 

 

 

 

 

「…むー…」

 目の前の少女は、まだ不満そうにしている。そんなところもアレで、苦笑せずにはいられなかった。

「なによっ、笑うんじゃないわよ!!」

 私も含めて、総てのことが大層不満なようで、彼女はがーっと叫んだ。

「いやいや、あまりにもアレだったものでね」

「…んー、まあ起こっちゃったものはしょうがない…うん、反省」

 しかし、すっくと切り替えを行う。本当に、アレだ。

「それで、あなたは何のサーヴァントなの?」

「…さて、何のサーヴァントがお望みかな?」

 ムッとした彼女の視線は、質問に質問を返すなー!!…と言いたげだったが、私は素知らぬ顔をする。

「…そうね、じゃあ質問を変えるわ。ズバリ、あなたはアーチャーなの?」

 彼女はこちらをまっすぐに見つめると、そう聞いてきた。

「…へえ」

「…なによ」

 少し意外な質問であったが、マスターの質問には答えるべきだろう。

「…いや、残念ながらアーチャーではない」

「…そう、まあ、しょうがないか」

 私の答えに大層がっくりとしながら、自分に言い聞かせるように彼女はそう言った。

「こちらからも質問してもいいかな」

「ん、いいわよ、なに?」

「なぜアーチャーがいいんだ? 普通はセイバーを望むものでないのかな」

 私がそう聞くと…

「うちのごーつくばーさんが言ってたんだ。アーチャーを呼びなさいってね」

 …ニッと笑って、彼女はそう答えてきた。

「…そうか」

 

           かりん

「私の名前は”華凛”、遠坂華凛」

 

 そう胸をはって言う少女の瞳は、さあ、そっちも名乗りなさいと言っていた。

 

「私はエミヤ。サーヴァントのクラスは…どうやらアサシンのようだ」

 

「なーに、そのようだっていうのは?」

「私の場合、クラスにあわせて呼ばれるのでなく、呼ばれたクラスにあわせるのでな」

「なに? それじゃあ全部のクラスになれるわけ?」

「確認はしていないが、おそらくライダー以外は全部だな」

 へーっと感心したような表情をする彼女、そんなわかりやすいところも、本当にアレだ。

「もう一つ質問しても良いかな」

「なに?」

「君の望みはなにかな? サーヴァントとしてマスターの望みは知っておきたいのでな」

 私がそう聞くと、彼女はんーっと少し考えると…

「特にはない…かな」

「…そうか」

 そんなところもアレだったため、少し笑ってしまう。

「あー、でも強いてあげるなら…」

「なんだ?」

”黄金律”かな」

 ニパッと笑うと、そんなことを言いやがりましたよ…

 

「…アーチャーを呼べって…あっちのことじゃないだろうな…」

 

 頭に浮かんだ赤い小悪魔に対して、思わず突っ込みを入れる。

 …そして、まだ大事なことを聞いてなかったことを思い出す。

「…それで、そのごうつく婆さんはどうしてるんだ」

「ん…」

 彼女はなんでもないことのように…そんな風に…

 

「…死んじゃった、三ヶ月前に…ね」

 

 …そう言った。言葉よりも雄弁な視線はこちらを向けないままで…

「…そう、か」

「んー、なんというかさ、最後の最後で、やっちゃう人だったんだ」

 彼女は明後日の方向を見つめたまま、言葉を続ける。

「まったく、ほんっとに、にくったらしいばーさんだったくせにさ、最後の最後がアレでさ、私、憎めなかったんだよなあ。

 …だから、はばかり損ねちゃうんだよね」

 それは、きっと彼女の本心だったんだろう。なんともらしい表現で、なんともらしい彼女を言い表してくれた。

「…ん…

 …そうか、ありがとう、華凛。私からの質問は以上だ」

「…そう? じゃあ、こちらからも質問!」

 彼女は視線をまっすぐとこちらにあわせると…

「名前、教えて」

 …ただそう聞いてきた。

「…やれやれ、その年で痴呆か、華凛。さっき名乗っただろう、私の名前はエミヤだ」

「むっ! しつれーね、ぼけてなんかないわよ!」

「なら…」

「だから、私は名前を聞いてるんじゃない! …それとも、私のことを名前で呼んでいて、自分は呼ばせないつもり?」

 

「…やれやれ…ほんとに…」

 

 フフンと仁王立ちする彼女と…

 

「シロウだ。…俺の名前は、衛宮士郎だよ」

 

 

「よろしく、士郎!」

 

 

 …握手を交わすのだった。

 

 

 

 

 

 

  Story has begun again...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

 これから連載が始まっちゃいそうな勢いの、短編SSっすw

 書いてて結構楽しかったですw

 

 

 

 

 

 


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