interlude X-1
「…!!」
赤…
赤い空…
一面の赤い空気が教えてくれる…
「…兄さん…」
弓道場にたたずんでいた少女は、左腕をかかえるようにしてつぶやく。
少女は知っていた、それがなんなのか、それを起こしたのが誰なのか、そして、自分がどうかかわっているかということも。
ただわからないのは…
…自分がどうすればいいか…ということだけだった。
「えっ!?」
唐突に起こる喪失感。
とっさに見る左手には…
「…ライダーが消えたのか?」
少女はその声にびくっと震える。
少女が驚いたのはその言葉が事実だったからではない。ただ…なぜ自分にそれを告げるのかということだった。
「…あ、アーチャー…」
少女が振り向いた先にいたのは、赤い外套を纏った騎士…アーチャーであった。
だが、おかしい。なにかが、おかしい。それは…
「…槍?」
そう、それがおかしい、だって、ランサーじゃない、アーチャーなんだから、持っているのは弓でないと…
トスッ…
「えっ?」
混乱はどこまでも深まる…ただ、呆然と自分の胸にささった槍の穂先を眺めて、不思議そうな表情を浮かべるしかなかった。
「悪いな、少々痛いが、我慢してくれ」
その言葉の意味がわからない。だって、槍で刺されているのだ。その穂先は心臓を貫いているのだ。
…少々痛いですむはずがないのだから…
「”聖なる復讐の槍(ロンギヌス)”」
弓の騎士が、その槍の真名をつげる。
バシュッ!!
思い出したかのように鮮血が吹き出る。
心臓を槍で突き刺されたのだ、それは致命傷であるはずだ。だが、少女にはわかった。その鮮血は、少女の中にあった虫達であったということに。
ゆっくりとくずれ落ちる少女の瞳にうつったものは…
「…すまなかったな、さくら…」
…沈痛な表情を浮かべて謝罪する、少年の顔だった。
それは、なんに対する謝罪だったのだろうか?
「…せ、せん…ぱい……」
自分を支えるように抱える赤い騎士に、少女はそう言い残して気を失った。
騎士は、そっと少女を道場に横たえさせる。
それは、かつて見殺しにしたものへの、精一杯の懺悔…否、かつての自分への復讐の一つに過ぎなかった。
「行くか…」
目的の一つは達した。残すは…
interlude out
後書き
まあ、なんというか、自分内補完っすw
凛シナリオでアーチャーが遅れていた間、なにをしていたかみたいな感じです。
須達龍也的には、アーチャーになるのは桜シナリオで、桜を見捨てて聖杯戦争を勝ち残った士郎だと思ってますから。
まあ、それだけのあまり内容のないSSですけどねえw
あ、下のはなんとなく、趣味でw
宝具
”聖なる復讐の槍(ロンギヌス)”
十字架にかけられた聖者をついたとされる槍。
白い柄に、真紅の穂先を持つ。それはいまだに流れ落ちる聖者の血である。
アーサー王伝説の中には、復讐の槍の名で登場する。
この槍の効力は、肉体には及ばず、ただ魔を払うものである。
よって、人間に対してはまったく効果がなく、逆に霊体には致命の一撃となる。魔術師が相手の場合は、その魔術回路を完全に破壊する。
ランク:A+
種別:対人法具
レンジ:2〜4