「……んっ、…こ、ここはどこだ?」

 突然、見知らぬ場所に放り出されたかのように、青年は辺りをうかがう。

「…闘技場?」

 そこは、記憶にある場所でもっとも似ている場所でいうなら、ローマにあるコロッセウムのようだった。

 半径50メートルほどの石畳の広場は、高さ3メートルほどの石壁に囲われ、その向こうには観客席らしきものが十重二十重で取り囲んでいた。

「なぜ、こんなところに?」

 ここがどこか以上に、青年を悩ませていたのはそれであったろう。

 

「…やっとここまで来れたね、恭也」

 

 青年…高町恭也の質問に答えるためであろうか、謎めいた言葉とともに一人の美少女がそこへさっそうと現れるのだった。

「し、忍…これは、一体?」

 恭也は、美少女…私、月村忍を救いの女神のように見上げ、そう聞いてきた。

「…私たちは、幾多の苦難を乗り越えて、ついにこの地に辿り着くことができたのよ」

「…な、なにを言って…って、なんだこの頭の出っ張りは!?」

 普段、憎たらしいくらいに冷静な恭也が、自らの頭のてっぺんについているものに気づき、驚愕の声をあげる。

「…アンテナだよ」

「なっ、なんでそんなものがっ!」

「…ごめん、恭也、詳しい説明をしている暇はなさそう。…大丈夫、私に任せて」

 向こうのゲートから登場してきた二つの影を見つけて、私は武者震いとともに持っているものを握りしめる。

「なっ、なんだ、そのゲームのコントローラーのようなものはっ!!」

「…ついに来たわね、チャンピオンコンビ!!」

「ちょっと待てっ、俺はそんなもので動かされるのかっ! 動くのかっ!!」

 

「…恭ちゃん、…そして忍さん、ついにこの地に辿り着いたのね」

 

 お下げにした黒髪に、凛としたまなざしで、体躯を漆黒の衣装で纏った少女が口を開く。

「…最強の隠しキャラ…ブラックソードダンサー…ミユキ…」

「…み、美由希、そ、そのアンテナ…」

 そう、運命のいたずら…ラスボスのブラックソードダンサー・ミユキは、恭也の妹だったのだ。

「…恭也、つらいけど彼女は洗脳されているの、その洗脳をとくためにも彼女を倒さなくてはいけないの」

「え、えっと…」

 恭也が苦悩の表情を浮かべる。愛する私の頼みとはいえ、恭也にはつらい言葉だ。

「大丈夫、私を信じて」

 

「…ふふっ、とりあえず、よくぞここまで来れたとほめて上げます…」

 

 ブラックソードダンサー・ミユキの背後から、もう一つの影がゆっくり姿をあらわす。

 

「…忍さん、そして、お兄ちゃん…」

 

「なっ、ななな、なのはっ!?」

「出たわね、ゲームマスターりりかるなのは!!」

 見た目にだまされてはいけない、彼女こそがブラックソードダンサー・ミユキを操るマスターなのだ。

 なのはちゃんの黄金の指から繰り出されるコンボは、臨機応変強烈無比、まさにゲームマスターの称号にふさわしい子なのだ。

「…でも、お兄ちゃん達の快進撃もここまでよ、なのはと美由希お姉ちゃんとのコンビは無敵だもん」

 中身が透けて見える、特別製のスケルトン仕様のコントローラーを取り出して、なのはちゃんが不敵に笑う。

「…えっと、なんとなくわかったような気もしないでもないが…」

 恭也も、苦悩の末に結論を出したようだ。

「いくわよっ、恭也!!」

「あ、ああ…」

「こちらも、いくよ、美由希お姉ちゃん!!」

「オッケー、なのは!」

 

「「ソードファイト、レディイイィィ、ゴォーーーーーー!!!!!!!」」

 

 

 

 ……………

 ……

「…しっかり熟睡してるな、これは…」

 自分用のパンとジュース…そして頼まれていたジュースを手に、ため息ともつかない言葉を口にする。

「…しょうがないな、一人で食うか…」

 起こすのもかわいそうだと言わんばかりに、頼まれたものを置いて、とっとと自分の席へと帰るのだった。

 

 

「…ん、…そこ…いけ、きょうや…」

 

 その結果、かわいらしい眠り姫は頭にジュースのパックをのせて、幸せそうに寝言を言うのだった。

 

 

 

ちゃんちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

こっちは未発表分ですね。…できはまあ、うん、短くていいよね(笑)

 

 

 

 

 


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