「……どさ……」

「……かどさま…」

「…御門さま」

 

「おはようございます、御門さま」

「梨葉……か……」

「ご気分はいかがですか?」

 梨葉と呼ばれた少女が、やさしげに微笑みを浮かべてそう聞いた。

「そう……だな。……長い夢でも、見ていたような感じだ」

 ゆっくりと体を起こしながら、御門と呼ばれた青年が少女にそう答えた。

「それはそうでしょうね……

 なにしろ、百年近く眠られましたから」

「なに……そんなにか……?」

「はい。先に目覚めましたもので、外の様子を見に行ったんですが……私も驚きました」

 それほど驚いてもいない様子で、梨葉がそう言った。

 

「…うむ、体のキレが悪いな。…ずっと眠っていたせいか…」

 腕をまわしたり、首をならしながら、御門がつぶやいた。

「…それもありますけど、永い間『精』をとっていないことも原因と思われます」

 梨葉が御門の体を気遣うような目で、そう答えた。

「…そうだな、それもあるな」

「はやく、男の精を受けませんと…」

「うむ…って、へっ?」

「はい?」

「いや、…梨葉、今なんと言った? なんか耳の調子が良くないみたいだ」

 御門はあいまいな笑みを浮かべ、耳を指でほじるような仕草をする。

 

「…ですから、はやく男の精を受けませんと…」

 

「って、なんだそれはー!!! なぜ男だ、女だろ!! そんな女性向けゲームじゃあるまいし!!」

 御門が激しく動揺し、大声で不条理を訴える。

「…そう言われましても、『精』を出しますのは明らかに男なわけですし…」

 梨葉が困りましたという顔で、御門に説明をする。

「いや、そうかもしれんが、そこはお約束だろ! 男とやるなんて、死んでもイヤだぞ!!」

「…御門さま、そうおっしゃられても…それに…」

「…それに?」

 一縷の望みを見出そうとするかのように、御門が身を乗り出して聞く。

 

「…男とやるのではなく、どちらかと言うと、男にやられる方なのですが…」

 

「もっといやじゃーーーーーっっっっ!!!!!!!!!!!!!」

 

 望みをかけていた梨葉のセリフに、文字通りとどめを刺された御門が絶叫を上げる。

「…そういうことなら致し方ありませんな、ワシが力になりましょう」

「って、爺、出るのはやいぞ!!」

「さあ、御門殿」

「やめろ、じい、そんな目で俺を見るなー!!」 

「しょうがないね、御門様、ボクの兄ちゃんを貸してあげるよ!」

「摩矢も出るのはやいーっ!!」

「御門様には摩矢がお世話になってるし」

「やっちゃえ、兄ちゃん!!」

「摩矢ーーー!! オオカミをけしかけるなーー!!!」

 生理的恐怖にかられた御門が、一番そばにいるものにすがりつく。

「御門さま…」

「り、梨葉〜〜、助けてくれ〜〜」

「大丈夫です。梨葉には御門さまの気持ちがちゃんとわかっております」

 すがりつく御門の頭をなでながら、梨葉があやすように優しくそう言った。

「ああ、梨葉〜、梨葉〜〜」

 ほろほろと涙を流しながら、御門はその梨葉の言葉に感動する。

「おやめなさい、あなた達!!」

 御門を背中にかばい、梨葉が毅然と言い放つ。

「うっ、梨葉殿…」

「り、りはちゃん…」

「御門さまの望みをよく理解しなさい!」

 

「御門さまは、宮本さんが好きなんです!!」

 

「ちっがーーーーーうっ!!!!!!」

 

 どきっぱりと言い放った梨葉の言葉を、これまたどきっぱりと御門が否定した。

「照れないで、御門さま、ちゃんと華乃にも話は通してありますから」

「照れてない、通すな、話をっ!!!」

「御門様!!」

「って、華乃かっ!! それも、なんで宮本を連れて来るんだーーっっ!!」

 

「御門殿…」

 爺がじりっと、にじり寄る。

「だいじょーぶだよ、御門様」

「御門様…」

 オオカミの背中で摩矢が、どこかサディスティックな笑顔を浮かべる。

「御門様、宮本くんはちゃんと私が操っておりますので」

 かくかくと動く宮本の後ろで、華乃が無邪気に微笑む。

 

「あっ、あっ、あっ…」

 

 がくがくと動く足で、後ずさる御門の背中が…ふっとやわらかく、やさしく包み込まれる。

「大丈夫ですわ、御門さま…」

「…り、梨葉〜〜〜!!」

 やさしい梨葉の微笑みに、御門は最後の希望を見つける。

 

「…痛いのは、最初だけですから」

 

 …でも、偽物の希望だった。

 

「いやだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!!!!!!」

 

「御門殿…」

「御門様…」

「ミカド…」

 

「あんぎゃあああああああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 ……………

 ……

「……はっっっっ!!!!」

 自らの絶叫で、御門はベッドから跳ね起きた。

「…い、いつもの…ベッドだな…」

 びっしょりとかいた汗を拭いもせずに、御門はそれだけを確認する。

「…どうしましたか、御門さま?」

 御門の絶叫に起こされたようで、どこか寝ぼけた様子で梨葉が、もぞもぞと御門の隣で目をこすりながらたずねる。

「り、梨葉? …梨葉あぁぁ〜〜〜!!!!!」

 御門は威厳も何にもなく、梨葉にすがりつく。

「あらあら、どうされたんですか、御門さま」

 突然のことに驚きながらも、すがりついてくる御門の頭を撫でながら、やさしく梨葉がたずねる。

「うう、こわかった、こわかったよ〜〜。…みんな怖いんだ、ひどいことするんだ…」

 えっくえっくと、マジ泣きで御門は要領の得ない説明をするだけだった。

 

 …本気で怖かったんだなあ…

 

「だいじょうぶ、だいじょうぶですよ、ここには御門さまがこわがるものなんて、なんにもありませんからね」

 御門をやさしくあやしながら、『泣いてる御門さま、かわいい』などと梨葉は思っているのだった。そして…

 

(…でも、啼いてる御門さまも、かわいかったですわ)

 

 …ポッと赤くなりながら、先ほどまで見ていた夢を反芻してたりするのだった。

 

 

 

 

 

……ちゃんちゃん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

 

 なんか知らないけれど、「Choir〜クァイア〜」のSSらしきもの(笑)ができてしまいました。

 それも、世界観を大きく壊す、変なSSだったりするし(笑)

 

 は〜〜、梨葉、か〜〜いい!!(閑話休題)

 

 …というか、御門さま、エライひどい目にあってますが、基本的においらはこういう自分に酔ってるっぽい悲劇の主人公はあまり好きじゃないもので(苦笑)

 ヒロイン達はみんな好きなんですけどね。愛らしくて、けなげで。

 

 今回のSS作成のきっかけは、房中術(基本はそうじゃないのかな?)でお互いの活性を高めるだなんだということですが…印象的に、男は吸い取られてるイメージがどうしても強いのですよ(爆)

 

 とりあえず、女性向けで作ったクァイアならというコンセプトかもしれませんね(笑)

 

 しっかし、おいらのHPでこのSSのせても、誰がわかるかなあ(苦笑)

 新規読者開拓という奴かもしれないな、うん(違うだろ)

 

 ではでは、感想など、どしどし待ってます(どしどしはきっと来ないだろうけどさ(泣))

 

 

 

 

 

 


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