「ほー、いいんじゃないか、おもしろそうで」

 意外なほどあっさりと、おじさんはそう言った。

「じゃあ、OKなんですね?」

 沙織ちゃんが確かめるように聞いた。

「うん。そういうマンガみたいなクラブがあるのは面白いと思うぞ」

 

 …この無責任なおじさんの発言により、「探偵クラブ」が結成されることになった。

 

 そのきっかけとしては昨日にまでさかのぼる。

 

 

 …………

 ……

「…探偵クラブ?」

「そっ!」

 僕のつぶやきに対し、沙織ちゃんはにっこりと笑ってそう言った。

「この学園で起こる事件を、私たちで解決していくのよ」

 沙織ちゃんらしい発想だ。

「ふーん。

 …でも、うちの学校って確か4人以上いないとクラブとして認められないんじゃなかったっけ?」

 僕がそう言うと、我が意を得たりという感じで…

「そう! だから月島さんと藍原さんもさそうつもりだよ。

 それで丁度4人になるでしょ」

 …どーも沙織ちゃんのなかでは、僕が入ることは既に決定事項のようだ。 

「でも、瑠璃子さんはともかく、沙織ちゃんはバレー部に入ってるし、瑞穂ちゃんは生徒会で忙しいんじゃない?」

「そーかな? 大丈夫でしょ、そんなにたくさん事件が起こるとは思えないし…、かけもちでオッケーでしょ」

 

 というわけで…

 

「…うん、いいよ。おもしろそうだね、長瀬ちゃん」

 

「…ええ。いいですよ、祐介さん」

 

 …そんなこんなで意外と簡単に決定し、冒頭へと至るのであった。

 

 

「よかったね、沙織ちゃん。クラブできて」

「うん、祐君……ううん、隊長!」

 沙織ちゃんはにっこり笑うとそう言った。

「隊長?」

 僕がそう聞き返すと…

「うっふっふ。探偵クラブ…名づけて『アストラルバスターズ』の隊長って意味よ」

「あすとらるばすたーず?」

「そう! なんだか語呂がいいっしょ」

 なぜ探偵クラブがアストラルバスターズになるのかがよく分からないけど、沙織ちゃんらしい……かな?

 

 …まあ、それはいいとしても…

 

「…どうして僕が隊長なの?」

「昨日3人で決めたの。…全員一致で決まったよ」

 沙織ちゃんはあっさりと言った。

「…あの、僕の意見とかは…」

「…反対してても、3対1だったよ。民主主義、民主主義」

 …それは数の暴力だと思う…

「……まあいいけど…」

 僕は力なくそうつぶやいた。

 

 

 …………

 ……

「…ここが新しい部室か…」

 ぼくのつぶやきに…

「…っくーー! やっぱ新しい部室ってのはいいよね」

 沙織ちゃんが握り拳をつくって言った。

「…でも、よく簡単に部室をもらえたね」

「うん、なんでも廃部になった部があったみたいで、空いてたみたいよ」

「へー、なんの部だったんだろう?」

 僕のそんなつぶやきに対して…

 

「…オカルト同好会だって…」

 

「うわあっ!」

「きゃあっ!」

 

「…おやおや、驚かせちゃったよ…」

 

 僕たちの背後からいきなり声をかけてきたのは、もちろん瑠璃子さんだった。

「もうっ! 後ろから急に話しかけないでよ!」

「ゴメンゴメン」

 瑠璃子さんはくすりという感じの微笑みを浮かべて謝った。

「瑠璃子さん、いつからそこにいたの?」

「最初からいたよ」

 だったらはじめから話に加わってて良かったのに……瑠璃子さんらしいんだけどね…

「…そ、それよりも、…さ、さっきの話…」

 沙織ちゃんがおそるおそるといった感じで口を開いた。

「うん、なに?」

「…ほんとうなの?」

「……?」

「…だ、だから、その…オカルト同好会…ってやつ…」

 沙織ちゃんが聞きたくないんだけど…やっぱり、聞いとかないと絶対駄目…みたいな様子で聞いた。

「うん。ほんとだよ」

「あっ、…あ、あはは。…やっぱつぶれちゃうよね、そんな部」

 ぎこちなく笑いながら、沙織ちゃんはそう言った。

「…なんでも大富豪のお嬢様が作ったんだけど、その人が卒業してつぶれたみたい」

 …どっかで聞いた気が…ひょっとして来栖川先輩とか…

 ああっ、どうしてそんな固有名詞が出て来るんだ!

 そんな人知らないのに!!

 

「…電波だよ、長瀬ちゃん」

 

 くすくす笑いながら、瑠璃子さんが言った。

 うわっ! 僕しゃべってないのに、そんな琴音ちゃんみたいな…って琴音ちゃんって誰だ!!(ちなみに、琴音ちゃんはテレパシーは使えない)

「くすくす」

「……?」

 

「…あのー、みなさん部室前でどうしたんですか?」

 

 そう、おそるおそる聞いてきたのは、瑞穂ちゃんだった。

「あっ、瑞穂ちゃん。生徒会の方は終わったんだ」

「ええ、ついさっき終わりました」

 瑞穂ちゃんはにっこりと笑うと、そう答えた。

 

「よーーし、これでアストラルバスターズ勢揃いねっ!」

 

 沙織ちゃんが、さっきのこともどこえやら、声高らかにそう宣言したのだった。

 

 

 …………

 …

「……ホッ」

「んっ、どうしたの沙織ちゃん?」

 僕がそう聞くと…

「えっ! …いや、その、…オカルト同好会の部室だったっていうから、ちょっとオドロオドロしたものを想像しちゃってて」

 沙織ちゃんが言うように中は本当になんにもなくて、とても前がオカルト同好会だったなんてことはうかがえなかった。

「白い壁…っていうのは新しい感じがしていいですね」

 瑞穂ちゃんがそう言った。

「うん、そうだね」

「うんうん、気持ちがいいよね。ガンバローって気になるよね!」

 僕も沙織ちゃんも、それぞれの言葉で同意を示した。

「…あれ? 瑠璃子さんは?」

 僕たちがきょろきょろと辺りを見回すと…

 

「あああぁぁーーーーーーーー!!!

 なにしてるのよっ!」

 

 沙織ちゃんがそれを見て、絶叫の声をあげた。

「…なにって…」

 瑠璃子さんはマジックを持ったままキョトンというか…いつもの焦点のあっていない目を向けて、そう聞き返した。

「それよそれ! なにしてるのよ!」

 沙織ちゃんが「それ」を指さして言った。

 そこ…白い壁の一角には、時計回りに渦をまいた「ぐるぐる」が書かれていた。

「…ぐるぐる…」

「そんなことは見ればわかるの!」

「…書きたくならない? …白い壁を見てると…」

 うっ! ……なんとなくわかる気も…

「…ほら。…こうして、じーっと見てると、吸い込まれるような感じがするの」

 

 ………………

 ……

 …

 

「はっ! …思わず吸い込まれそうに…」

「ほ、本当ですね」

「わ、わたしも…」

「…ねっ」

 

 僕たちは思わず、そのぐるぐるをじっくりと凝視してしまっていた。

 

「…ま、まあぐるぐるは置いておいて、今日からクラブが始まったわけだけど…」

 僕はそう切り出した。

「そう! アストラルバスターズの記念すべき初日よ」

 沙織ちゃんが元気よく言った。

「それで、何をするの?」

 

「「えっ!?」」

 

 僕の問いかけに、沙織ちゃんと瑞穂ちゃんは驚きの声をあげると、そのまま沈黙してしまった。

「…そ、そーね。…事件がないと、どーしよーもないね」

「…そうですね。探偵クラブなわけですし…」

 意気込みはあっても、こればっかりはどうしようもない。

 ……………

 ……

 …

「…じゃ、じゃあ、今日はもう解散ということに…」

 僕がそう言うと…

「そ、そんなっ!」

 沙織ちゃんが不満の声をあげた。瑞穂ちゃんも同じような気持ちらしく、不満そうな顔をした。

「…でも、事件がないことには…」

「うっ!」

 僕の一言に、沙織ちゃんも黙らざるを得なかったみたいで、渋々うなずいた。

 ちょうどその時…

 

「あのー、部屋の前に『探偵クラブ』って書いてあるのを見たんですけど…」

 

 ガラリという音とともに入ってきた女の子が、開口一番そう言った。

「はいはいはいはい! そうです! 探偵クラブです!!」

 沙織ちゃんが、パッと表情を明るくしてそう答えた。それと同時に…

 

「香奈子ちゃん!」

 

 瑞穂ちゃんが立ち上がって大声を出した。

「あれ、瑞穂。…どうしたの、こんなところで?」

 確かにその少女は、瑞穂ちゃんの大親友にして、僕のクラスメートである…太田香奈子さんだった。

「私はここの部員になったの。それより香奈子ちゃんはどうしたの?」

 瑞穂ちゃんがそう聞くと…

「うん、ちょっと…相談っていうか、依頼になるのかな?」

 太田さんは頭をかいてそう言った。

「依頼っ!!」

 沙織ちゃんが目をキラキラと輝かせてたずね返した。

「う、うん」

 びくっとしながらも、太田さんはうなずいた。

「…そ、それじゃあ、よかったら聞かせてもらえないかな。…その、依頼内容を…」

 僕は一応、隊長らしくそう聞いた。

「ええ、わかったわ。もちろん、他言無用よ」

 僕らがこっくりとうなずくのを見て、太田さんが話し出した。

 

 その内容とは…

 

 ……………

 ……

 …

「……つまり、最近、彼氏の様子が不審であると…」

 僕は太田さんの話をそうまとめた。

「…まあ、ぶっちゃけた話、そういうことになるわね」

 それに対して、太田さんもうなずきを返してくれた。

 …まあ、探偵の仕事のほとんどは浮気調査だって話だしね…

「…それで、その彼氏って?」

 僕がそう聞くと…

「…香奈子ちゃん…」

「…うん」

 瑞穂ちゃんと太田さんは見つめ合ったかと思うと、お互いにうなずきあった。

 

「…実は…月島先輩なんだけど…」

 

 ためらいながら、太田さんは口を開いた。

「月島先輩って、あの生徒会長の?」

 僕がそう聞くと…

「……うん」

 太田さんはこっくりとうなずいた。

 月島先輩…我が校の生徒会長にして、そして……

 

「あれ?」

 

 僕は思わずそうつぶやいていた。

「どうしたの?」

「…いや、瑠璃子さんがいないなあって…」

 そうなのだ。

 …月島さんの話が出たので、妹でもある瑠璃子さんの様子を見ようとしたら、いつの間にか忽然と姿がなくなっていたのだ。

「…ほんとだ」

「…そう言えば、ずいぶん前から会話に参加していませんでしたよね」

 沙織ちゃんも瑞穂ちゃんも、きょろきょろと辺りを見回しながらそう言った。

「先輩の妹さんもいるの?」

 太田さんもそう聞きながら、きょろきょろと見回す。

 

 …やっぱりいない…

 

「…どうしたの長瀬ちゃん?」

 

「うわあああっ!!」

「「「きゃああっ!!!」」」

 

「おやおや、驚かせちゃったよ」

 前と同じセリフを言いながら、僕の後ろに立っていたのは瑠璃子さんだった。

「び、…びっくりした」

「ほ、ほんとよ、どこに行ってたの!」

 沙織ちゃんが胸をおさえつつそう聞いた。

 

「…あそこ…」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 …瑠璃子さんは壁の「ぐるぐる」を指さしていた…

 

「あ、あの…」

「え、えーと…」

「ま、まさかね…」

「そ、そんな、ねえ…」

 僕らのそんな反応に対して、くすりと笑うと…

 

「…冗談だよ。…ちょっとおトイレ」

 

 瑠璃子さんはそう言った。

「あっ、なーんだ…」

「び、びっくりしたよ、ほんと…」

「そ、そうですよねえ…」

「ちょっとあせっちゃった…」

 僕らはぎこちない笑みを浮かべたまま、そう言い合った。

 無論、だれも突っ込まない。

 

 …ずっと、扉はしまったままだったなんて…

 

 ……………

 ……

 …

「…と、とにかく、依頼を受けたわけだし、今日はこれから月島先輩の様子をさぐることにしよう」

 僕は、なんとかそう言葉をしぼりだした。

「そ、そうね! 初仕事だもんね! がんばりましょう!」

 沙織ちゃんも、無理に元気よく言った。

「ええ、そうしましょう」

 瑞穂ちゃんも、こくこくとうなずいて言った。

「うん。じゃあ行こうか」

 瑠璃子さんが何事もなかったように言った。

「ええ、レッツゴー!!」

 沙織ちゃんのその声が出発の合図となった。

 

 ……って、…出発って…

 

「…えっと、それでどこに行くの…」

 僕がそう聞くと…

「…私の家だよ」

 瑠璃子さんは事も無げに言った。

 

「えっ、…ええええぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!」

 

 僕は思わず叫んでいた。

「…どうしたの、長瀬ちゃん?」

 瑠璃子さんは小首をかしげて聞いてきた。

「…だ、だって…」

「どうしたのよ、祐君? 祐君が月島さんのお兄さんをさぐろうって言ったんじゃない」

 沙織ちゃんも不思議そうな顔で聞いた。

「で、でも…」

 …瑠璃子さんの家に行くなんて…ちょっと…いや、かなり凄いことだよ。

「…そ、そんな、いきなり家に行くというのは…や、やっぱり、ちゃんと段階を踏んでから……それから…」

 

「祐君、おいてくよ」

 

 僕が気づいた時には、もうみんな部室から出ていたあとだった。

 

 

 ……………

 ……

「…私ん家だよ」

 瑠璃子さんがすっと、指をさして言った。

 そこは二階建ての一軒家で、瑠璃子さんの家である…と言うこと以外には何の特徴もなかった。

 …で、でも、来ちゃったよ、る…瑠璃子さんの家に…うーーー、ドキドキしてき…

 

 ガチャ…

 

 瑠璃子さんは僕のドキドキをよそに、あっさりとドアをあけた。

 …な、なにもそんなにあっさりと…

 僕がそんな風に思った瞬間…

 

「おっかえりーーーー! るっりこおおぉぉーーーーー!!!」

 

「…ただいま、お兄ちゃん」

 いきなり現れた月島さんに驚く僕ら。それに対し、瑠璃子さんはあっさりとあいさつを返した。

「うっ! …と、友達が来ていたのか…」

 さすがに恥ずかしかったらしく、月島さんは顔をあかくした。

「お、お邪魔します」

「こ、こんばんは、月島先輩」

「え、えーと、はじめまして。お邪魔します」

 僕らはとりあえず見なかったことにして、そうあいさつした。

「い、いや、こちらこそ…むっ!」

 そこまで言って、月島さんは僕を睨み付けた。

「あ、あの…」

「…君が長瀬祐介君だね…」

 そう言うと、月島さんはすっと右手を差し出してきた。

「ど、どーも…」

 僕も右手を出して、握手を交わす。

「…君のことは瑠璃子から、い、つ、も、聞かせてもらってるよ…」

 

 ギュウウゥゥゥ…

 

 い、痛いです…

 

「これからも瑠璃子と、な、か、よ、く、してやってほしい…」

 

 ムギュウウウウウウゥゥゥゥゥ…

 

 痛すぎます…

 

「…長瀬ちゃん、部屋に行こ」

「う、うん」

 瑠璃子さんの言葉に、僕は思わずそう答えた。

 

「へ、へへへ…部屋あああああぁぁぁーーーー!!!」

 

 頭をかかえ、そう絶叫して真っ白になる月島さんの横を、僕たちは通り過ぎ、二階に向かった。

 

 

 ………

 …

 

 …る、瑠璃子さんの部屋だあああぁぁぁーーーーー!!!

 

 …あっと、そ、その…

 …そ、その部屋は、良くいうと片づいた…悪くいうと何にもない部屋だった。

 

「…うん、何にもない部屋だよ…」

 

 …る、瑠璃子さん…

「じゃあ、さっそく作戦を練りましょう」

 沙織ちゃんがそう言った。

 そう言えば、そのために来たんだった。

「さあ、隊長出番よ!」

 沙織ちゃんはいきなり僕に話を振ってきた。

「えっ! え、えーと…

 じゃあ、まず瑠璃子さんが…」

 

「すとおおおおぉぉぉーーーーっぷ!!」

 

 僕の言葉を遮って、沙織ちゃんが大声を出した。

「な、なに?」

「チッチッチッ…駄目だよ、祐君。

 私達のことはコードネームで呼ばなきゃ!」

 沙織ちゃんは人差し指を立ててそう言った。

「…こ、コードネーム?」

「そっ! 月島さんは『るりるり』、藍原さんは『みずぴー』…

 そして私のことは『さおりん』と呼んでちょうだい!」

 い、いつのまにそんなコードネームを…

「さっ、作戦会議のつづきつづき」

「う、うん…

 じゃ、じゃあ、瑠璃子さ…じゃない、る…るりるりが…」

 こ、これはちょっと照れるものが…

「…私がどうするの?」

「え、えーと、まず月島さんに最近変わったことを、さりげなく聞き出してほしいんだ」

「うん」

「そ、それで、…さおりんとみずぴーは、僕と一緒に後方で待機…いい?」

「オッケー!」

「わかりました」

 

 こうして、「アストラルバスターズ」の最初の任務が実行に移せられた。

 

 

 ……………

 ……

 …

「…お兄ちゃん」

「………はっ! る、瑠璃子!」

 月島さんは、まだ玄関で立ちつくしていた。

「お兄ちゃんさ…」

 瑠璃子さ…いや、るりるりがまず攻撃を開始した。

「な、何だい、瑠璃子?」

 

「最近、私に何か隠してることない?」

 

 …る、るりるり、ちっともさりげなくない。単刀直入だあぁぁ!!

「なっ! な、なな、なにをいいだすかなあ、瑠璃子は…

 は、はは、僕がお前に隠し事だなんて…」

 ものすごくぎこちない態度で、月島さんはそう言葉を返した。

「…………」

「は、ははは…」

「…………」

「あ、あはは…」

「…………」

 るりるりはいつものように焦点のあっていないまなざしを、ただじっと月島さんに向けたまま黙っていた。

「…る、るりこ?」

「…………」

「…ね、ねえ、瑠璃子ちゃん…」

「…………」

 

 

「………お、恐るべき攻撃です…」

 

 僕の横で、瑞穂ちゃ…みずぴーがそうつぶやいた。

「ど、どーゆーこと、みずぴー?」

「ええ。

 いきなり核心をズバッとつかれた後、ただ黙ってあのまっすぐなまなざしで見つめられるプレッシャーは、はかり知れません!」

 た、たしかに…僕なら1分ももたずに吐いてしまうだろう…

「さすがるりるり、『核』を積んでいるだけはあるわね」

 

 そ、そんなものは積んでいない! ……はずだ…

 

 僕たちでそんなやりとりが行われている間も、るりるりの攻撃は続いていた。

 

「…………」

「…うう、るりこ…」

「…………」

「…た、たのむ…なにか言ってくれ…」

「…………」

 

「なかなか粘りますね」

「うん、僕なら3回は白状しているよ」

「なーに、祐君。なにか隠し事でもあるの?」

「い、いまは僕のことはいいの!」

「ちぇー」

 

「…………」

「る、るりこおおぉぉぉーーーーー!!!」

 そう月島さんが絶叫したと思ったら…

 

「…じゃあ、いい…」

 

 るりるりはそう言うと、月島さんに背を向けてスタスタと歩き出した。

 

 ……………

 ……

 …

「…う、うわああああぁぁぁぁーーーーーーー!!!!

 ゆ、ゆるしてくれええええぇぇぇーーーーーーーーー!!!!!

 るりこおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 …月島さんはるりるりにしがみついて、泣き崩れたのだった…

「お、恐るべき3段攻撃です」

「た、たしかに…あれは防ぎようがない」

 …こうして、恐るべき戦闘能力を見せつけたるりるりの攻撃で、月島さんは敗れたのだった…

 

 そして…

 

「…私になにを隠してるの?」

「…そう、あれは3日前のことだった。

 お風呂に入ろうとしていた僕は、洗濯物を洗濯機に放り込んだところまでは覚えているのだが…」

 月島さんは遠い目をして語りだした。

「…ふと気がつくと、僕の手にはこれがにぎりしめられていたんだ…」

 観念したのように、月島さんはポケットから何かを取り出した。

 

「…なんだろ?」

「こっからはよく見えないね」

 さおりんも身を乗り出して見ようとするのだが、やっぱりよく見えないようだ。

 

 るりるりはじっとそれを見つめてから、ポツリと言った。

 

「…これ…私の下着…」

 

 ………………………

 …………

 ……

「…なっなっ……」

 

「なんですってええええぇぇぇーーーーー!!!」

 

 僕が叫ぶより先に、その声は背後から聞こえてきた。

「…おっ…」

「…かっ、香奈子ちゃん!!」

 いつのまにそこにいたのか、僕たちの背後で仁王立ちしていたのは、月島さんの彼女であるところの太田香奈子さんだった。

「…せぇ〜んぱぁ〜い…」

「かっ、香奈子…こ、これは…」

 

 

 ……………

 ……

 …

「しゅ…修羅場だったね、祐君」

「そ、そうだね」

「…と、とりあえず、任務完了ですよね」

 僕らはあいまいに笑顔を浮かべあい、そういうことにした。

「じゃあ、帰ろうか」

「うん、そうだね」

「帰りましょうか」

「…ところで、長瀬ちゃん…」

 帰ろうとする僕たちに、瑠璃子さんが声をかけてきた。

「うん、なに?」

 僕がそう聞くと…

 

「…私の下着、返して」

 

「えっ!?」

「ゆ、…祐君…」

「ゆ、…祐介さん…」

 なぜだかわからないが、いつの間にか僕の制服のポケットの中には、例の「瑠璃子さんの下着」が入っていた。

 

「えっ! …ど、どーして!?」

 

「ゆ、う、く、ん」

「…祐介さん…」

「…下着…」

 

 

 …………………

 ………

 …

 …こうして、アストラルバスターズの最初の事件は終わったのだった。

 

 

 ……えっ、あの後僕がどうなったかって?

 

 

 ………ううー、いいじゃないか、そんなこと………

 

 

 

「こらー! まてー! 祐君!!」

「祐介さん!!」

「…長瀬ちゃん…」

 

「かんべんしてよー!!!」

 

 

 

………ちゃんちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …と、いうわけで、ついにやりましたよ10000アクセス!!

 ドンドンドン…パフパフ…ヒューヒューだよ!

 そんなわけで、10000アクセス記念SSとして大御所登場!!

 「雫」のSSです。

 みなさんの予想を大きく裏切っちゃいましたかね。

 

るりるり「…単に、10000アクセスまでに仕上がらなかっただけ…」

 

  …ぐっ、るりるり、いきなりきついことを…

みずぴー「そ、そうですよ、るりるり。いくら事実でも…」

  ぐあぁーー! み、みずぴーまで…

さおりん「まあ、私達を使ったことはよしとしましょう!」

  うう、さおりん、ありがとう。

  そう、これでリーフビジュアルノベルシリーズのそれぞれにSSが書けた訳なんだから!(1本づつだけどね…)

 

るりるり「『WHITE ALBUM』は?」

 

  …ぐっ!! …あ、あれはビジュアルノベルシリーズじゃないし…

るりるり「………………」

  …だから……

るりるり「………………」

  …その……

るりるり「………………」

  …あの……

るりるり「………………」

 

  ……ごめんなさい。なにか書きたいです。

 

るりるり「…がんばんないとね…」

 

  …はい、がんばります。

 

 

  …10000アクセス、本当にありがとうございました。

  これからもがんばって、魅力的な作品のSSを書いていきたいです。

  …そして、レベルをあげて、魅力的な作品の魅力的なSSが書けるようになりたいですね。

 

 

 

 

 


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