HT某年1月1日、某所にて……
「それじゃあ、無事に年もあけたことだし……」
年の頃なら20歳を越えていないであろう少年が、一同を見渡し音頭をとる。
少年の名は山本二十一。
JAPANの名門山本家の跡取りにして魔王を倒した希代の英雄。
その実力は、人間界最強の勇者の名声と共に天下に知れ渡り、今や生きる伝説なのである!
しかし!!
「「「「「あけましておめでとう」」ございます」」」
取り敢えず、今日の役目は宴会の司会である。
「みんな、あけましておめでとう。
今日は僕たちの世代にとって、記念すべき日になると思うんだ。
だって僕たちが生まれて初めて、魔王の恐怖に怯える事なく暮らせる年を迎えた日なんだから………
だから僕は、今日という日をみんなといっしょに……!」
「二十一〜。挨拶なんかどうでも良いから、早く食べさせてよ〜」
「………………。
…………
……
…
食べて良いよ、シィル……」
「やった。んじゃ、いただきま〜す」
シィルと呼ばれた少女が嬉々として皿に箸をのばす。
ちなみに二十一は、ちょっと寂しそうである。
ぽろ。
「あ、あれ?」
ぽろぽろ。
「あ、あれれ、あれ……。こ、このこの!」
「ぐすっ……。シルフさん、そんな風に力を入れたら、お箸が折れてしまいますよ」
箸に遊ばれているシルフに、椿が涙をこぼしながらながら忠告する。
「う゛……。わかってるわよ、それぐらい。
……………
……って、椿ちゃん、何で泣いてるの?」
「いえ……二十一さんのお話に感動しちゃいまして……、ぐすっ……」
「え゛…
、今ので感動してたの?」
──────ごくごく──────
えっと、他のメンバーは……二十一が司会をつとめている時点で解るだろうから………省略。
「ファイヤー・レーザァァァァーー!!!」
ぎょおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
「何よそれ!! 二十一の事は『英雄』だの『伝説』だの持ち上げたくせに、何でわたしが『省略』なのよ! しかも、他の三人と一緒くたにまとめられてるし……。
ほら、わたしについて言うことがあるでしょ? 『天才魔法使い』とか『今世紀最高の美少女』とか『思わず守ってあげちゃいたくなる正統派ヒロイン』とか……。 あ、『美の女神の化身』とかもOKよ!」
…………………
「あれ?」
…………
「ちっ、一撃で壊れるなんて…脆いわね」
『ちっ』……って………お前、偽シルフだろ……須達センセのと性格違う……。
「さ、さ〜て! 早く次のシーン行きましょ〜!」
…………
まあいいや……
──────ごくごく──────
「さあさ御師匠様、お一つどうぞ」
月心が二十一の湯飲みに酒をなみなみと注ぐ。
そりゃぁもう、「どぼどぼ」って感じで注ぐ注ぐ。
「どうぞって、これお酒じゃないか! 駄目だよ、未成年がお酒を飲んじゃ!!」
うんうん、お酒は二十歳になってから!
「いいえ、御師匠様! これは正月用の『おとそ』です。ですからお気になさらず、ささ、一杯」
あ、なら良いや。
「良くないよ!! 駄目だってば!」
──────ごくごく──────
「ふ〜〜ん、これがJAPAN風のお正月料理、『おせち』ね……
(パクッ)
ふんふん、結構いけるじゃない…… (モグモグ…) 」
結局シルフは箸を使うのを諦めたらしく、フォークで黒豆だの栗きんとんだのをつついていた。
「あの……私と弥生さんで作ったんですけど………。お口に合いましたか? 良かった………」
椿が消え入りそうな声で心底ホッとした風に呟く。
「ふふん。
箸も満足に使えないとは……。
それでよくJAPAN育ちの御師匠様と旅が出来ますねぇ。」
「あんですってぇ〜!」
生意気度120%の月心の言葉に反応するシルフ。
心なしか顔が赤くなってきている。
(あわわわわわ………シルフさん……目が恐いです……)
ちなみに椿は怯えている。
「それに比べて姉上の料理の素晴らしいことと言えば……!
これぞJAPANの心!!
さあ、御師匠様! 今日は思う存分故郷の味を堪能して下さい!」
「え!? あ…うん。
ありがとう。そうさせて貰うよ」
謎の勢いに押され、何故か月心に礼を言う。
「御師匠様、ぼくのお勧めはやはりこの雑煮です!
この上品な風味、瑞原家秘伝の味!
姉上以外ではこうは行きません。まさに至高の一品ですよ!!」
(あ、あの……月心さん……お雑煮作ったの私ですぅ……)
思っても口には出せない椿であった。
──────ごくごく──────
「フンッ……面白くないわね……。あ、二十一が飲まないんだったら。そのお酒私がもらうわよ!」
「ああっ! 飲んじゃ駄目だよシィル!!」
「もーー、いいじゃない。
こんなめでたい日に、白けること言わないでよ……。っと言う訳でもーーらいっと!」
と言いながら、既に飲んでる。
「ぷっは〜〜! あ〜、おいひ〜〜!! 椿ひゃん! おきゃわり持ってきて〜」
「わ、私ですか!? は、はいい!!」
「ちょ、ちょっと待って!! 本当に飲んだらまずいってば!」
いきなりろれつが回ってないし……
「あによ〜。いいりゃない。らいらい、二十一はかりゃいのよ〜」
「りょ〜れすよ〜。二十一さんも、楽しみましょうりょ〜。
はい、おしゃけ。のんでくりゃさい〜〜。」
………………
「ええっ!? や、弥生さん?
そんな……、弥生さんまで酔ってるんですか!?」
や、弥生!? そ、そう言えば……時々『ごくごく』って音がしてたけど……
弥生…ずっとセリフ無かったのって……
「りゃいりょ〜〜ぶれす。こんなのは酔ったうちにはいりましぇん」
『にょほほ〜〜』と弥生が喜色満面で二十一を見つめる。
「だ、だめだ……完全に出来上がってる……
月心、悪いけど弥生さんを隣の部屋で寝かしてあげてくれないか?」
「そんなっっ!!!
私と月心を追い出して、シルフさんとふたりっきりでいいことするつもりなんですね〜〜。
ぐすっ、ぐすぐすっ」
おいおい。
「なななななな、何言ってるんですか!」
「あの………、私もいるんですけど………」
「そうですよ、姉上。
御師匠様は『自分も後から行くから、先に行って床の準備をしておけ』って言っておられるのです。そうですよね、兄上!!」
「ちっがーーう! 誰もそんなことは一言も言ってない!!」
「ななな、何ですってーーっ。この二十一の浮気者ぉぉぉ!!」
取り敢えず、椿の自己主張は無視された。
「かくなる上は、私のとっておきの呪文を………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーー!!!!!
シルフの周りの空気が膨張を始める!
「わーーーーっ!! やめろーー、シィルーーーーーーーーー!!!!!!!」
そしてついに、熱風を生み極限まで膨れ上がった大気が……!
「『今、シィルと結婚すると、ゼス国がついてきまーす。』」
………………………
……………
……
ぽしゅ〜〜〜〜。
あ、しぼんだ。
「「「「……………………。なに、それ…………?」」」」
「な、効かない!?
おかしいわ、伝説によると、昔のリーザスの姫はこの呪文で旦那をゲットしたと言う、究極の呪文なのに!!」
「シルフさんっ! 家柄を持ち出すなんてずるいです! ちゃんと女の魅力だけで勝負して下さい!」
「あの……、シルフさんも弥生さんも喧嘩はやめて下さい……」
「ふんっ、言われなくても二十一ごとき私の魅力一つで充分よ!」
「ああっ、もう無茶苦茶だ………」
二十一が疲れ気味の声を出す。
「月心…。ぼーっと見てないで、弥生さんを何とかしてくれないか…? 僕はシィルをどうにかして止めるから……」
その言葉の終わる暇もあらばこそ。
「…………。一番………瑞原月心………き、斬ります!!!!!」
突然『新春・隠し芸大会』のノリで宣誓し、抜刀する!
ズザシャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!
「きゃあああああっっ!!」
「椿ちゃん、危ないっ!!」
間一髪。椿を襲った『風の剣』の衝撃波の軌跡をそらす二十一。
スサアアアアアアァァァァァァ…………ぺしっ!……きゃあぁぁ……
「くっ。ま、まさか顔に出てないだけで……月心も酔っているのか!?」
うーーん、さっきから言動が何処かおかしかったからねぇ……。
ところで二十一君。さっきの「…ぺしっ!……きゃあぁぁ……」って何か気が付いてる?
「え?」
そらされた『風の剣』の軌道の延長上を省みる。
「…し、しぃる……」
そこには“二十一が軌道をそらしたために”『風の剣』の直撃を受けたシルフの姿が有った。風に巻き上げられた金髪は、まるで寝起きのように乱れている……。
「ちょ、ちょっと! なんで“僕が軌道をそらしたため”ってところが強調されているんだよ!!」
いや、だって事実だし。
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ………。
二十一も月心も……いい度胸してるじゃない…………」
ゆらり………
先ほどとは違い、音もなく膨れ上がったシルフの魔力が彼女の実像を歪める。
(二十一さん……頑張って下さい……はふぅ……)
緊張の極限に達した椿は、自分の運命の先を二十一に託し卒倒した。
「あ……椿ちゃん……ずるい……」
気絶した彼女を見て、そう思わずにはいられない二十一であった。
轟っ!!!!!!!!
シルフから響きわたった渦巻く爆音が、二十一を絶望的な現実へと引き戻す。
「いくわよ! 『灰色………』」
「ふっ!
良いでしょう、いくらでも受けて立ちますよ!! 『瑞原・天の………』」
「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! や、やめてくれええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」
こうして数刻後…阿鼻叫喚の地獄絵図と化した某所では………
「んしょ……、んしょ……」
意識を取り戻した椿が、一人で後かたづけをしていたという………。
「うう………。どうして私ばっかり………」
・
・
・
・
「さーて、元旦の挨拶も住んだことだし。明日は新年会をやるわよ!」
「おねがいです…………やめてください……………」
あとがき
よし。加筆修正終了〜〜。
???「ちょっと待ちなさい! この話、私の扱いがひどすぎるじゃないのよ!」
む、やっぱり出たな! 偽シルフ!!
シルフ(偽)「こ、こら! 勝手に人の名前に(偽)なんて付けないでよ!!」
だってお前(偽)だし……
第一お前を本物だって言ったら…俺、全国のシルフィナファンに殺されちゃうよ(汗)
シルフ(偽)「う゛……じゃあ、まあ……そこら辺は良いとして……。元の二倍以上の長さになってない? これ」
ああっ! こっちしか読んでない人には、言わなきゃ解らん事をぉ!!
シルフ(偽)「なんでわざわざ長く書き直したの?」
いや……これの元って1月3日ぐらいに書いた奴なんだよね……。
シルフ(偽)「ふんふん、お正月が舞台だもんね」
当時の俺って大学の4回生だったわけで……
シルフ(偽)「それで?」
卒論の〆切が1月の6日だったんだよね〜。
シルフ(偽)「光になれえええ!!!(バキィィィ!!)」
ギャーーーーーーースッ!!!!
シルフ(偽)「あんたって奴は……! そんな片手間で書いた奴を今までアップして貰ってた訳!?」
だ、だって……これの元を書いたときはGGGルームなんか無かったし……。掲示板に書き込んだ奴だったから、その内流れると思って……
シルフ(偽)「それがいきなりアップされて、さらし者になってた訳ね……」
まあ、これで一応の体裁は整ったけど……
シルフ(偽)「でも、実力的にはまだまださらし者レベル〜」
ぎぐはぁっ!!
シルフ(偽)「元のバージョンの時なんて、結局須達センセ以外からは感想を貰えなかったもんね〜」
いや……今回こそは……きっと……
シルフ(偽)「無理無理、内容は同じなんだから。それに所詮は真似っこ作品〜」
な、なななななな………
シルフ(偽)「だって後書きでキャラと対談するなんて、思いっ切り須達センセと同じじゃないのよ」
うわわあああぁぁぁぁぁぁ!!!!
ごめんなさいーーーーーー!!!!! 一回やりたかったんですううぅぅぅぅぅぅーーー!!
シルフ(偽)「まっ、読み切りなのがせめてもの救いよね……」
あうあうあうあうあうあうあうあう…………
シルフ(偽)「んじゃ、これ以上虐めるのもかわいそうだし……」
はい…またお会いしましょう……
シルフ(偽)「は? また、って……また書くつもりなの?」
は、反響が有れば……
シルフ(偽)「う〜〜ん、ステッセル並にあきらめの悪い奴……」
幻想くらげさんに感想を送りましょう!
ここを押して送ってください。