「はい、こちらアリスです」

 カメラ目線で、かわいらしい笑顔を見せてくれる金髪の美少女。

「ガ、ガガガッガガガァーー?」

 彼女の肩で、一羽のカラスが鳴き声をあげた。

「えっ、急にどうしたのかって?

 うーん、なにか始まったような気がしたから…」

 

 ……アリスちゃん鋭い…

 

 ここはアリスソフトの全ての世界へと通じている部屋…その名も「アリスの部屋」である。

 花園になったり、学校になったり、はたまた闘技場にも様変わりする…某理事長室の様なすごい部屋である(わかる人だけわかってね)。

 今現在は、アリスちゃんにぴったりな、かわいらしい花が咲き乱れているお花畑になっており、向こうには大きな森も見えていた。

「今日はクッキーを焼いて、ハーブティーでちょっとしたお茶会をしようか?」

「ガー、ガガガアァーーー!!」

 カラスが嬉しそうに鳴く。

「諭吉も賛成みたいね」

 そんな風に会話を交わしていた時であった。

 

「あーー、忙しい忙しい!!」

 

 そんな言葉が聞こえてきて、アリス達は振り向いた。

 その目に入ったものは……

 

「あーーー、忙しい忙しい忙しい!!!」

 

 森へと向けてかけているその女の子は、赤い忍者装束に身を包んだ、ふつう?

 ……そう、頭の上でぴょこぴょことはねているバニーさんのお耳さえなければ…ふつうの可愛い忍者の女の子でした。

「あーーーー! 忙しい!!」

 その言葉はこの忍者少女から発せられたものだったみたいです。

「……あ、あれって、かなみちゃん…だよね?」

「ガ…、ガガガ……」

 お尻にも、ご丁寧にウサギさんのしっぽをつけています。

「あーー、忙しい忙しい!」

 半ばむきになったように、同じセリフを繰り返しています。

「…ど、どーしたんだろ?」

「…ガ、ガガアァーー?」

 ちょっとボーゼンとしながら、そんな会話をかわします。

「…忙しい忙しい忙しい……恥ずかしい……忙しい…」

 

 …少し違うセリフが混ざったような…

 

「…本当にどうしたんだろう?」

 アリスの中から、むくむくと好奇心がわき上がってきます。

「かなみちゃーーん!! 一体どうしたのーーー!?」

「…忙しい忙しい…」

 しかし、アリスの声はどうやら聞こえなかったようです。

「…何か、気になっちゃうね」

「…ガ、ガガ…」

 そんなことを話しているうちに、バニーかなみは森の中へ入っていきます。

 いてもたってもおられずに、いつのまにかアリス達も、かなみの後を追っかけて森の中へと入っていたのでした。

 

 


 ……………

 ……

 …どれくらい駆けたでしょうか、アリス達はかなみの姿を見失ってしまいました。

「……どこに行っちゃったのかな…」

「……がー」

 森の中はけっこう薄暗く、すこし不安になってきます。アリスもきょろきょろと不安げに周りを見渡します。

 すると……

 

「……こ、ここかな…」

 

 そこには一本の大木が立っていました。その根っこには人が一人通れそうな、大きな穴が口を開けていました。

 おそらく、かなみはここを通って行ったのでしょう。

「…ど、どうしようか?」

 アリスは不安げに、カラスの諭吉に聞きました。

「ガ、ガガガアァーー!!」

「やめた方がいいって……うーーん」

 そう言われてしまうと、またむくむくと好奇心が鎌首をもたげてきます。

 アリスは、じぃー…っと穴を見つめてから…

 

「えいっ!」

 

 そうかけ声をあげると、思い切って飛び込んでいたのでした。

 

 

 

 

 〜Alice in RanceWorld〜
「鬼畜の国のアリス」

 

 

 

 

 ………………

 ………

 …

「…ん、…んんーーー……」

 アリスが目を覚ましてみると、そこもうっそうと茂った森の中でした。

「…どこなのかな、ここ?」

 そうつぶやくと、きょろきょろと辺りを見渡します。

 さっきと同じ森の中なのでしょうか?

 …それにしては諭吉の姿がありません。…そのことも手伝って、さらに不安になってしまいます。

 そんなときに……

 

「どーしたの、おねえちゃん?」

 

 女の子の声が聞こえてきました。

 アリスはきょろきょろと声の主を捜します。

 

「ここだよ、おねえちゃん」

 

 その声は上から聞こえてきました。

 アリスが上の方に視線を向けると、そこにいたのは……

「えへへへ…」

 小っちゃな女の子が、木の枝の上に腰掛けていました。

 青く長い髪に草色の服、そして何よりも…そう何よりもかわいらしい天使の微笑み。

 長いお耳のほかに、頭に乗っけている猫耳がさらにぷりちい…思わず頬ずりしちゃいたくなる……かわいさ大爆発だ!!(作者壊れちゃいそう)

「どうしたの、おねえちゃん?」

 少し小首をかしげて、女の子がアリスに聞いてきました。

  それにつられてフリフリと動く、おしりにつけた猫のしっぽが…しっぽが……しっぽがあああぁぁぁーーーーー!!!(かなりやばい状態)

「えーと、かなみちゃ…ウサギさんのお耳をつけた女の人がここに来なかったかな?」

 アリスはそう、猫ちゃんリセットに聞きました。

「うん、きたよ」

 リセットはニコニコとそう答えました。

「どっちに行ったかわかるかな?」

「えーとね…さっきまで、あっちでおちゃかいしてたんだけど、…うーんと、たぶんパーパのおしろへかえったとおもうの…」

 考え考え、猫ちゃんリセットが答えます。

「お城ね…。ありがとう、リセットちゃん」

 アリスはそう言うと、リセットと別れました。

 

 

 アリスは街道を通って、リーザスを目指していました。

 どういう原理なのか、あの木の穴は次元の扉と同じようなもののようで、どうやらアリスは「鬼畜王ランス」の世界に来てしまったようです。

 

 ……なんかヘンだけど……

 

「とりあえず、お城に行って聞いてみよう」

 アリスはそうつぶやくと、リーザス城を目指すのでした。

 

 ………………

 ………

 …

「……り、リーザス…よね、ここ?」

 アリスは思わずそうつぶやいていました。

 それというのも、リーザスの兵士の格好がヘンだったからです。

 賢明な読者諸氏はもうお気づきだと思われるが、リーザス兵全員が鎧のかわりにぬりかべのような、トランプの着ぐるみに身を包んでいたのです。その姿は一昔前のバラエティー番組を彷彿させていました。

 

「…あ、…頭いたい…」

 

「……むっ!」

 そのアリスのつぶやきが耳に入ったのか、トランプ兵士の一人がアリスに気がつきました。

「…ど、どーも…」

 アリスはとまどいつつもあいさつをしました。それに対して…

 

「……も」

 

「…も?」

 

「目標発見!!」

 

「へっ?」

 

 アリスが気づいた時には、そのトランプの兵隊によって十重二十重に取り囲まれていたのでした。

 

「…ふ、ふふ、ふふふふふ……、があーっはっはっはっは!!」

 

 アリスを目の前にして、そいつはまず笑った。それはもう、これぞ馬鹿笑いという見本のようだった。

「いい格好だな、アリスちゃんよ」

 ランスはそう言うと、鼻で笑った。

 アリスはロープでぐるぐる巻きにされていた。

「やったね、ダーリン!」

「…ランス様ぁ、…まずくないですかぁ…」

 ランスの横でリアとシィルがそれぞれ口を開いた。

 その二人の格好もほかの兵士達同様で、アリスの後ろに立ち並ぶ兵士達も全員が全員、トランプの着ぐるみをしていた。

 ハートのクイーンの着ぐるみのリアをのぞいて、全員恥ずかしげである。

 

 …そういえば、バレスはちょっと楽しそうにしているような…

 

「…もうやめたほうが…」

 ジョーカーの着ぐるみのシィルがもごもごと言った。

「これはどういうことですか、ランスさん」

 アリスがランスに向かって言った。

「ふふん、驚いたか?

 

 …これぞ、名付けて『オペレーション・アリス』だ!!」

 

 ランスが胸をはって答えた。

「オペレーション…アリス?」

 ランスの言葉をアリスが反芻した。

「そのとーり!!」

 ランスが大声をだした。

「ある本を読んで俺様の考え出した、ウサギをつかってアリスを釣る…という大胆かつ繊細な作戦だ!!」

 

 ……どこが大胆かつ繊細なのかはなぞ…

 

「な、なんでこんなことを…」

 アリスがそう聞いた。それに対し…

「…俺様は目を付けた可愛い女の子のほとんどを手に入れてきた。

 

 …だが……」

 

「…だが…?」

 

「……十年だ…」

 

「…ゴクッ」

 アリスは思わずつばを飲み込む。

「…アリスソフト設立以来、十年近く目の前にしながら、い、ま、だ、に、手に入ってない女がいるのだあぁぁーーー!!!」

 ランスが絶叫した。

「…そ、…それは大変ですね」

 ドキドキしながら、アリスはそう言った。

「そう、大変だった。…チャンスだって何度かあったのだが、リセット攻撃によって阻まれてきたのだ」

「あ、あは…あはははは……」

 かわいた笑いを浮かべるアリス。

「…ということで、ふっふっふ…」

 そこまで言うと、ランスはじりじりとアリスに近づく。

 

 アリスちゃん大ピーーーンチ!!

 

「……あ、あっあの!」

 いもむしの様にじりじりと後ろにさがりつつ、アリスが口を開いた。

「なんだ?」

 ランスが余裕たっぷりに答える。

「ら、ランスさんはどうしてトランプの格好をしてないの?」

 

 …そうなのだ。

 

 ほかの者は全員、まぬけなトランプの着ぐるみをしているのに、ランスはいつもの緑のスーツを着けているのだった。

「そんなの簡単だ、あんなまぬけな格好ができるか」

 ランスはしゃーしゃーと言い放った。

「…ランス様、…あんまりですぅ…」

 シィルが目をうるうるさせて、ぽそりとつぶやく。

「…それに俺様のはちゃーんとここにある」

 そう言うと、ランスは右拳をつきだす。

 

「そ、それはっ!!」

 ランスの右手の甲に、燦然とかがやくそのマークは、「キング・オブ・ハート」の紋章であった。

「ふふん、俺様の利害と作者の趣味がここに一致したというわけだ」

「…い、いいのかなあ…」

 

 …いいことにしてくれ…

 

「俺様の野望が今、成就するのだ!!」

「や、野望って…」

 顔に縦線をいれつつ、アリスがつぶやく。

「ふふふ、そーだ!!

 このオペレーション・アリスにより、俺様の二つの野望がかなうのだ」

 ランスが自信満々に言った。

「ふたつ?」

 いぶかしげに、アリスが聞き返す。

「…ふふふ、聞きたいか?」

「…別に、あんまり…」

 

「聞きたいかあっ!?」

 

「……聞きたいです」 

「そうだろう、そうだろう。

 じゃあ、教えてやろう。まず第一の野望は…

 

 『十年来の獲物、アリスをやる!!』

 

 だあああぁぁぁーーー!!」

 やっぱり聞きたくなかった、という顔をするアリス。

 しかし、そんなことは気にせず、ランスは言葉を続ける。

「第二の野望は…

 

 『アリスソフト全ての美少女を俺様のモノにする!!』

 

 だあああぁぁぁーーー!!」

「!! …そ、そんなこと…」

「…可能だ。…アリスの部屋を制圧することによってな」

 悪魔のような笑みを浮かべて、ランスはそう言った。

「だ、だめよ!!

 

 『戦巫女』は一般指定なんだから!!!」

 

 …アリスちゃん、君はマスコットキャラの鑑だよ…

「があーっはっはっは!!

 無駄だあ! 俺様は誰にも止められねえぜ!!」

 ランスがいざ、アリスに飛びかかろうとした瞬間…

 

「そこまでだ!」

 

「だ、だれだ!?」

 いいとこを邪魔され、不機嫌にランスが視線を声の方に向ける。

 その目にうつったのは…

 

 リーザス城内にいつのまにか立てられた、一本の電信柱と…

 その上に立つ、さらに怪しい虎頭の男だった。

 

「た、…タイガージョーさん!!」

 アリスがその男の名を呼んだ。

「鬼畜王ランスよ、お前にひとこと言わせてもらおう…」

 

「倫理規定は配慮せよ!!」(3倍角字)

 

 ズガガガガアァァーーーーン…ピシャアァァーーーン!!!

 効果音とともに、目アップになるタイガージョー。

「…正論ですね」

 マリスがぼそりとつぶやいた。

「な、なんだてめえは! 俺様の邪魔をする気か!?」

「慌てるな、お前の相手は別にいる」

 タイガージョーがそう言った瞬間…

 

「…婦女子を無理矢理おのれのものにしようなど、漢(おとこ)の風上にもおけない!

 この俺が相手だ!!」

 正面入り口から、真の漢(まことのおとこ)、魔神勇二があらわれた。

 

「この右手に刻まれた、キング・オブ・ハートの名にかけて!!」

 

 …に…にせものじゃん…

 

「えーーい!! やってしまえ!!!」

 完全な悪役のように、ランスが部下に命じた。

 

「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!!」」」」」

 

 砂埃をあげて襲いかかってくるトランプ兵士達に対して、勇二…?がくり出す必殺技は一体なにか!?

 飛翔竜極波か? 鳳凰天舞か? 地竜鳴動撃か? それとも鴉丸からならった天破雷神槍なのか?

 …いや、ここはやはり必殺の…波陣滅殺なのかあぁぁーーー!!!

 

 トン…

 

 しかし、勇二…?のしたことは、…ただ押すことだった。

 

 パタタタタタタタタタァーーーーーー……

 

 ドミノ倒しのように、盛大に倒れていくトランプ兵達。

 

「よ、弱い!!」 ガビーーン!!

 

 あまりにまぬけな結果に、頭を抱えるランスに対し…

 

「…アリスちゃんは助けさせてもらったよ」

「なに!?」

 振り向くランスの目には、助け出されてしまっているアリスと、変な生き物をつれた少女達だった。

「ポロン一行参上ってね」

「そうにょ、そうにょ」

「ランスさん、同じ王族として許すわけには行きません」

 変な生き物が手…いや、耳でびしっと指さしてそう言った。

 

「ぐぎぎぎぎぎ……」

 歯ぎしりするランスに、さらにもう一声…

 

「…私も、神に仕えるものとして許せません」

「セイルさんの言うとおりです」

「リンスちゃんプンプンだよー」

 美少女を率いた神官が現れた。

 

「ぞ、ぞろぞろ…ぞろぞろと……」

 

「志狼さん、「奴」以上の邪気を感じます」

「…気をつけろ、ちとせ」

 

「おいおい」

 

「シード、闘神の力を見せてやろう」

「うん、葉月」

 

「こら、ちょっと待て」

 

「カスタムさん、がんばってください」

「ああ、クミコ見ていてくれ」

 

「………」

 

「…さわがしいところね」

「ご、ごめんなさい。ねえさま」

「ふふふ、馬鹿ね。あやまらなくてもいいのよ、奏子」

 

 ………

「流派、東方不敗はあぁぁーーー!!!」

「この馬鹿弟子があ!!」

「ファイナルフュージョン承認!!」

「ゴオォーールディオン、ハンマアアァァーーーー!!!」

「おおう!」

「ひっさあぁーーーつ、とーりゅーけーーーん!」

「あんたも、キメテくれよな」

「ぞなぞな」

 ………

 

「…もう、どうでもいい…」

 つかれたように、ランスがつぶやく。

「…ランス王」

「なんだ、マリス」

「アリスさん…逃げちゃいましたけど…」

 

「なっ、なにいいぃぃぃーーーー!!!!」

 

 

 …………

 …

「…こ、ここまでくれば……」

 荒くなった息を整えるためにアリスは立ち止まると、後ろを振り返った。

「…きゃっ!」

 

「……むうぅわああてえええぇぇーーーーーー!!!!」

 

 アリスの目に、必死の形相で追いかけてくるランスの姿が飛び込んできた。

「し、しつこおぉーーーい!」

「こんどこそ絶対にキメてやる!!」

 徐々に、徐々に差が縮まってくる。

「あ、後もう少し……」

 アリスの目の前に、あの次元の穴が見えてきた。

「がはははは、俺様の方が先だ」

 事実、アリスが穴に飛び込む前に、ランスが追いつきそうだった。

「こ、こうなったら…

 

 『リセット』攻撃!!」

 

「ここは俺様の世界、無駄だあぁ!!」

 ランスがそう言った瞬間…

 

「わーーーい、パーパだー!!」

 

 木の上から、ランスめがけてリセットが飛び降りてきた。

「な、なにいぃ!!」

 ランスがリセットをキャッチするのと同時に、アリスは穴に飛び込んでいた。

 

 リセット攻撃に死角なし!!

 

 

 

 ………………

 ………

 …

「…グワッ!!」

「きゃっ、…ゆ…諭吉?」

 アリスの目にまず入ったのは、カラスの諭吉だった。

「ガ、グワ?」

「え、どうしたのかって。

 …えーと、あれ?」

 アリスが周りを見渡しますが、そこはいつものようにアリスの部屋です。

「…夢…だったのかな?」

「ガガ、ガッグワッ?」

「どんな夢かって?

 

 ……えーと、忘れちゃったな」

 

 

「い、いやよ、そんな格好!!」

「だまれ、この作戦にバニーは必須なのだ!!」

「ランス様ぁ、これを着るんですかぁ?」

「ちょっと恥ずかしいものがあるのお」

「…バレス将軍、…少し楽しそうですね」

 

 

「今日はお茶会でもしよーか、諭吉」

「ガッグワー!!」

 

 

 ……ネバーエンディングストーリー…

 

 

 …ってか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 ちょっと遅れちゃいましたが…

 Lowsさん、アリスソフト部10000HITおめでとうございます。

 なんだかごちゃごちゃした話になってしまいましたが、できるだけ多くのキャラを出したかったもので。

 

 とりあえず……

 

 「がんばれ、かなみちゃん!!」

 

 ではでは。かんそーなど送ってくれると、ひじょーに嬉しいです。

 

 

 


 というわけで、閉鎖しましたLowさんのHPから出戻らせてみましたw

 一言、

 うーん、すげえ懐かしいw 

 

 

 

 


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