人格ラヂオ  食
踏みにじられ、傷ついてボロボロになったあなたの乾いた悲鳴が響く。 
怯えきった瞳。 
私の目の前で、あなたはまるで落ち葉のように、もろく崩れ落ちていった。 

私が囁いた愛の言葉、それは嘘じゃない。確かに真実だった。けれど―― 
あなたに隠していたことがある。 
どんなに近くにいても、どんなに体を重ねても、苦しかった。 
この苦しさを癒すためには、こうするしかなかったんだ。 

あなたの残骸が散らばる部屋に、私はひとりたたずむ。 

「多くのものは人知れず失われてしまう」 
あなたの言葉を、ふと思い出す。 
「多くのもの」の中には、あなたという存在も含まれるのだろうか? 
そんなことを尋ねたところで、言葉はもう返ってこない。

口の中に溢れるあなたの血、
あなたからもらった優しい言葉さえも私の喉の奥へ消えていく。 
誰にも気付かれることなく、あなたが私に溶けていく。 

こんな私を非難する人もいるに違いない。 
でも、分からないなら、何も言わないで。 
厭ならそこから見ているだけでいい。 

私は、あの人を愛していた。 
ひとつになれないことは分かっていたけれど、諦めきれなかった。 

これが私の愛の形。 

――ねえ、やっと、ひとつになれた? 


*** 
この詞を読んで浮かんできた情景がこれでした。 
要するにカニバリズムですな。愛するあまりに食べた、みたいな…。 
一人称は「私」ですが、主人公の性別は特定しないです。

なまたま ◆CvGOMix5l. :03/11/28 23:27 ID:s87QFjbu



【人間は動物愛護だとかいうけど、自分達は動物を食べて生きている矛盾】 
と言う意味、ってあったけど、これに補足。 

サビの 『厭ならそこから見ているだけでいい』 
この【厭】というのは、【嫌】と同じ意味なんだけど、
どうして【嫌】ではなく【厭】という字を使ったか。 

漢字源で調べると、 
『厭の中の部分は、熊野字の一部と犬をあわせ、
 動物のしつこい脂肪の多い肉を示す。 
 しつこい肉は食べ飽きていやになる。
 厭は、食べ飽きて、上からおさえられ重圧を感じることを表す。』 
だから【厭】という字を使ったんだと思う。

341 名前: Nana [sage] 投稿日: 2008/04/30(水) 13:22:14 ID:dcahkpUV0